2020年7月19日日曜日

19- トリチウム汚染水処分 慎重に検討を

 福島原発に放射性物質トリチウムを含む処理水がたまり続けている問題で、政府は17日、福島市で第5回の意見聴取会を開き、出席者からは処理水の処分方法を慎重に決めるよう政府に求める意見が相次ぎました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
福島第1処理水「慎重に検討を」 第5回意見聴取
河北新報 2020年07月18日
 東京電力福島第1原発に放射性物質トリチウムを含む処理水がたまり続けている問題で、政府は17日、福島市で第5回の意見聴取会を開いた。出席者からは処理水の処分方法を慎重に決めるよう政府に求める意見が相次いだ
 福島県議会の太田光秋議長や流通業界の関係者、避難指示が出た町村の住民ら7人が出席。処理水放出の賛否は明言せず、風評被害を懸念する声が多かった。太田議長は「多くの県民や国民の意見を丁寧に聞き、理解してもらった上で処理水の取り扱いを決めてほしい」と語った。
 ただ一人、明確に海洋放出に反対したのは、原発の廃炉状況を確認する福島県の廃炉安全確保県民会議メンバーの菅野良弘さん(川俣町)。「現在の福島の復興は政府の施策が成功したからではなく、県民の努力のたまもの。海洋放出をすれば10年の努力が水泡に帰す」と指摘した。
 座長の松本洋平経済産業副大臣は会合後、取材に「住民の率直な意見を聞くことができ、参考になる部分が多かった」と語った。今夏がリミットとされる処分方針決定時期に関しては「今後のスケジュールは示せない」と言及を避けた。


福島第一原発 トリチウム水処分 進め方や風評対策に意見相次ぐ
NHK NEWS WEB 2020年7月17日
東京電力福島第一原子力発電所で増え続けている、トリチウムなどの放射性物質を含む水の処分方法の決定に向けて、政府は17日、5回目となる関係者から意見を聞く会を福島市で開きました。出席者からは、決定までの具体的な進め方や風評対策などについて丁寧な説明を求める声が相次ぎました。
トリチウムなどを含む水の処分をめぐっては、ことし2月、国の小委員会が基準以下に薄めて海か大気中に放出する案が現実的だとする報告書をまとめ、政府は、地元などから意見を聞いたうえで処分方法を決定することにしています。
17日は、5回目となる意見を聞く会が福島市で開かれ、この中で、福島県議会の太田光秋議長は「さまざまな意見にどう対応し、どう反映していくのかを丁寧に説明しないかぎり、処理水の取り扱いについての議論は前に進まず、不安だけが助長される」と指摘し、処分方法を決定するまでの具体的な進め方について明らかにするよう訴えました。
また17日は、原発周辺の自治体の住民4人も出席しました。
住民からは「風評対策がしっかり行われるか不安だ。国が責任を持って万全な対策を行うことを示してほしい」とか、「トリチウムの正確な情報は伝わっていないし、理解されていない。誰もが理解できるよう説明してほしい」などといった意見が出され、4人中2人は海への放出に反対する考えを示しました。
政府は、今後の意見を聞く会の開催について調整中だとしています。

福島県議会 太田議長「プロセスの情報 積極的に公開を」
福島県議会の太田光秋議長は、国からの聞き取りに対し「県内21の市町村議会から意見書が提出されているほか、国が行っている意見の公募においても、さまざまな意見が寄せられていると思う。これらにどう対応し、どう反映していくのかを丁寧に説明し続けていかないかぎり、処理水の取り扱いについての議論は前に進まず、不安だけが助長される」と指摘しました。
そのうえで「処理水の取り扱い方針を決定するまでのプロセスについての情報を透明性を持って積極的に公開するなど、国民の理解を深めるための取り組みを徹底することを求める」と強く訴えました。

県青果市場連合会会長「風評払拭ための組織設立を」
福島県青果市場連合会の佐藤洋一会長は「原発事故のあと、関係者が一丸となって風評対策に取り組んできたが、いまだに理解されていないことが多い。個人的にはトリチウムはセシウムと違い健康への影響はないと理解しているが、一般には同じ放射性物質と捉えられているのは問題だ。政府には、第三者の立場から風評を払拭(ふっしょく)するための組織を設けてほしい」と述べ、風評対策の徹底を求めました。

県水産市場連合「県民の理解ないまま海に流すのはありえない」 
福島県水産市場連合会の石本朗会長は「国は処理水は科学的に安全だとしているがそれが海に流れたときに一般の消費者がどういう反応を示すか、また、どこまで処理水への理解が進んでいるのか、親切丁寧に説明してほしい。海洋放出がより適切なのか、慎重に県民、国民の声を聞いたうえで政府の決定をしてほしい」と述べました。
また、その後の報道陣の取材に対して「基本的に県漁連や全漁連と立場は一緒だ。県民に理解されないまま処理水を流すのはありえない」と話し、トリチウムを含む水を海に放出することには反対を明言しました。

県民会議メンバー「問題が起きたら国が責任持つと断言を」
今回の意見を聞く会には、廃炉作業の進め方などについて幅広く意見を聞くため県が組織した、原発周辺の13市町村の住民の代表などで構成される県民会議のメンバー4人も出席しました。
このうち、広野町の会社員、秋田英博さんは「町内の企業の多くは風評被害にいまだに苦労している。トリチウムの処分については丁寧な説明が求められ、安全性の科学的な根拠を十分に示したうえで、新たな風評を発生させないことや、問題が起きた場合には国が責任を持って安全を確保すると断言することが大事だ」と述べました。

県民会議のメンバー「トリチウムの正確な情報が伝わっていない」
県民会議のメンバーの楢葉町の猪狩光市さんは「国の資料の中で、トリチウムは自然界にも存在し、国内外の原発から排出され、健康被害は確認されていないとしているが、私にも国民にもトリチウムの正確な情報が伝わっていないし理解されていない。トリチウムの正しい情報発信に加え、新たな風評を発生させないよう国と東電は万全の対策を行い、慎重に廃炉作業に取り組んでもらいたい」と述べました。

県民会議のメンバー「トリチウムを取り除かないかぎり難しい」
県民会議のメンバーで、大熊町の井戸川洋一さんは「原発事故から今に至るまでの苦しい思いをしてきた年月は消すことはできず、トリチウムを放出することで、また同じ状況を生み出すことになる」と述べました。
そのうえで「世界的に海への放出が行われているから問題ないという説明があるが、多くの人は、トリチウム=放射能と考えているので、トリチウムを取り除かないかぎり海への放出は難しい」と反対の立場を示しました。

県民会議のメンバー「処理水は保管の継続を」
県民会議のメンバーの川俣町の菅野良弘さんは「毎年、原発を視察しているが、処理水の方針や提案の案について反対したい。県民で賛成する方はいないだろうと思っていて、トリチウム含む処理水は保管の継続をお願いしたい」と述べました。
その理由について「処理水の保管場所が無くなるということは分かっていたはずで、どのような検討がされたのか見えない部分がある。また、風評被害対策も国は関係機関が一丸となって取り組み国内外に発信するとしているが、具体的な例が出てこない。いかにして無くすか、その対応策を現実的な形で国民に示してほしい」と述べました。