福井県小浜市の明通寺の中嶌住職が16日、「若狭の原発の今」と題して講演しました。
同住職は、「若狭地方は世界一の原発密集地で『米軍基地が集中する沖縄と同じ構造が若狭にある』とし、それは過疎地に押しつけられてきた結果だ」としました。
そして「大飯3、4号機の2基を稼働すれば1日10億円の電力料金を稼ぐので再稼動を急ぐが、その結果、2基1年間で、死の灰は広島型原爆の2000発分、生成されるプルトニウムは長崎型原爆の60発分となる」と批判しました。
そのうえで「沖縄の人々が『オール沖縄』として声を上げているように、大都市と原発を抱える現地の人々が力を合わせて声を上げることが大切だ」と呼びかけました。
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原発集中「なぜ押し付ける」 小浜の住職・中嶌さん「都市住民も我が事に」
毎日新聞 2020年2月17日
福井県小浜市の明通寺住職、中嶌哲演さん(77)が16日、「若狭の原発の今」と題して京都府宮津市で講演した。15基の原発が集中する福井県若狭地方は「世界一の原発密集地だ」と語り、「米軍基地が集中する沖縄と同じ構造が若狭にある。なぜ、原発が大都市ではなく、過疎地に押しつけられてきたのか。大量の電力の供給を受けてきた大都市の人々も自分自身の問題として考えてほしい」と強調。一日も早く「原発ゼロ法案」を審議、制定させ、原発のない社会を目指すべきだと呼びかけた。
宮津市や与謝野町の住民たちでつくる実行委員会が企画展「福島第1原発事故から9年 福島の今と私たちのこれから」の一環として主催した。
中嶌さんは50年間、原発反対運動を続けてきた歴史から語り始めた。50年前、小浜市に原発の立地計画が持ち上がった時、既に若狭地方には7基(建設・計画中も含む)の原発があり、「まさか自分の町に原発がくるなんて」とびっくりしたという。「それまで原発に無関心だった自分にじくじたる思いがある」と語った。
15基のうち11基が関西電力の原発だ。6万〜7万キロワットの電力需要しかない若狭地方だが、関電の原発の発電能力は合わせて1000万キロワット近い。中嶌さんは「大飯3、4号機の2基だけで単純計算すると、1日10億円の電力料金を稼ぐ。1年だと3600億円だ。再稼動を急ぐ理由が文字通り金を稼ぐことにあるのは明らかだ」と指摘。「2基が1年動くと死の灰は広島型原爆の2000発分、生成されるプルトニウムは長崎型原爆の60発分となる」と批判した。
現在、若狭地方の原発15基のうち7基の廃炉が決まり、高浜3、4号機など4基が再稼動。40年以上の老朽炉の美浜3、高浜1、2号機の再稼働の準備が進み、日本原子力発電敦賀2号機は再稼働の安全審査中だ。
これらの原発が集中したことについて中嶌さんは「若狭が軽く見られてしまった。必要神話と安全神話の中で原発が国策として推進され、札束とインフラ整備で住民を懐柔して受け入れさせたのが実態だ」と説明。「自治体が受けたメリットは半世紀で7000億円といわれる。麻薬的な受益と巨大な利権構造が結びついた。福島原発事故で初めてとんでもない苦しみを受ける施設とわかった」と指摘した。
そのうえで「米軍基地が集中する沖縄の人々が『オール沖縄』として声を上げているように、大都市と原発を抱える現地の人々が力を合わせて声を上げることが大切だ」と呼びかけた。【塩田敏夫】