三重県南伊勢町と大紀町の境で計画されていた芦浜原発の建設が白紙撤回されて20年を迎え、1963年から37年間続いた建設反対運動に加わった住民の一人、元高校教諭の柴原洋一さんがその足跡をつづった「原発の断りかた ぼくの芦浜闘争記」(月兎舎)を22日に出版します。
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芦浜原発の闘争記を出版 白紙撤回20年に合わせ
中日新聞 2020年 2月19日
南伊勢町と大紀町の境で計画されていた芦浜原子力発電所の建設が白紙撤回されて22日で20年を迎える。1963年から37年間続いた建設反対運動に加わった住民の一人で、元高校教諭の柴原洋一さん(66)=伊勢市辻久留町=がその足跡をつづった「原発の断りかた ぼくの芦浜闘争記」(月兎舎)を22日に出版する。
柴原さんは、同社の季刊誌「NAGI」で、二〇一五~一八年に十四回にわたって「芦浜闘争私記」を連載。柴原さんが実際に見聞きした話を中心に、原発建設の候補地に挙げられた当初から、北川正恭知事=当時=が白紙撤回を表明するまで、原発の推進派と反対派で南島町(現南伊勢町)全体が分断されながらも、建設阻止を果たした一連の住民闘争の様子を書きつづった。
NAGI編集長の坂美幸さん(50)によると、連載期間中「定期購読をやめる」との声もあったが、回を重ねるうちに「闘争の歴史を知らなかった」「原発を止めてくれて感謝する」など好意的な意見が寄せられるようになり、出版に至った。
十八日に月兎舎で会見した柴原さんは「今『原発を止めたい』、『自分の地域で問題を抱えていてどうすればいいか分からない』という人にも参考になるように意識した」と思いを話した。出版にあたっては、運動に関わった当事者のエピソードを中心に組み立てて加筆し、芦浜原発に関わった人以外の誰が読んでも分かるように、地形や地名も補足した。
柴原さんは「原子力技術の危険性と、原発は計画段階から地域を破壊してしまうというむごさを知ってほしい。そうでないとまた同じことが繰り返される」と訴えた。
四六判二百二十ページで、二千部発行。税抜き千五百円。県内の書店やインターネットのアマゾンなどで購入できる。(足達優人)