茨城県の大子町は、東海第二原発の深刻事故時の広域避難計画を策定しました。大子町は町のごく一部住民約100人ほどが30キロ圏内に居住しているため、その人たちを受け入れるとともに南東側に隣接する常陸太田市からの約3600人を受け入れることになっています。
避難計画は一応策定したものの、水害などが同時に発生した場合の対応や、体が不自由な人の支援方法、またコロナ禍中に事故が起きた場合など課題は残されたままで、ここでも避難の実効性には疑問符が付いています。
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東海第二事故備え、大子町が広域避難計画 複合災害対応に課題
東京新聞 2020年6月30日
大子町は、日本原子力発電東海第二原発(東海村)で深刻な事故が発生した場合に備えた広域避難計画を策定した。ただ、水害などが同時に発生した場合の対応や、体が不自由な人の支援方法など課題は残されたまま。新型コロナウイルスの集団感染を防ぐための対策についても検討が必要で、実効性には疑問符が付く。(水谷エリナ)
広域避難計画は、原発から三十キロ圏内の十四市町村で策定が義務付けられており、これまでに笠間、常陸大宮、常陸太田、鉾田の四市が策定し、大子町は五番目。ただ、いずれも実効性に乏しく、改善しなければならない。
大子町の計画によると、町民約一万六千五百人のうち、一部が原発から三十キロ圏内に入る盛金と北富田の各地区に住む約百人が対象。原則、マイカーで国道を通り、町立中央公民館で避難退域時検査(スクリーニング)を受ける。
避難所は中央公民館と町文化福祉会館の町内二カ所となる。ただ、風向きによっては、この二カ所にも大量の放射性物質が飛来する恐れがあり、使用できなくなる可能性がある。計画では、使えなかった場合の想定はしていない。
町は昨年十月の台風19号で大きく被災し、避難所に多くの住民が避難した。複合災害が起きれば、避難所に人があふれ、使用できなくなる恐れがある。さらに、避難所が被災しても、同様な状況になる。
そのため、町は町外に避難所を確保する必要がある場合には、県や国に対し支援を要請する方針。複合災害については引き続き検討を進め、順次計画に反映するとした。
また、町は常陸太田市の山田、染和田、天下野の三行政区に住む約三千六百人の住民を受け入れる避難先の一つでもある。町内の小中学校や公共施設など十三カ所が避難所となる。
このほか、常陸太田市と常陸大宮市の一部住民のスクリーニングが町立中央公民館や袋田第二駐車場、県大子合同庁舎の三カ所で実施される。計画には、両市からの受け入れ態勢なども盛り込んだ。
町総務課によると、昨夏に計画を作り始め、三月三十一日付で策定。新型コロナウイルスの対応に追われ、五月中旬に公表した。
だが、計画には感染症対策は具体的に触れられていない。町の担当者は「原子力災害に限らず、地震や水害などの際の避難所の対応に関するガイドラインを検討している」と説明する。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた避難所の設置を巡っては、内閣府が各都道府県に対し、集団感染防止のためにできるだけ多く開設することなどを求めている。これを踏まえ、県は感染の疑いのある人などを受け入れる避難所をあらかじめ確保するなどの対策例を各市町村に紹介している。