関電はようやく八木会長が辞任を表明し、岩根社長も調査委員会の結論が出るのを待って辞任すると述べました。はじめは検察からの追及はないという目論見の下に居直る態度を見せていましたが、急転直下こうなった裏には官邸の意向があったと見られています。
昨年のうちにこの不祥事を把握していた官邸と経産省は、「問題があるのは関電だけ」として幕引きさせることを決めていたと言われます。経産省が関電以外の電力会社など12社に法令順守の徹底と実態の調査を指示したところ、わずか数日で全社から「問題なし」の報告が上がってきたという辺りもそれを窺わせます。
予想されていたことですが「原発マネー」は永田町にも回っていました。稲田朋美幹事長代行が元助役が顧問などを務めていた会社から献金を受けていたほか、世耕弘成参院幹事長にも元助役絡みの多額の資金が献金されています。実際にはもっと広範囲にわたっているものと思われます。
かつて関電若狭支社のある幹部が、原発のプルサーマル化に反対した今井理一・高浜町長を警備用の大型犬で襲わせる(未遂)よう警備会社にを依頼したことがあり、後に警備会社の従業員2人がそれを告発すると、大阪府警は逆に従業員たちを恐喝に当たるとして逮捕しました。これは関電と警察の不明朗な関係を暗示するものです。
日刊ゲンダイが大型記事:「元助役の死にも疑念 『越後屋の小判』怪文書と謎解き」(上)、(中)、(下)を載せました。このうち(中)と(下)は有料記事のため最初の数行が公開されただけですが、幸い「阿修羅」に(中)の文字起こしが載りましたので、(上)(中)を紹介します。
注. (下)の中見出しは「野党は原発稼働阻止で共闘できるのか」となっています。
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元助役の死にも疑念 「越後屋の小判」怪文書と謎解き<上>
日刊ゲンダイ 2019/10/08
そもそも、なぜ、元助役はこれだけ広範に金をばらまく必要があったのか
関西電力の高浜原発を舞台にした原発マネーの還流問題は、永田町を巻き込む大スキャンダルに発展しそうな様相だ。キーマンとされる福井県高浜町元助役の森山栄治氏が鬼籍に入ったのをいいことに、関電は森山氏の“特異性”にすべてを押し付け、逃げ切ろうとしている。しかし、「死人に口なし」「関電の破廉恥」では終わらない。「越後屋の小判」を巡る謎と闇は深まる一方である。
問題発覚の端緒は、2018年1月の金沢国税局による査察だ。森山氏が顧問を務めていた建設会社「吉田開発」(高浜町)に対する税務調査で、同氏に3億円の手数料が支払われていたことが判明。6月ごろには森山氏宅から関電幹部への金品提供に関するメモが見つかり、関電は7月に社内調査委員会を設置。9月には調査結果をまとめたが、岩根茂樹社長は「不適切ではあるが、違法性はない」として取締役会に報告せず、秘匿を続けていた。
事情を知る関係者がマスコミなどに送付した内部告発文書がここへきて出回っているが、腐敗した関電経営陣の総退陣と経営刷新を求めたものの無視されたと明かし、こう記していた。
〈最も看過できないのは、原発の建設、運転、定期点検、再稼働工事の過程で、工事費等を水増し発注し、お金を地元有力者、及び国会議員、県会議員、市長、町長等へ還流させるとともに、原子力事業本部幹部職員が現金(億単位)を受け取っていたことであります〉
指摘通り、原発マネーは関係先をぐるぐると回っていた。森山氏を通じて吉田開発から関電役員らに渡った金品は少なくとも計3・2億円。助役退任後の同氏は吉田開発顧問のほか、原発メンテナンス会社(兵庫県高砂市)相談役、警備会社「オーイング」(高浜町)取締役、さらに関電子会社「関電プラント」(大阪市)顧問に就いていた。吉田開発とメンテナンス会社は、関電プラントから3年間で計約113億円の工事を受注し、オーイングは関電の原発警備を一手に引き受け、福井県警の天下り先の機能も果たしている。巨額の金品は受注のキックバックなのか。森山氏を起点にあらゆる方面に原発マネーが流れ、原子力ムラに巣くう構造が浮き彫りである。
告発文書には、こうも記されていた。
〈平成に続く新年号の事態における、大スキャンダルの第1号となるでしょう。自殺者も出るかもしれません〉
なぜ、重くて足がつきやすい小判なのか 共犯関係を念押しするような元助役の凄味
関電幹部らが森山氏から受け取った金品の形態は実にさまざまだ。
現金1億4501万円、商品券6322万円分、米ドル15万5000ドル(1705万円)、金500グラム(240万円相当)、金貨365枚(同4949万円)、金杯8セット(同354万円)、スーツ仕立券75着分(同3750万円)、そして小判3枚(同24万円)である。菓子折りの底に忍ばせる形で手渡されたというが、小判のやりとりなんぞは、時代劇の悪代官と越後屋を彷彿とさせる。
「小判は脱税目的でよく使われる手口です。現金授受と比べて足がつきにくく、骨董品と言い逃れできる余地がある。絵画などと比べて売買が容易で、現金化しやすいのも利点のひとつに挙げられています」(税務当局関係者)
だとしたら金の延べ棒の方がよりベターな気もするが、森山氏はなぜ小判にこだわったのだろうか。元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏はこう言う。
「特別なものを贈ることによって、金品授受により重みを持たせ、一蓮托生の共犯関係にあると念押しする意図があったのではないか。関電幹部がキレイごとを言いだし、森山氏との関係を清算しかねないとの考えが根底にあったのかもしれません」
原発ムラの住人の裏切りは決して許さない――。暴力団もビックリの凄まじさである。
「違法性はない」と被害者面の経営陣、辞め時と逮捕の可能性
金沢国税局の査察で原発マネー還流問題の露見に直面した関電は、社内調査委による調査結果について岩根社長が「違法性はない」と判断し、取締役会への報告を見送り。取締役の不正行為をチェックする監査役会も追認していた。2日に行われた2回目の会見でも岩根社長は「違法性はないということで報告しない判断をした」と繰り返し、八木誠会長ともども居直りを決め込んでいる。
被害者ヅラの経営陣のもくろみ通りにコトは収束するのか。立件の可能性があるのは、会社役員の収賄罪、関電グループが森山氏の関係企業に特命発注を続けていたことに対する独禁法違反とみられている。前出の郷原信郎氏がこう言う。
「いずれにしても立件要件を満たすハードルは高い。金品授受に関する森山メモが出てきたと報じられていますが、それだけでは裏付けは不十分。資金の出元とされる吉田開発からの情報も必要になる。特命発注については、発注額などの詳細が判明しないので何とも言えません。逆に言えば、だからこそ、嫌疑の有無を含めた捜査は絶対にやるべきです」
郷原信郎氏が懸念を抱くのは、関電と関西検察OBとの関係だ。
調査委員長を務めた元大阪地検検事正の小林敬弁護士は、郵便不正事件を巡るデータ改ざん問題で責任を問われて減給処分を受け、退官したいわくつき。関電社外監査役には「関西検察のドン」と呼ばれる元検事総長の土肥孝治弁護士が今年6月まで就き、後任に元大阪高検検事長の佐々木茂夫弁護士が就任。85歳から74歳への異例のバトンタッチである。
「今春ごろから始まった内部告発の動きは、徐々に表面化の危険性が高まっていった。関電経営陣にとって重大な問題を切り抜けるため、超高齢の検察OBを監査役に選任したのではないか。経営トップ2人が会見で見せた開き直ったような異様な態度や、関電を取り巻く環境を見る限り、検察サイドと話ができているのではないか、との印象がぬぐえません」(郷原信郎氏=前出)
大物検察OBを守護神に祭り上げたゆえの余裕なのか。
金沢国税局は過去何十年間も見過ごしてきたのか なぜ、調査が入った途端に元助役が死んだのか
今回の問題が発覚したのは、金沢国税局が昨年1月に着手した査察がきっかけだ。金沢国税局の大金星だが、その裏で不可解な人事があった。吉田開発に査察に入ったほぼ同じ頃、当時の局長が辞職を申し出て、国税庁長官官房付を経たうえで昨年3月に退職しているのだ。
「税務署が最も忙しいといわれる確定申告の時期の辞職というタイミングは解せません。いったん、官房付になったのも通常の人事とは異なります」(司法記者)
安倍政権が不正発覚を望まない原発案件に手をつけた金沢国税局は、虎の尾を踏んだということだろうか。
関電の元役員は1990年代には森山氏から金品を受け取っていたことを明らかにしている。
だとすると、金沢国税局は怪しい原発マネー還流をアンタッチャブルな案件として、何十年も見過ごしてきたのか。
立正大客員教授の浦野広明氏(税法)が言う。
「原発マネーについて、叩けばホコリが出るのは、税務当局は百も承知です。しかし金沢国税局に限らず、全国の税務当局は、わざと手をつけないで見て見ぬフリをしてきました。国策である上に、迷惑施設である原発を進めるための不透明なお金を黙認してきた側面があります」
査察が入った1年後に森山氏が死去したのも謎だ。
「森山氏の死の真相はわかりませんが、少なくとも森山氏の死を踏まえて『死人に口なし』ということで税務調査をオープンにしたのではないか。関電に限らず、全国の原発にもメスを入れるべきですし、黙認してきた税務当局の不作為が問われるべきです」(浦野広明氏=前出)
闇は深くて広い。
元助役の死にも疑念 「越後屋の小判」怪文書と謎解き<中>
日刊ゲンダイ 2019/10/08
阿修羅 文字起こし
原子力ムラ仲間、経産省調査のお手盛り、おざなり
被害者ヅラが鼻につく関電同様、正義漢ヅラに噴飯モノなのが経産省だ。原子力ムラの旗振り役のくせに、所管官庁として指導的立場を振りかざす。
9月26日夜に関電幹部の金品受領が報じられると、翌27日、菅原一秀経産相は「事実だとすれば極めて言語道断で、由々しき事態だ」と厳しい口調で関電を非難した。
30日には関電に対し、第三者委員会による徹底的な調査を指示。報告に基づいて厳正に対処する考えを示した。
同じく30日には、関電以外の電力会社など12社にコンプライアンスの徹底を通達。そうしたら今月4日、8社から「関電と類似の事例はない」と報告があったことを菅原が明らかにした。翌5日までに全社が「問題なし」と発表している。
わずか数日で“シロ”認定なんてあり得ない。元経産官僚の古賀茂明氏はこう言う。
「経産省の指示も電力会社からの回答も早すぎます。今回の関電問題の情報は、公になる前に官邸や経産省に伝わっていたでしょうから、すぐに調査を指示するシナリオができていたと思います」
だいたい、社内調査で会社にとって不利益となる事実を簡単に明かす社員などいるはずはない。金品が渡るのはそれなりに権限のある幹部だからなおさらだ。電力会社の自主調査なんて泥棒に泥棒を調査させているようなもので、お手盛りの極みである。
「原子力ムラを守りたい経産省は、『問題があるのは関電だけ』ということで幕引きさせたいのでしょう。関電の金品授受や森山氏が顧問を務めていた建設会社が関電の仕事を受注していたことなど、毎日のように続報が出ていますが、関電だけを悪者にしようとする経産省のスキームにメディアも乗っかっているように見えます」(古賀茂明氏=前出)
幕引きは許されない。
フザけるな!国会が終わってから第三者委員会の調査報告
関電は政府の意向を受け、2日、社外の弁護士だけで構成される「第三者委員会」の設置を決めた。「死人に口なし」の森山氏に全てをおっかぶせた社内調査では誰も納得できないから当然ではあるが、第三者委が調査報告をまとめる時期が「年内をメド」とされていることに薄汚い思惑がプンプン臭う。
4日に召集された臨時国会は、7日から代表質問が始まった。立憲民主党など野党は関電問題を今国会での安倍政権追及の主要議題としているから、この先、委員会などでも頻繁に取り上げられるのは確実だ。ところが……。
「野党が厳しく攻めてきても政府は、『第三者委員会の報告を待って厳正に対処する』と答弁すれば逃げられる。第一義的には関電と元助役・業者間の問題であり、政府が直接答えられる話ではないですから」(霞が関関係者)
そうやって臨時国会閉幕ギリギリまで引っ張って、多少混乱するようなら関電社長の参考人招致を1回やってお茶を濁す。そんなフザけたシナリオだというのだ。
年内メド、つまり年末に報告書が出る頃には、国会は閉じた後。政府は来年度の予算編成が大詰めを迎え、世間は師走で忙しく、注目度も下がっている、というワケだ。
7日の代表質問で立憲の枝野代表に「関電問題は政府主導で調査すべき」と迫られた安倍首相は、「第三者の目を入れて、徹底的に全容を解明することが不可欠だ」とスルーした。“関電まかせ”が安倍にとって都合がいいのだ。
モラルなき護送船団、経済団体は無用の長物
「返却にご苦労されているようだが、そんなお金が動くこと自体、不健全性を感じる。ちょっと困ったな、という感覚で受け止めている」
7日の定例会見で関電を批判した経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)だが、10日前(9月27日)にはこう言っていた。
「八木さんも岩根さんもお友達で、うっかり変な悪口も言えないし、いいことも言えない。コメントは勘弁してください」
お友達――。関電の八木会長は関西経済連合会(関経連)副会長。東電を含め電力会社は経済団体トップを歴任してきた有力企業だ。そして、中西会長の出身の日立は原発メーカーであり、電機や自動車など経済団体の主要企業は原発再稼働推進。7日の会見で中西会長は「(今後の再稼働に向け)マイナス面のインパクトがあると思う」と苦い顔だった。
福島であれだけの原発事故があったのに、政府は原発を重要なベースロード電源と位置付け、原発輸出を成長戦略の柱に据えた。そんな安倍政権と足並みを揃えて、原発メーカーは海外セールスにいそしんできたが、結局、全敗。原発なんてどこも買ってくれない。遅れたエネルギーに日本はしがみついている。
前出の古賀茂明氏が言う。
「原発が高コストで競争力が低下していることは客観的にも明らかで、原発推進がナンセンスだということは経済団体だってわかっているはずです。太陽光や風力発電などの自然エネルギーはどんどん価格が下がっている。日本もどこかで自然エネルギーにシフトせざるを得ませんが、もはや外国企業に追いつけないので、それだったら原発を少しでも長く続けて、少しでも儲けたい。そんな発想なのでしょう。安倍政権への気兼ねもあると思います」
今だけカネだけ自分だけ。そんなモラルなき護送船団の経済団体は無用の長物だ。