2013年12月18日水曜日

収束宣言後は作業員がん検診補助は廃止 福島現場

 かつて野田首相が行った福島原発事故の「収束宣言」は、無意味・無内容なものとして今では国民の脳裏から忘れ去られています。それにしてもなぜ拙速にあんな宣言をしたのか、彼の無定見の程が窺われます。
 
 野田氏は民主党が第1党になった衆院選挙で、官僚が天下り先に12兆円の予算を投じていることをバラし、官僚の天下りを家を蚕食するシロアリにたとえて、「シロアリを退治すれば12兆円が浮くので、消費税の増税は不要です。私はやらないと言ったことは絶対にやりません(要旨)」という演説を繰り返しました(その選挙演説の動画が観られます)。
 しかし自分が首相になると、そのシロアリの退治は全く行わず、選挙公約と正反対の消費税増税に向けた3党合意を作り上げ消費税増税の道ならしをしました。
 国内で唯一大飯原発を再稼動させたときにも、彼はテレビで「私が責任を持ちますから」と、全く意味不明なことを堂々と述べました。
 
 本当に「言葉の軽い人間」というしかありませんが、その無意味な収束宣言が、それ以降 福島の現場で被曝した作業員たちの「がん検診」への補助を打ち切る線引きになっていたことが分かりました。
 収束宣言前に作業した作業員全員健康状態を追跡し、一定の被ばくをした作業員については国や雇用企業の負担で白内障やがんの検診を受けられますが、宣言後に就業した作業員にはそれらの補助が適用されないということです
 
 今でも福島の現場には、近づいてごく短時間でもそこに留まれば致死量の被曝をする場所があることが、つい先日も報道されたばかりです。
 そんな実態のなかで、どうしてあの無意味な宣言がこんな風に悪用されなければならないのか、「緊急作業でなくなったので」という厚生労働省の説明はあまりにも空虚です
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福島作業員がん検診補助 収束宣言前後で格差
東京新聞 2013年12月17日
 政府の東京電力福島第一原発「事故収束宣言」から、16日で2年になった。作業員は今も被ばくしながら働いているが、働き始めた時期が宣言の前か後かで、がん検診など補助制度の扱いが違っている。一定の被ばくをした宣言前の作業員は無料で受けられるが、宣言後の作業員は自己負担。待遇の大きな違いに専門家は「宣言で線引きせず、広く検診を受けられるようにすべきだ」と求める。 (片山夏子)
 
 厚生労働省は「宣言前は原子炉が不安定で『緊急作業』としていた。作業員の不安が大きいため長期的な健康管理が必要とされた。宣言後は解除して、一般の原発と同じ扱いになった」と説明する。
 宣言前に作業した作業員を、国は全員登録。健康状態を追跡する。さらに一定の被ばくをした作業員は、国や雇用企業の負担で、白内障やがんの検診を受けられる。より低い被ばくの作業員でも、検診と精密検査の費用を、東電が負担する。
 その補助が宣言後に働き始めた作業員には適用されない。しかし、宣言後も被ばくの危険性は高く、不安は変わらない。
 
 宣言の一カ月後から建屋周りのがれき撤去などに携わった男性は、八カ月で年間の上限(五〇ミリシーベルト)を超える被ばくをした。宣言の前から働き、同程度の被ばくをした同僚は負担なしでがん検診を受けたのに、この男性は三~四万円を払うことになる。「扱いの違いに驚いた。費用も掛かるし、検診はまだ受けていない。今後も高線量被ばくをする人は出る。せめて検診は受けさせてほしい」と訴えた。
 
 補助で年に一度、がん検診を受けている男性は「被ばく線量が高いのに対象外の同僚が多い上、宣言後は給料や危険手当など待遇も悪化した。政府は事故が収束していないのを認め、宣言を撤回してほしい」と求めた。
 放射線医学総合研究所の明石真言(まこと)理事は「医学的には、収束宣言で線引きするのはおかしい。作業員の不安解消のためにも検診の範囲は広げるべきだ。作業員の登録を一元化し、健康状態をデータベースにするなど、被ばく管理方法全体を見直す必要がある」と話した。

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