原発の新規制基準では、断層などの痕跡が地表に現れない「未知の震源」については、地下構造のモデルを設定しそれから基準地震動を求めることとされています。ところが九電の提案モデルでは、実際の観測記録や掘削調査でのデータと整合しないため、規制委から繰り返し再検討を求められています。
これは観測記録や掘削データと整合するモデルにすると、基準地震動が大きくなって既設設備に追加の補強工事を行う必要があるため、九電はそれは避けたいということです。
元々原発の基準地震動は、これまでに実際に起きた地震に比べ著しく低いという実態があります。九電は小細工は止めて基準に沿った真っ当な基準地震動を設定し、必要な既設設備の補強を行うことに舵を切るべきです。
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耐震見直し遅れる川内原発、運転停止が現実に? 原子力規制委への釈明に追われる九電には「苦い過去」が
南日本新聞 2023/2/26
原発の耐震対策の前提となる基準地震動の見直しで九州電力が遅れを取っている。2024年4月までに許可を得なければ、川内(薩摩川内市)、玄海(佐賀県)の4機は停止に追い込まれる可能性がある。福島第1原発事故後、全国に先駆けて再稼働させた九電は業界トップランナーと評される。ただ、テロ対策施設の完成遅れで川内が運転停止に追い込まれた苦い過去もあり、審査合格への道は見通せない。
【写真】原発の基準振動策定の流れを図で理解する
原発の地震対策の新規制基準では、断層などの痕跡が地表に現れない「未知の震源」による地震を新手法で評価するよう要求。新基準に見直された21年4月から3年以内に、九電は原子力規制委員会の許可を受ける必要がある。
これまで川内9回、玄海8回の審査を受けた九電が苦戦するのは、原発施設に届く地震波に影響する地下構造のモデル設定だ。九電の提案モデルでは、実際の観測記録や掘削調査でのデータと整合せず、規制委から繰り返し再検討を求められている。
当初「3年あれば何とか対応できる」(関係者)としていた九電に焦りが見え始めたのは昨夏以降。計画の遅れをただされる場面が目立ち、原子力規制庁の担当者が頭を抱える場面も。秋には九電の担当役員が「(規制庁側との)コミュニケーションで足りない部分があった」と釈明。今月24日には池辺和弘社長が規制委から聴取を受ける事態に発展し、謝罪と釈明に追い込まれた。
目に見えない地下の地層や岩盤の特徴を理論化する困難な作業だが、電力関係者は「原発の優等生である九電の技術力や情報量で対応できないことはない」と不思議がる。規制委員の一人も「そんな難しいことを要求しているわけではない」と認める。
遅れの背景にあるとされるのが、今回の許可後に必要性が検討される原発施設への追加工事の存在だ。
規制庁関係者は「地震動評価を小さく見積もり、大規模な費用のかかる工事の規模を小さくしようと考えた可能性がある」と推測。燃料高などで圧迫される事業経営とのバランスに理解を示した上で、「一連の対策に時間をかければさらにコストがかかり、元も子もない」と語る。
川内1、2号機では、耐震基準の見直しのほか、40年超の運転延長の審査も進む。規制委は両審査が影響し合う可能性も示唆する。池辺社長は24日の意見聴取で「安全を最優先に進める」と述べ、耐震基準の見直し審査に向けた社内態勢を強化したと報告。取り組み状況については「地域や社会に安心していただけるよう積極的に情報発信する」と強調した。