2023年2月18日土曜日

問われる東電の適格性 柏崎刈羽原発の再稼働 県の判断に注目(産経新聞)

 柏崎刈羽原発の再稼働に関する県独自の3つの検証委員会は1月末ですべて報告書が出そろいましたが、それらを総括する総括委員会が目指そうとしているのが県の意向と異なる、というクレームが出されたため、審査が止まっています。それは花角知事がひたすら「色のつかない」報告書を求めたのに対して、池内了委員長はそれには承服できないとしているためです。
  ⇒22.12.30)新潟県独自の『検証総括委』なぜ開かれない 委員会と県の“深い溝”
 その件を除いても「避難委員会」からは456の疑問点が出されているほか、今年も積雪時に円滑に避難できる保証は確認されなかったなど、「避難」における問題は一向にクリアされていません。
 産経新聞が柏崎刈羽原発の再稼働について「問われる東電の適格性 ~ 」とする記事を出しました。原発再稼働の問題で産経新聞がこうした批判的なタイトルを掲げるのは珍しいことです。それにしても県が避難に関する問題を主体的に解決しようとする意志を持っているのか疑問です。避難はある意味では最大の問題なので、時間切れだからでは済まされません。
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問われる東電の適格性 新潟・柏崎刈羽原発の再稼働問題 是非巡り県の判断に注目
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政府は、国内の原発7基を今夏以降、再稼働させる方針を打ち出した。その一つ、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)7号機の再稼働問題が今春以降、動き出しそうだ。県が再稼働の是非を議論する際の判断材料にする原発に関する検証報告書が3月末までに出そろう見通しとなり、議論の環境が整いつつある。さらに、再稼働のカギを握るとされる、原子力規制委員会による同原発への追加検査の結果も2~3月ごろには取りまとめられる予定だ。

    【イラストでみる】 全国の原発の稼働・審査状況
https://www.iza.ne.jp/article/20230212-PILIKZK7SZLAZPHNLRQRZRFGFM/photo/S3QUN4DR6RINDIMVSDN7PJPXBI/?utm_source=yahoo%20news%20feed&utm_medium=referral&utm_campaign=related_link 
東日本大震災と福島第1原発事故(平成23年)後、国内の原発は全て停止したが、規制委の新規制基準の審査に合格した九州電力川内1、2号機(鹿児島県)が27年に再稼働したのをはじめ、これまでに6原発10基が再稼働している。現在はうち8基が運転中だ。
政府は昨年8月、電力需給の逼迫(ひっぱく)緩和や脱炭素推進を目的に今夏以降、さらに7基を再稼働させる方針を表明。この中に、柏崎刈羽6、7号機や東北電力女川2号機(宮城県)が含まれている。女川2号機は来年2月の再稼働を目指し、現在、安全対策工事が進められている。

地元同意
柏崎刈羽原発について、東電は県、柏崎市、刈羽村と安全協定を結んでおり、再稼働はこの3自治体から事前に同意を得てから行うことになる。柏崎市と刈羽村の首長はエネルギー安定供給の観点などから原発は必要との立場で、残る県の判断が注目されている。
県は平成15年以降、3つの委員会を立ち上げ、原発に関する検証作業を行ってきた。福島第1原発事故の原因を検証し、柏崎刈羽の安全対策を確認する「技術委員会」、事故時の安全な避難方法について検証する「避難委員会」、福島事故が健康や生活に及ぼした影響を検証する「健康・生活委員会」である。
全ての委員会の報告書が3月末までに出そろう見通しとなり、4月以降、検証作業は「検証総括委員会」に移行。各委員会から出てきた報告書の整合性などをチェックし、一つの報告書として束ねる作業を行う
花角英世知事は「総括委で各報告書が束ねられると検証作業は一つの区切りを迎え、再稼働(の是非)についての議論を始めることになる」と話している。

厳しい視線
2月1日、県の技術委が新潟市内で開かれ、席上、東電がやり玉に挙がった。
東電は、柏崎刈羽3号機が8月に運転開始から30年を迎えるのを前に、規制委の審査を受けるための書類(高経年化技術評価書)を作成。その書類に150カ所もの誤りがあったのだ。うち131カ所は3号機の部品など設備情報に関するもの。本来、3号機の設備を一つ一つ確認して記載すべきところを、2号機の設備情報をそのまま流用して記載していた。
流用について、技術委の委員から批判が相次いだ。元日本原子力研究開発機構研究員の岩井孝委員は「このようなことをしていると東電の原発運転の適格性に疑問を持たれてしまう」と指摘。座長の小原徹東京工業大科学技術創成研究院教授も「原発の運転適格性に関わる案件と思っている」と問題視した

不安の声続出
一方、東電は原発への地元理解を得るため、1月30日から2月11日にかけて、柏崎市など県内5カ所で住民向け説明会を実施。参加者からは「大雪の中で事故が起きた場合、安全に避難できるのか」など不安の声が相次いだ
柏崎刈羽では、IDカードの不正使用など、テロ対策の不備が相次いで発覚。規制委が事実上の運転禁止命令を出し、現在、追加検査を実施している。結果は2~3月ごろには取りまとめられる見通しだ。

花角知事は規制委に対し「東電に原発を運用する技術的能力があるのかどうかを追加検査でしっかり調べてほしい」と求めた。県が再稼働に同意するかどうかの議論では、東電の原発事業者としての適格性が問われることになる。(本田賢一)