東京新聞が湯浅陽一・関東学院大教授(環境社会学)にインタビューしました。
同教授は17年度に東海村から支援を受けて、「地域社会における脱原発のソフト・ランディングは、どのようにすれば可能か」というテーマで、原発なき村の将来を財政面から研究しました
東海村の場合は東海第二原発が古く、固定資産税はそれほど多くないことから、常陸那珂火力発電所からの税収の方が大きいという関係になっています。したがって再稼働をしなくても村の状況が極端に悪くなるとは思われないということです。
そして原発が国内で今後新設されるとは考えられず、現存の原発もどんどん古くなりいずれはなくなると思われるので、それに備えて原発なき将来を考える局面に差しかかっているのではないかとしています。
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<東海第二原発 再考再稼働>(7)
原発なき将来を考える時 関東学院大教授・湯浅陽一さん(47)
東京新聞 2020年2月5日
日本原子力発電(原電)東海第二原発が立地する東海村の支援を受け、二〇一七年度に、財政面から脱原発後の村の将来を研究した。
一九六三年度から二〇一五年度までの村の財政データを分析した。原発の財政効果としては、固定資産税が大きいということがよく言われているが、東海村の場合は原発が古く、固定資産税はそれほど多くない。
一方で、財政は余裕があり、恵まれていることが分かった。村に立地する常陸那珂火力発電所は、二号機が一三年十二月に運転を開始し、税収を増やした。現状では東海第二よりも常陸那珂火力の方が、税収への影響が大きくなっている。
さらに、村内には原発のほかに、日本原子力研究開発機構などの原子力研究施設が複数ある。ほかの原発立地自治体と比べれば、税収の中で原発の比率は低いことも明らかになった。
以上の点から、東海第二については、村の財政の依存度は決して高くないので、再稼働する必要はない。再稼働をしないことで、村の状況が極端に悪くなるとは思わない。
住民の間では、原発によって村の財政が成り立っているというイメージが強い。原発がなくなれば、村への経済効果がなくなるという意見もあるだろう。
だが、東海村のように、人口が一万人以上いる自治体は、再稼働をしないで全く影響がないというわけではないが、知恵を絞れば対応は可能だ。
廃炉作業にも長い期間を要することから、作業員が村に滞在することによる経済効果は、長期的に持続すると考えられる。
歴史的に見て、エネルギー源は石炭から石油、そして原子力と変遷してきた。かつての炭鉱の街は、石炭が盛んだった時代には石炭産業がなくなるとは想像もしていなかったが、現実はそうなった。例えば、北海道夕張市は、炭鉱が閉鎖されたことで主幹産業がなくなり、財政難に陥った。
東日本大震災以降、原発を取り巻く状況は厳しさを増している。原発が国内で今後、新設されるとは考えられない。現存の原発もどんどん古くなり、いずれはなくなると思う。
原発も、いずれは何かに代わると考えた方がいい。それに備え、原発なき将来を考える局面に差しかかっているのではないか。
東海村について研究した成果を発表した際、聴いていた村民から反応がなく、脱原発後の村の将来について、オープンに議論できる雰囲気ではないと感じた。
だが、そういう状態が長く続くと、街づくりをする基礎体力がなくなる恐れがある。かつての炭鉱の街のようにならないためにも、原発なき村の将来を考える時期は、すでに来ている。 (聞き手・松村真一郎)
<ゆあさ・よういち> 1972年、千葉県松戸市生まれ。2013年度から関東学院大社会学部教授。専門分野は環境社会学。17年度に、東海村から支援を受けて、「地域社会における脱原発のソフト・ランディングは、どのようにすれば可能か」というテーマで、原発なき村の将来を財政面から研究した。
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次回は三月上旬に掲載予定です。