古里浪江で酒造り再開へ 原発事故で長井に避難「鈴木酒造店」
河北新報 2020年07月25日
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県浪江町から山形県長井市に醸造拠点を移した「鈴木酒造店」が来年初め、同町での酒造りを復活させる。2011年3月の震災発生から10年の節目。社長の鈴木大介さん(47)は「これから浪江に住む人が誇りに思えるものづくりをしたい」と意気込む。
鈴木酒造店は22日、浪江町で8月1日にオープンする「道の駅なみえ」に併設予定の地場産品販売施設への入居が内定した。販売施設の開業時期は新型コロナウイルスの影響で不明瞭だが、来年1、2月ごろを予定している。
床面積約350平方メートルで、酒蔵と販売コーナーを設ける。浪江産の酒米を用い、新たにリキュール類やオリジナルの日本酒も開発を進める方針。来場者は酒蔵で醸造工程の見学もできるという。
江戸時代から続く鈴木酒造店は銘酒「磐城壽(いわきことぶき)」などで知られるが、津波で酒蔵が全壊。原発事故が追い打ちとなり、鈴木さんは一家で米沢市へ避難した。その後、長井市に醸造拠点「長井蔵」を設けて移り住み、11年末に酒造りを再開。17年には全国新酒鑑評会で金賞に輝いた。
被災後も新銘柄の開発など挑戦を重ねてきた鈴木さん。今後も長井蔵で醸造を続けつつ、古里の酒蔵でさまざまな試みを計画する。
鈴木さんは「10年は早かったが、積み重ねてきた苦労一つ一つの重みを感じる。醸造や販売を通じて浪江の人たちの暮らしを掘り起こし、品質の高い酒を造りたい」と話す。