今回は、原発に関連する交付金の実態を高浜町の実例について報じました。高浜町では予算の53%、55億8千万円が原発に関連する固定資産税や交付金その他で賄われています。
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<依存の構造>(3) 増える交付金
中日新聞 2019年10月29日
十月の土曜日。高浜町の中央体育館で、小学生のミニバスケットボール大会が開かれていた。ヒノキ材をふんだんに使った内装。広いアリーナの二面コートを駆け回る子どもたちに、二階席の父母らが応援に声をからしていた。
老朽化した旧体育館を建て替え、二〇一七年三月に完成した体育館の建設費は十七億六千四百万円。町が財源の一つにしたのは、電源三法交付金のうちの核燃料サイクル交付金だった。高浜原発でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマル計画を受け入れたことで、国から支給された。
建て替えを巡っては、町でひと騒動があった。町側が当初想定した建設費は十五億円程度。予算オーバーとなるため冷暖房設備は設置しない方針だったが、近隣市町では冷暖房を整備しているとして町議会が「待った」をかけ、町側も方針を転換した。足りない分は町債などでまかなった。
町関係者は「町民の負担は増えることになったが、快適な環境で利用者に喜んでもらえる設備になった」と喜ぶが、町の負債増加になるとして方針転換に反対した元町議の釣本音次さん(69)は「原発のない普通の町ならできない増額。原発の潤沢な交付金があるからぜいたくに使ってしまう」と指摘する。
原発を引き受けた自治体のために、電力会社が一千キロワット時を販売するごとに国が三百七十五円を徴収して、その財源からさまざま交付金を配る電源三法交付金の仕組み。高浜町も同交付金の歳入が町の財政を支えている。
本年度の高浜町の予算百五億円のうち、原発に関連する歳入は53%にあたる五十五億八千万円。うち四割が原発施設の固定資産税などで、残る六割の三十一億九千万円が電源三法交付金の電源立地地域対策交付金や、県が関電から徴収する核燃料税。使途は道路建設、施設の維持管理費、職員の人件費など幅広い。
東日本大震災後に再稼働に至らず廃炉原発もあった美浜町などの立地自治体では、交付金が減った。一方、高浜町は高浜3、4号機が一六年に再稼働し廃炉原発もないため、原発延命を目指す国や税収増を狙う県の政策でむしろ増額傾向となっている。
国は運転開始から四十年超の原発一基あたりの交付金を一億円追加する制度を採用し、高浜1、2号機がある高浜町も一四年度以降に対象となった。県が原子炉内の燃料に課税していた核燃料税の配分は一一年度の原発停止で一億二千万円まで落ち込んだが、県が停止中の原子炉にも課税する制度を導入したことで「V字回復」している。
〇四年に比べ、一八年の電源立地地域対策交付金は一・五倍、核燃料税は三・四倍に膨れ上がった。交付金増額を背景にした豊富な町事業の恩恵を受けている地元業者は少なくない。中央体育館の擁壁の改修や駐車場の整備など約三億四千万円の工事は、電源立地地域対策交付金で実施。これらの工事は元助役の森山栄治氏(故人)に資金を出した同町の建設会社「吉田開発」が受注した。
町の元職員は現状を「甘くなった制度で得られたあぶく銭みたいなものだ」と指摘し、町の財政の将来を危ぶむ。「町は原発に伴う交付金にどっぷり漬かっているが、使用済み燃料の置き場所がなくなれば、原発を動かせなくなる。そうなる前に、真剣に考えなければならない」