福島第1原発の事故の発生から間もなく12年を迎えますが、今も多くの課題や難題を抱えていて、一向に廃炉は進んでいません。
1号機の建屋上部にある使用済み燃料プールには、392体の核燃料が残っていて、これを取り出すのに建屋全体を大型カバーですっぽり覆い、内部でまずがれきなどを撤去する必要があります。当初は17年度から取り出しを開始する予定でしたが、それが27年度からと10年も遅れています。
1~3号機で溶け落ちたデブリの総量は推計880トンで、23年度後半に取り出しに着手することになっていますが、その量は僅かに「耳かき程度」ということで、いつ本格的な取り出しが始まるかの目途も立っていません。
政府はトリチウムを含む「処理水」の海洋放出を「今年春から夏ごろ」としていますが、地元漁協は「断固反対」の姿勢を崩していないのでどうする積りなのか、政府の考えが分かりません。
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福島第一原発事故から12年 1号機の燃料の取り出しは「ほぼ10年遅れ」など課題山積
AERA dot. 2023/2/5
東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から、間もなく12年を迎える。今も多くの課題や難題を抱えている。福島第一原発に入った記者がリポートする。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。
【図】原子力発電所の現状はこちら
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水素爆発で吹き飛んだ原子炉建屋が、鉄骨むき出しのまま今なお無残な姿を晒している。
東京電力福島第一原発。100メートル先に、事故を起こした1~4号機の原子炉建屋を望む高台に立った。
「1号機は、2023年度ごろを目標に大型カバーの設置を完了させる予定です」
福島第一廃炉推進カンパニーリスクコミュニケーターの高原憲一さんが説明する。1号機の建屋上部にある使用済み燃料プールには、392体の核燃料が残っている。これを取り出すのに建屋全体を大型カバーですっぽり覆い、内部でがれきなどを撤去し、27年度から取り出しを開始するという。
未曽有の事故から間もなく12年。1月上旬、記者は取材団の一員として廃炉作業が続く福島第一原発に入った。東電は、工事は一歩ずつ進んでいるとするが、その歩みは遅く、いくつもの難題を抱えている。
本来、1号機の燃料の取り出しは17年の計画だったが、ほぼ10年遅れとなっている。
東電が「廃炉の本丸」と位置づける、1~3号機の原子炉に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに至っては、強い放射線量に阻まれ先行きが見えないままだ。1~3号機で溶け落ちたデブリの総量は推計880トン。ようやく23年度後半に取り出しに着手するというが、取り出すのは「耳かき程度」(高原さん)で、その後のことについては「まだ何も言えない」(同)。
■差し迫る海洋放出
5号機東側の海沿いの敷地では、敷地内にたまった放射性物質のトリチウムを含む「処理水」の海洋放出のための作業が進んでいる。
処理水をためておく水槽(立て坑)が掘られ、その側面から沖合約1キロまで海底の岩盤をくり抜きトンネルが掘られている。東電によると、海中にはトリチウムの濃度を国の排出基準の40分の1未満に薄めて放出するという。
1月中旬、政府は海洋放出を「今年春から夏ごろ」とする方針を示した。だが、処理水の海洋放出について地元漁協は「断固反対」の姿勢を崩さない。東電も政府も、地元の漁業者の理解なしには処理水の海洋放出を実施しないと約束しているが、地元の理解を得られなかった場合どうするのか。高原さんは、
「ご理解いただけるように進めていくしかないと考えています」
と繰り返した。
多くの課題や難問を抱え、いまだ解決策が見えない福島第一原発の廃炉。今も原発周辺には人が住めない地域が残り、少なくとも2万人以上が福島県外での避難生活を余儀なくされている。(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年2月6日号より抜粋