関電がこれまで社内調査の結果として公表した元助役からの受領金品の額や数量、受領日付等は、殆どが記録に基づくものではなく、各人の記憶に基づいたものであったことが分かりました。金額の信用性は低く、実際はさらに多額であった可能性が出てきました。
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関電金品 大半記録なし 「残すよう指示せず」
東京新聞 2019年10月5日
関西電力役員らの金品受領問題で、福井県高浜町の元助役森山栄治氏(故人)から受け取った二十人のほとんどが日付や、金品の具体的な内容を記録していなかったことが、関電への取材で分かった。関電は「組織として記録を残すよう指示していなかった」と説明。調査委員会は保管されていた金品などから総額三億一千八百四十五万円相当と算出したが、記憶に基づく申告が多かった。額の信用性は低く、実際はさらに膨らむ可能性が出てきた。
この問題を巡っては森山氏からの金品の管理を、会社ではなく個人に委ね、タイミングを見計らって返却するよう一部の幹部の間で引き継がれていた。
関電によると、森山氏と関係が深い高浜町の建設会社「吉田開発」への国税当局の査察を契機に昨年七月、社内に外部の弁護士を委員長とする調査委員会を設置した。金品に関し社内のコンプライアンス部門が役員らに聞き取りした結果、メモ帳のようなものに記録していたケースがごく一部あったが、大半は記録がなかった。
受領した金品は現金一億四千五百一万円、商品券六千三百二十二万円、金貨四千九百四十九万円相当(計三百六十五枚)、スーツ仕立券三千七百五十万円相当(計七十五着分)、米ドル千七百五万円相当、金杯三百五十四万円相当(計八セット)など。
スーツ仕立券の算出について関電は「一着当たりの値段は個々人の申告に基づいている。開きがあり、一着五十万円として換算した」と説明した。
自宅や会社執務室の机の引き出しなどで保管しており「会社として管理してもらえないか」と原子力事業本部の幹部に相談した人物もいたが、「個人で何とか対処するしかない」と回答されたという。
上村達男早大名誉教授(会社法)は「最近の社会の風潮と異なり、コーポレートガバナンス(企業統治)への意識が低い。金品を受け取り経営判断が左右したと疑われる恐れがあり、自らを守るためにも記録を残す必要があった」と指摘。「公共性が高い企業なのに、社外取締役や監査役を働かせようという空気が社内になかったのではないか」と話した。