国が原発推進の前提としてきた「核燃料サイクル」が行き詰まっています。
そもそも当初から核燃料を「サイクル」をする理由がありませんでした。当初からコスト的に全く採算が合わないことは分かっていました。
取り出したプルトニウムを高速増殖炉「もんじゅ」で燃料として使うというのも、(仮に「もんじゅ」が完成し上手くいったと仮定しても)、そこでは逆にプルトニウムが増える(増殖)ため、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する意味はないし、現在のプルトニウムの保有量(47トン)を更に増やすことになるのはそもそも国際的に許されません。
プルサーマルで使うというのも、原発18基を稼働させないことには消費し切れないということであれば、問題外というしかありません。
そもそも「核燃サイクル」は事の始まりから無意味であり、根本的に間違った構想に基づいていました。最終的に何十兆円もかけて使い道のないプルトニウムの抽出するのでは、核兵器を作るためではないかと疑われても反論できない筈です。
西日本新聞が再処理工場の現状を伝えました。
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核燃サイクル袋小路 もんじゅ廃炉、再処理工場完成遅れ
「既に破綻」批判根強く
西日本新聞 2019/10/27
国が原発推進の前提としてきた「核燃料サイクル」が行き詰まっている。原発で出る使用済み核燃料からプルトニウムやウランを取り出して再利用する計画だが、中核を担うはずの高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)は廃炉が決定。使用済み核燃料の再処理工場の本格稼働も見通せない。青森県の関連施設を訪ね、核燃料サイクルの必要性や実現性について改めて考えた。
■トラブル続き
広大な敷地に四角い建物が立ち並ぶ。同県六ケ所村にある日本原燃の原子燃料サイクル施設。プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を作る工場などの建設が続く。
施設の中心となる使用済み核燃料の再処理工場は当初、完成予定が1997年だった。だが工程でトラブルが続出し、完成見通しは24回も延期されている。
目下の目標は原子力規制委員会の審査をパスすること。原燃の上島慶信報道部長は「審査は最終盤。2021年度上期の稼働を見込む」とするが、規制委幹部は「問題がないとは確認しきれていない」としており、審査に通る保証はない。
国内の原発から運び込まれた使用済み核燃料の貯蔵プールは、ほぼ満杯で、受け入れは停止中。各原発で使用済み核燃料がたまり続けるが、原燃は「工場が稼働すれば、貯蔵分は数年で処理できる」と説明する。
■作業員まばら
ゴゴゴ…。大音量とともにモニター画面が明滅した。同県大間町に電源開発(Jパワー)が建設中の大間原発。制御室を模した部屋で、社員たちが大地震を想定した訓練に励んでいた。
全燃料をMOX燃料で賄う世界初の「フルMOX炉」。他原発でMOX燃料の利用が増えれば大間の利用を減らし、逆なら増やす計画で「MOX燃料を柔軟に利用する政策的な役割がある」(Jパワー)という。
だが、同原発も規制委の審査に時間を要し、原子炉建屋など主要設備の工事が進んでいない。津軽海峡を隔てた北海道函館市は14年に建設差し止めを求めて訴訟を起こしており、現在も係争中。現場には大型部品が防さび用のビニールに覆われたまま置かれ、作業員もまばらだった。
■国策の大転換
トラブル続きだったもんじゅの廃炉が決まったため、MOX燃料は高速増殖炉よりも燃料効率が良くないプルサーマル原発で使うしかないのが現状だ。だが国内のプルサーマル原発は、九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)をはじめ、建設中の大間を含めても5基だけ。生産されるMOX燃料を無駄なく使うのに必要とされる「16~18基」に及ばない。
反対論も根強い。前原子力規制委員長の田中俊一氏は、核兵器に転用可能なプルトニウムが生まれることを念頭に「(核燃サイクルは)やらないほうがよい」と公言。コスト高から「既に破綻している」と批判する研究者もいる。
再処理しなければ、使用済み核燃料の取り扱いを巡る問題が生じ、原子力政策は大転換を迫られる。国や電力業界は核燃サイクルに固執し続けるべきなのか。十分な検証と議論が必要だと痛感した。 (吉田修平)