福島原発事故に伴う県民健康調査に関する国際シンポジウムは2日、開幕しました。
福島医大県民健康管理センター長の神谷研二副学長は、甲状腺検査の二巡目の結果を巡り、放射線被ばく量と甲状腺がんの発見率に一貫した相関関係が認められないと説明した一方で、伊藤病院の加藤良平病理診断科長は、20歳以下での甲状腺がんの確認は極めてまれで構造も成人と異なると指摘し、「再発リスクを踏まえ、長期の経過観察が欠かせない」と強調しました。
福島で児童の甲状腺がんが高率で発生しているにもかかわらず、放射線被ばく量と甲状腺がんの発見率に一貫した相関関係が認められないことを以て、甲状腺がんが被曝と関係ないと見做すのは乱暴な議論です。
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福島県民健康調査現状を発信 国際シンポ福島で開幕
福島民報 2020/02/03
東京電力福島第一原発事故に伴う県民健康調査に関する国際シンポジウムは二日、福島市のザ・セレクトン福島で開幕した。初日は、原発事故に伴う甲状腺検査や受診者のケアの現状と課題を発信した。三日まで。
福島医大放射線医学県民健康管理センターの主催。「よりよい復興を、ともに」をテーマに約百五十人が聴講した。
センター長の神谷研二副学長は、甲状腺検査の二巡目の結果を巡り、放射線被ばく量と甲状腺がんの発見率に一貫した相関関係が認められないと説明した。
伊藤病院(東京)の加藤良平病理診断科長は、二十歳以下での甲状腺がんの確認は極めてまれで、構造も成人と異なると指摘した。その上で「再発リスクを踏まえ、長期の経過観察が欠かせない」と強調した。
血液や細胞などを詳しく調べる二次検査では、検査開始からの時間経過に伴い、思春期や青年期の受診者の割合が増え続けている。一方で、十八歳以上の受診率は低下傾向にある。福島医大災害こころの医学講座の瀬藤乃理子准教授は、県外への進学や就職などで受診が難しくなるケースがあるとして「各受診者のライフサイクルを見通したサポートが必要」と論じた。
シンポジウムに先立ち、竹之下誠一福島医大理事長兼学長があいさつし、井出孝利副知事が祝辞を述べた。
最終日は、内分泌腺がんが専門でシカゴ大のピーター・アンジェロス教授を迎え、日米の甲状腺がん治療を比較する。災害時のメンタルヘルスでは、豪州ニューサウスウェールズ大のリチャード・ブライアント教授が基調講演する。
「甲状腺検査」福島医大国際シンポ開幕 受診者支援在り方探る
福島民友 2020/2/3
原発事故を受けて県と福島医大が取り組む甲状腺検査などをテーマとした福島医大放射線医学県民健康管理センター主催の国際シンポジウムが2日、福島市のザ・セレクトン福島で2日間の日程で始まった。国内外の専門家が出席し、甲状腺検査で詳細検査の対象となった受診者への支援の在り方などを巡り議論を繰り広げた。
原発事故後に始まった県民健康調査でこれまでに得られた最新の成果を国内外に発信し、共有しようと開催。初日は約150人の出席者を前に甲状腺がんの専門家らが登壇し、甲状腺検査の現況とその評価などについて語った。
最終日の3日は午前8時45分に始まり、国内外の甲状腺がん診療の現状や、被災者のメンタルヘルスをテーマに議論を行う。当日参加も可能。参加無料。
正しい現状理解へ取り組み
甲状腺検査でより詳細な2次検査の対象となった受診者のサポートを担う公認心理師で、福島医大医学部災害こころの医学講座准教授の瀬藤乃理子氏は「社会で甲状腺検査を巡る情報が錯綜(さくそう)し、放射線の健康影響を巡る根強いスティグマ(偏見)も見られる」と指摘。その状況の中で「受診者が正しく現状を理解できるよう支援している」と取り組みを語った。
また、検査対象者の年齢層が年々上がっていくことから、「親から心理的に自立した青年期の受診者もおり、世代ごとの特徴に配慮した支援が求められる」と提言した。
甲状腺検査の2巡目検査(2014、15年度)について、県民健康調査検討委員会の部会で報告書をまとめた国際医療福祉大クリニック院長の鈴木元氏は、2巡目検査について「発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とした上で「今後はより詳細な推定被ばく線量を用いて、線量と甲状腺がん発見率との関連を検討する必要がある」と話した