2019年10月13日日曜日

「関電は同和圧力の被害者」はスリカエ!

 関電幹部が高浜町元助役から高額の金品を受領していた問題に関して、元助役の森山栄治氏がかつて部落解放同盟福井県連書記長を務めていたことで、「そうなると話が違ってくる」という受け止めもあるということです。
 そもそもその情報は関電の関係者から漏らされたと言われていて、「関電は被害者」という構図を作ろうとする意図が垣間見られるものです。
 今回の事件で森山氏が中心的役割を果たしたことに疑いの余地はありませんが、それに解放同盟が関与したと見るのは間違っています。
 森山氏は1970年から2年間、部落解放同盟福井県連の書記長を務めていましたその後書記長を退任し解放同盟を離れ、同盟の影響力がない状況時に助役に上り詰め、高浜町全体に影響力を持つに至りました。
 
 解放同盟「一連の事件の本質が同和問題ではなく、原発3号機、4号機の誘致、建設にあるということがここからでも理解できよう」「明らかにされなければならないのは、原発建設を巡る地元との癒着ともとれる関係であり、それにともなう資金の流れの透明化こそが、この事件の本質原発の誘致・建設に至る闇の深さという真相を究明することは棚上げし、人権団体にその責任をすり替えようとする悪意ある報道を許すことは出来ない。」と述べています。
 植草一秀氏はそれを「正論そのもの」であるとし、「問題の本質を歪めて関西電力の対応を容認することは決して許されることでない」と述べています。
 植草一秀の「知られざる真実」を紹介します。
 
 併せてLITERAの記事「『関電は同和圧力の被害者』はスリカエ! ~ 」を紹介します。
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関電不正金品受領事件責任を人権団体になすりつけるな
植草一秀の「知られざる真実」 2019年10月11日
関電幹部が福井県高浜町元助役から高額の金品を受領していた問題に関して、元助役の森山栄治氏がかつて部落解放同盟福井県連書記長を務めていたことが取りざたされている。
森山氏は1970年から2年間、部落解放同盟福井県連の書記長を務めていた。
この件に関して部落解放同盟中央本部がコメントを発表している。
解放同盟の福井県唯一の支部が高浜支部で1970年に県連とともに設立された。
高浜支部が福井県連の唯一の支部であり、その所帯数も80世帯ほどの被差別部落であり、同盟員数に至っても200名ほどの小さい県連のひとつであるとのことだ。
森山氏は1972年に書記長を退任し、解放同盟を離れ、同盟の影響力がまったくない状況時に助役に上り詰め、高浜町全体に影響力を持つに至ったとのことだ。
解放同盟は「一連の事件の本質が同和問題ではなく、原発3号機、4号機の誘致、建設にあるということがここからでも理解できよう」としている。
 
ネット上の論調では、一部発言者が、森山氏がかつて部落解放同盟の役職に就いていたことがあることから、問題の図式が変わったとの論評を提示しているが、こうした発言自体が差別意識に基づくものである。
関電の報告書は、森山氏が恫喝を繰り返し、関電側が被害者であったかのような記述であふれている。しかし、森山氏が不当な恫喝を繰り返したのであれば、関西電力は企業として毅然とした対応を取るべきであった。取締役会で対応を協議し、森山氏に法に触れるような対応があったのなら、法的対応を取るべきであったはずだ。
そのような対応は不可能でない。毅然とした対応を示すことが企業の社会的責任でもある。
 
ところが、関電はこうした対応を示していない。関電幹部は高額の金品を受領したままだった。
1着50万円もするスーツを贈呈され、実際にスーツを着用していたのではないのか。提供された金品を返却するために「一時的に保管していた」との弁明が通用する余地はない。
関電内部の調査報告書には次の記述がある。
森山氏が示した「恫喝」のひとつとして紹介されている事例だが、「発電所立地当時の書類は、いまでも自宅に残っており、これを世間に明らかにしたら、大変なことになる。」との森山氏発言が紹介されている。
 
報告書では、森山氏は高浜原発3号機、4号機の増設時に関西電力と何度も面談し、増設に関して依頼を受けたと話していたとする。このことに関して森山氏は、当時の関電トップから手紙やハガキを受け取っており、それを保管していることを語っていたとしている。重要なことは、これらの書類や手紙にどのような事実が記載されているのかを確認することだ。
森山氏はすでに故人になっているが、関係書類はいまも保管されている可能性が高い。これらの文書を確認し、内容を公表することが求められる。
森山氏が解放同盟の役職に就いていたことをもって、森山氏に非があり、関電は被害者であると短絡的に結び付ける発想そのものが、差別の構造そのものだ
 
解放同盟はコメントで「明らかにされなければならないのは、原発建設を巡る地元との癒着ともとれる関係であり、それにともなう資金の流れの透明化こそが、この事件の本質であるはずだ。それを部落差別によって、事件の本質を遠のかせてしまうことになることだけは本意ではない。
原発の誘致・建設に至る闇の深さという真相を究明することは棚上げし、人権団体にその責任をすり替えようとする悪意ある報道を許すことは出来ない。」としている。
正論そのものだ。
問題の本質を歪めて関西電力の対応を容認することは決して許されることでない。
(以下は有料ブログのため非公開)
 
 
「関電は同和圧力の被害者」はスリカエ! 
原発マネー還流させ、同和・政治家・暴力団を利用する電力会社の黒いやり口
LITERA 2019.10.07
 関西電力の八木誠会長ら幹部が、福井県高浜町の元助役・森山栄治氏から少なくとも3億2千万円相当の金品を受け取っていた問題。先週、記者会見にのぞんだ岩根茂樹社長らの口から飛び出たのは、呆れるほかない“被害者ヅラ”と“責任転嫁”だった。
 会見で岩根社長は、保管した金品を返さなかったことについて「森山案件は特別で、おびえてしまった」などと釈明。昨年9月11日付の調査委員会による報告書などを持ち出し、森山氏が「お前の家にダンプを突っ込ませる」「お前なんかいつでも飛ばせる、なんなら首も飛ばすぞ」などと「脅し」を繰り返していたと強調する一方、経営陣の進退については「原因究明、再発防止をしっかりやることで、経営責任を果たしたい」などとして、自身や八木会長らの引責辞任を否定した。
 
 周知の通り、この問題には“原発マネー”の関電側への還流疑惑が持ち上がっており、幹部の利益相反や特別背任も取り沙汰されている。そこで、関電側は「死人に口なし」とばかりに、森山元助役の“特異なキャラクター”を前面にアピールすることによって、自分たちの責任や犯罪性を頰被りしようというのだ。こんなことが許されるわけがない。
 ところが、いま、多くのマスコミや国民は、関電側の思惑どおりに森山氏の“キャラクター”へ飛びついて「関電被害者論」の片棒を担いでしまっている。とりわけひどいのがネットだ。森山元助役の「恫喝」や「暴言」の数々が報じられるなか、ネット上では「この問題は同和利権絡み」「関電が怯えていたのは同和の圧力だ」なる話が流れ出した。つまり一種の「同和圧力説」だが、これは、明らかに問題の本質を取り違えているとしか言いようがない。
 
 たしかに、すでに複数の週刊誌も触れているように、森山元助役が同和団体関係者であったことは事実だ。そのことは、原発問題を追及してきたジャーナリスト・柴野徹夫氏が、「しんぶん赤旗」記者時代の1980年代に発表した現地ルポにも記されている。
 同ルポよれば、〈高浜町では、関電と直結した浜田倫三町長と森山栄治助役が、町行政の隅ずみまで君臨し、私利私欲をむさぼっていた。少しでも町政を批判する者には、たちまち脅迫と報復で報いた〉。森山氏は〈町政の実質的ボス〉として、町内の部落に〈自ら組織した「部落解放同盟」を指揮して、だれかれ容赦なく“糾弾”を繰り返してきた。町議会までもが町長・助役の脅迫に屈し、その“親衛隊”になりさがっていた〉(『原発のある風景』下巻/未来社)という。
 
 しかし、それを「同和圧力説」に結びつけるのは端的に言って飛躍であり、ネット右翼向けの陰謀論でしかない。この「森山元助役は同和関係者である」という情報は、今回の関電“原発マネー”還流疑惑でも、関電関係者が周辺の記者にそれとなく吹聴していたようだが、むしろ、このことが意味しているのは、関電が同和団体などを“利用”して、原発立地地域の支配を進めていったという事実に他ならないからだ。実際、ルポの著者・柴野氏もはっきりとこう指摘している。
〈地域と住民の隅ずみまで支配するために電力会社は、活用できるものは何でも活用する。
「部落解放同盟」の名で住民を組み敷く町行政は、関電にとっては願ってもない“忠臣”であった。それによって住民を思いのままにできるだけでなく、住民の不満は「解放同盟」に向かうことはあっても、関電に及ぶことはない
 
 この巧妙な支配構図の裏で、関電の大がかりな建設工事や脱税がすすみ、浜田町長や森山助役、さらに公共事業に巣食う平川土木建設らが利権をむさぼっていた。
 その陰で、多数の無力な住民たちが人権を踏みにじられ口惜し涙を流していたのである。〉(前掲『原発のある風景』下巻)
 
電力会社が利用したのは同和だけじゃない!暴力団や総理大臣にも原発マネーが
 もっとも、電力会社が土地の確保や原発反対運動封じ込めのために“利用”したのは、なにも同和団体だけではない。暴力団や悪徳ブローカーなど、使えるものすべてを取り込んで、原発の建設・稼働や地域の“地ならし”に投入してきた。
 たとえば、同じ関西電力ら電力3社は90年代、石川県に「珠洲原子力発電所」を建設する計画を進めていたが、このときも関電が秘密裏にゼネコン各社を通じて原発予定地周辺の土地を裏取引で取得。その土地買収に協力した見返りとして、暴力団が関電とゼネコンに約30億円を要求していたことが発覚している(しんぶん赤旗2011年9月13日)。なお、この珠洲原発計画は石川出身である森喜朗元首相の“肝いり”だったとされるが、その森氏の資金管理団体が、原発用地取得に関わったゼネコンや建設会社らから献金を受けていたこともわかっている。
 あらためて言うが、電力会社は“原発マネー”を使って、時の政権との癒着を繰り返してきた。3.11以降、その一部が具体的に表沙汰になっている。たとえば、芦原義重・元関西電力会長の秘書として長年仕えた内藤千百里氏(関電元副社長)は、数年前、朝日新聞の取材に対して、時の総理大臣に巨額の“裏金”を渡していたことを告発している。
「芦原さんが角さん〔=田中角栄〕の事務所で1千万円を渡すと、角さんは『おーい。いただいたよ』と昭さん〔=角栄の秘書〕に伝える。昭さんは『そうですかー』と受け取りにくる。1千万円は紙袋や風呂敷で持っていく。〔中略〕。芦原さんが直接、総理や党の実力者に渡す資金がありますねん。会社のトップクラスのみが知っている。総理には盆暮れに各1千万円ずつ計2千万円。総理を辞めた後にも同額を渡した人はいた」
官房長官、自民党幹事長、政調会長ら実力者と野党幹部には1回200万〜700万円。年間総額は数億円になると思う。私が政治家の実績を伝えると、芦原さんが金額をパッと決めた。芦原さんと一緒に運んだのは年間14、15人はおるでしょうな。他の役員が運んだ分もあった」
盆暮れに現金を渡した総理大臣は、角さん、三木〔武夫〕、福田〔赳夫〕、大平〔正芳〕、鈴木〔善幸〕、中曽根〔康弘〕、竹さん〔=竹下登〕まで。選挙のあるなしは関係なく、1回1千万円で年2回」(朝日新聞特別報道部『原発利権を追う』朝日新聞出版)
 
自民党・稲田朋美以外にも!原発マネーの流れと政治家の関与を追及せよ
 こうした歴史を踏まえれば、今回の関電の会見がいかに信頼に足らず、「関電被害者論」の情報操作を試みただけのトンデモかがわかるだろう。いずれにしても、追及すべきは関電の悪事と政治の関与だ。
 森山元助役は30年以上、関電の子会社「関電プラント」の顧問に座っていた。そして、同じく森山元助役が顧問を務め、関電側へ渡す資金を提供していた高浜町の建設会社に、入札を行わない「特命発注」が関電側から少なくとも18件行われている。関電がこの建設会社に発注した121件の工事のうち、実に75パーセントに相当する91件について、事前に関電の担当者から森山元助役に概算額などが伝えられていたという。
 また、森山元助役が取締役を務めていた警備会社とその関連会社が、自民党の稲田朋美衆院議員が代表を務める選挙区支部に献金を行なっていたことも、これまでにわかっている。わたしたちの電気料金を原資とする“原発マネー”が、一部の利権者でグルグルと回されていたのは確実だろう。
「稲田氏だけではありません。実は、別の政治家についても、森山氏が関与した会社や関電の関係会社を通じてカネが還流していた疑いが浮上しているんです。また、京都の綾部市役所に務めていた森山氏を高浜町役場に送り込んだのも、ある自民党の大物政治家が関与していたとの話も持ち上がっています。いずれにしても、もっと巨額の原発マネーが、裏で政治家に流れていた可能性は高い。電力会社OBが天下りしていることもあって、検察は関電への本格的な捜査や立件に及び腰です。さらなる闇を白日の元に晒すには、メディアが踏ん張るしかない」(全国紙社会部記者)
 何度でも言うが、この問題の「黒幕」は関電に他ならず、追及すべきはその不正と“原発マネー”の流れ、そして政治家の関与だ。決して、卑劣な情報操作に惑わされてはいけない。(編集部)