有効な風評対策要求 処理水処分巡り、県民会議が政府に
福島民友ニュース 2020年07月29日
東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水を巡り、経済産業省は28日、「原発の廃炉に関する安全確保県民会議」の会合で政府小委員会がまとめた報告書を説明した。兼本茂議長(会津大名誉教授)は処分方法を決める政府に対し、風評被害の要因を丁寧に分析した上で、有効な情報発信などの対策を示すよう求めた。
県民会議は県民や学識経験者、各種団体の代表で構成。委員からは小委報告書で現実的な選択肢とする海洋放出の容認意見や、海洋放出への懸念が相次いだ。これを踏まえ兼本議長は国に「心の安心につながるには何をしたらいいのか。目に見える形で(対策を)考えてほしい」と述べた。
県民枠の委員のうち、川内村の遠藤真一さんは「本県復興や双葉郡の再生のためにも、早くこの問題を解決して前を向くべきだ」と指摘。浪江町の岡洋子さんは「浪江町は震災で全てを失ったが、前向きに生きている。(処理水の問題について)頑張っている人には『また何か起こるのではないか』との不安がある」と述べた。双葉町の中野守雄さんは「国民の放射線の知識レベルを上げていかないと次のステップに進めない」とし、世界の原発の状況や放射線について、簡単な表現で繰り返し情報発信することが重要だとした。
報告書を説明した政府の廃炉・汚染水対策現地事務所の木野正登参事官は「さまざまな意見を含め、しっかり判断する。方針決定の際は風評対策を示していく」と約束した。
小委は2月、国内外の実績などを踏まえ、処理水を薄めて海に流す海洋放出が最も現実的だとする報告書をまとめた。東電は現計画で原発敷地内の保管タンクは2022年夏にも満杯になると試算。準備に約2年かかるため、逆算すれば今夏から今秋ごろが方針決定の期限との見方が関係者の間で広がっている。