福島県の小児甲状腺がんをめぐり、福島県立医科大学の鈴木眞一教授が日本甲状腺学会で、2018年9月までに血液検査を追跡可能だった半摘患者151人のうち、11人に再発が認められたことが報告されました。再発数を発表したのは初めてのことです。
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小児甲状腺がんの再発11人 〜 福島県立医大手術例
OurPlanet 2019/10/17
福島県の小児甲状腺がんをめぐり、これまでに180例以上の患者を執刀している福島県立医科大学の鈴木眞一教授が日本甲状腺学会で、はじめて再発数を発表した。2018年9月までに血液検査を追跡可能だった半摘患者151人のうち、11人に再発が認められたという。
2018年9月までの178人を解析
鈴木教授は、悪性の患者がはじめて見つかった2012年8月から昨年9月までの6年間に、甲状腺の葉切除手術を行った患者の術後の甲状腺刺激ホルモン(TSH)を発表。手術をした178人のうち血液検査の追跡調査が可能だった151人を調べたところ、69人・45・7%の患者が、術後にTSHが上昇し、甲状腺機能低下状態にあったと報告した。
甲状腺がん摘出後、再発リスクが高い患者には、TSHを抑制する治療を行うことがある。通常は「チラージン」とよばれる薬を服用するが、鈴木教授は、保護者が投薬を嫌がることや骨粗鬆症リスクが高まるなどを理由に、昆布や海藻類などヨウ素の含まれた食材を食材から排除する「ヨウ素制限食」の指導を実施していると説明。すべての患者で効果があり、概ね1年程度で、基準値を下回ったという。
さらに鈴木教授は、再発患者についても言及。調査対象の151人のうち、11人(7・3%)に再発が認められた報告した。11人のうち術前にTSHが基準値以上だったのは5例で、鈴木教授は、再発症例は、TSHの高さによるものではないとの考えを示した。
TSHを抑制するためにヨウ素を制限するという方法は、これまでの治療法の中になかったことから、フロアからは「TSHを下げるために「ヨウ素制限」するという方法はどこでもやっているのか」といった疑問や「甲状腺機能が改善する治療成績が高すぎるのではないか」といった指摘が投げかけられたが、鈴木教授は、子どもに薬を服用させたくない保護者が熱心に取り組むため、効果が高いのではないかと回答。外食の際のうどんや寿司、インスタント食品も食べないよう指導していると述べた。
甲状腺がん患者の再発数、初の公表
福島県の小児甲状腺がんをめぐっては、手術症例も十分共有されない中、再発や転移数もこれまで明らかになっていなかった。2016年9月に福島市で開催された「第5回放射線と健康についての福島国際専門家会議」の質疑の中で、鈴木教授が「few」と回答。数人の再発患者が存在することを明かしたものの、正確な人数は明らかにしてこなかった。
一方、福島県の甲状腺専門家会議の鈴木元部会長は2017年に座長に就任した当初、手術症例や再発数の把握も重要だとの認識を示していたが、当時、検査を担当していた福島県立医大の大津留晶教授は臨床情報は把握できないとして回答せず、その後2年間、ほとんど検証されてこなかった。
ちなみに、福島県の甲状腺がんの再発については、小児甲状腺がん患者に経済支援を行なっている民間団体「3.11甲状腺がん子ども基金」が昨年度から、再発患者へ対する療養費の追加給付を実施しており、その内容を定期的に公表している。今年3月までに給付実績によると、原発事故当時福島県に居住していた甲状腺がん患者97人のうち、12人が再発による再手術を受けており、鈴木教授の公表した人数より再発数が多い。
医大に通院していた患者の中には、再発の診断を契機に他の病院に転院している患者もいる。それらの人数が今回の公表したデータに含まれているかについて、鈴木教授は回答していない。