今回の関電絡みの「原発マネーの流れ」について、官邸は1年以上前に把握していて表面化した場合にはどうするか方針を立てていた筈とされています。
今回明らかにされた不祥事?は関電に限ったことではありません。国策で無尽蔵にカネが使える原発マネーの薄汚さ、不正、腐敗の実態を一番知っているのは当事者の経産省であり、経産省は全てを承知して有力な天下り先にしている筈です。
菅原経産相はいち早く「極めて言語道断でゆゆしき事態。今回の事案は徹底して膿を出し切る」と口にしましたが、そんな風になるとは関係者は誰一人思っていない筈です。かといって電力会社と関係を持つ国民民主党や立憲民主党に、本気で政府を追及できるとも思われません。
今度のことで原子力ムラの醜悪な実態の片鱗が明らかになったのはせめてものプラスでした。国民はこのことを肝に銘じ改めて原発問題を見直すべきです。
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関電に「膿を出せ」と経産省 原子力ムラ仲間同士の茶番劇
日刊ゲンダイ 2019/10/02
阿修羅 文字起こし
原子力ムラをめぐるドス黒い疑惑が次から次へと噴出している。関西電力のトップら20人が原発が立地する福井県高浜町元助役の森山栄治氏(3月に90歳で死去)から多額の金品を受領した問題は、底なし沼だ。
関電は当初、2018年までの7年間で3億2000万円相当の金品を受け取ったと説明したが、八木誠会長らの受領時期は二転三転。総額も膨らむ見通しだ。さらに、元助役から関電トップらに渡ったのは現金や商品券のほか、ゴールドや数十万円相当のスーツ仕立券も含まれ、関電社内で手渡されたケースもあったという。
森山氏が助役を退いた1987年から昨年12月まで関電が全額出資する子会社「関電プラント」(大阪市)で顧問に就き、報酬を得ていたことも分かった。森山氏は関電から直近3年間で27億円の原発関連工事を受注した高浜町の建設会社「吉田開発」の顧問も兼務していた。そして、吉田開発は関電プラントから15年に1億5000万円の倉庫建設工事を受注。森山氏を中心に原発マネーがぐるぐる回っていた構図が浮かび上がってくる。
引責辞任否定する関電幹部の居直り
関電の問題意識の浅さ、デタラメ対応も浮き彫りだ。一連の問題について、昨年9月に社外弁護士らで組織した委員会の調査結果が取締役会に報告されていなかった上、社内委員会での審議手続きも踏んでいなかったという。
社外弁護士らを含むコンプライアンスやリスク管理、原子力保全などの委員会は社長らが委員長を務めていることから、恣意的な判断は疑いようがない。そうした中、今年6月には森中郁雄常務が副社長に就くなど、渦中の幹部3人が昇格していた。
ところが、この期に及んでも八木会長や岩根茂樹社長は引責辞任を否定。八木会長は「関電会長として再発防止対策をしっかりやる。岩根社長も含め、各団体の役職も従来通りだ」と突っ張り、岩根社長も「辞めるつもりはない」と繰り返している。
これだけの不祥事が明らかになりながら、この居直りは一体何なのか。原子力行政を所管する経産省お墨付きの業界慣行が表沙汰になっただけとタカをくくっているのか。
関電は2日、臨時取締役会を開催。その後、都合の悪い情報のヒタ隠しで批判を浴びた先月27日の会見に続き、改めて会見する。どう釈明するつもりなのか。
電光石火の関電切りで幕引き急ぐ官邸
関電の金品授受が報道された直後、拳を振り上げたのが菅原経産相だ。「極めて言語道断でゆゆしき事態。原子力の立地地域の信頼に関わる。事実関係の徹底解明をして経産省として厳正に処する」と勇ましく、関電が新たな調査委員会を設置すると、「今回の事案を徹底して膿を出し切る。こういう調査委員会をしっかり設けて、それを私たちが報告を受け、しっかり処していきたい」と注文を付け、1日には関電経営陣の進退問題について「当然、企業人として関電の方々が判断するものだと思う」と突き放した。正義漢ヅラで関電を締め上げているように見えるが、原発事業を手掛ける他の電力会社にも調査指示するかについては「今はそういったことはない」と否定的だ。
元経産官僚の古賀茂明氏は言う。
「官邸にしてみれば、すでに終わったハナシなのでしょう。金沢国税局が吉田開発の税務調査を始めたのが昨年1月。(癒着構造の規模が大きいため)なかったことにするわけにもいかず、官邸には夏前までには情報が上がっていたはずです。それから1年以上かけ、官邸は自民党政治家ルートに火がつかないように周到に調整を図り、いまの騒ぎに至っているのでしょう。菅官房長官の子分の菅原経産相を使って電光石火の関電切りに動いたのも予定の行動だという印象を受けます。大手マスコミもその思惑通りに動かしていますね」
経産相が関電を「言語道断」と罵ってはいるものの、フタを開けてみればどいつもこいつも原子力ムラの魑魅魍魎。ワルがワルを罵る茶番劇なのだ。3・11の悲惨な原発事故を契機に自然エネルギーへの転換を進めるのが世界的潮流なのに、財界ベッタリの安倍政権は原発再稼働に邁進。事実上、頓挫したにもかかわらず、いまだに原発セールス外交に固執している。関電は新規制基準に基づき再稼働した原発9基のうち、4基を占める原発推進のトップランナーだ。財界で原発輸出の旗振り役を担う経団連会長の中西宏明氏(日立製作所会長)が「八木さんも岩根さんもオトモダチで、うっかり変な悪口も言えないし、いいことも言えない。コメントは勘弁してください」と言っていたのも、何やら意味深でもある。
政治評論家の森田実氏はこう言う。
「三十六計逃げるに如かず、が経産省の本心なのではないでしょうか。面倒が起こった時は、逃げるのが得策ということ。原子力ムラに根付く腐敗構造を関電一社の問題に矮小化し、臭いモノにフタをしようとしているが、そんなことが許されるはずがない。関電経営陣の総退陣を第一歩とし、なれ合いで原発を食い物にしてきたあらゆる連中の堕落、腐敗ぶりを明らかにしなければ、膿を出し切ったことになるわけがありません」
野党一丸で追及すべき臨時国会「最大のテーマ」
国の研究開発法人である日本原子力研究開発機構の年間予算は1800億円。19年度予算ではほかに、経産省が新技術炉開発を目指す民間企業支援に6億5000万円、原発立地地域の産業振興に63億5000万円を計上。文科省は基礎基盤研究・人材育成に48億円、新規制基準に対応する安全確保対策に127億円などをあてる。国策で無尽蔵にカネが使える原発マネーの薄汚さ、不正、腐敗の実態を一番知っているのは当事者の経産省ではないか。
「原発は安全対策をするにしても、再稼働するにしても、巨額のカネが動きます。原発を推進し続けることで、関係者にカネが落ち続ける。みんなが得するからいいじゃないか、という考え方の彼らに罪悪感はありません」(古賀茂明氏=前出)
経産相は関電・第三者委員会の結論を待って「膿を出し切る」とか仰々しいが、やれるものならやってみろだ。
前任者の自民党の世耕参院幹事長までシャシャリ出て「関電は徹底的に事実関係を開示し、説明責任を果たすべきだ」とブチ、「この問題が国のエネルギー政策全体に影響を与えることはあってはならない」とのたまわっていたが、本音はアベ様が掲げる原発推進の足を引っ張るな、じゃないのか。
立憲民主党の枝野代表は「今までの原発政策の説明が全く説得力を失う。原資は電力料金や税金であり、大きなスキャンダルだ」と批判。4日召集の臨時国会の「最大のテーマ」として追及する構えだ。立憲民主と衆参両院で会派を組む国民民主党の玉木代表も、電力総連の支援を受ける微妙な立場ながら「他に同じような案件がないか、徹底的に調べる必要がある」とし、「場合によっては(関電)幹部のみなさんに参考人で国会に来てもらうことも考えなければならない」と言っていた。「場合によっては」ではなく、「何が何でも」やるべきだろう。世論は原発の稼働・再稼働に反対が多数を占め、原子力ムラの利権構造に対する疑念はますます深まっている。「死人に口なし」でトカゲのしっぽ切りが見えている原子力ムラの暗黒に切り込めなければ、政権交代なんて夢のまた夢だ。
「野党には千載一遇のチャンスが巡ってきました。金沢国税局の税務調査によって表沙汰になった問題なのですから、関連資料はしっかり揃っているでしょう。関電問題を突破口にして、原発事業に関わるあらゆるものを総点検すれば、安倍政権がひた走る原発推進路線を吹っ飛ばせる。臨時国会では徹夜でも何でもして命懸けで突っ込むべきです」(森田実氏=前出)
そうなれば、安倍政権も関電同様、追い詰められていくことになるのだが。