魚のセシウム排出、1匹ずつ飼育して分析 福島県水産資源研
河北新報 2020年07月21日
魚が体内に取り込んだ放射性物質をどう排出するのか把握するため、福島県水産資源研究所(相馬市)が1匹ずつ飼育して分析する研究を始める。これまでの調査で、同じ種類の魚でも放射性物質を体外排出する速度に個体差があるらしいことが分かっており、さらに詳しく調べてメカニズム解明を目指す。
県沖のモニタリング調査では、ほぼ全ての魚の放射性物質濃度が0ベクレルか検出限界未満。ただ、ごくまれに1キログラム当たり数十ベクレル程度(国の基準値100ベクレル)が検出されることがあるという。
理由ははっきりしていないが、担当する森口隆大研究員は「生息環境の影響に加え、個体によって放射性物質の排出速度が違う可能性がある」と推測。蓄積や排出のメカニズム解明は「沿岸漁業復興の後押しにもなる」(森口氏)として本格研究に乗り出す。
魚と放射性物質の関係を探る研究はこれまで、実験のほとんどが群れで飼う方式で行われてきた。群れでは個体差を調べるのに不十分なため、今回は一つの水槽で1匹ずつ飼育する。
研究所で種苗生産しているホシガレイを使い、1歳魚6匹を50日間、個別に飼育する。期間の前半は放射性のセシウム137が入った餌を与え、後半は通常に戻す。
定期的に魚と水槽内の水の放射線量を測り、排出速度などを調べる。比較のためずっとセシウム入りの餌を与える実験も行う。実験データを使い、体内に取り込まれたセシウムが半分に減るまでの時間「生物学半減期」などを計算する。