2014年1月20日月曜日

六ケ所村再処理工場敷地に火砕流が2回到達

 六ケ所村使用済み核燃料再処理工場敷地に、火山噴火に伴う火砕流が3万2千年前と1万5千年前の2回到達した可能性が高いことが分かりました。南西約60キロの活火山「十和田」の噴火によるもので、原燃の調査で痕跡が確認されました。
 規制委の「火山影響評価ガイド」は、火砕流が及ぶ可能性がある場合は原発の建設を禁じています。それに対して日本原燃は「カルデラ(大陥没)ができるような大規模噴火が発生するとしても数万年先だ」と主張し、再処理工場の運用期間中に再び火砕流が到達する可能性は十分に小さいとしていますが、地震では12~13万年以内に動いた地層は活断層として原発の建設を禁止しているので、そういう言い訳は成り立たない筈です。
 今度の再処理工場稼動の審査で、原子力規制委がそうした火砕流の痕跡をどう判断するか注目されます
 
 もともと六ヶ所村の再処理工場は、使用済み核燃料を再処理して「核燃料サイクル」を廻すということでスタートし、そのサイクルの基本となる「高速増殖炉」が安全に運転されるということが前提でした。しかし「高速増殖炉」は危険なだけで技術的に確立される見通しはなく、100歩譲って技術的に確立されたとしても全く「経済性」のないものでした
       2014年1月9日 「六ケ所村 核燃料再処理工場の稼働を申請 
   (プルサーマル計画は、プルトニウムの「高速増殖炉」での使用が見通せないため、その代用の方法としてウラン燃料にプルトニウムを混合しそれをこれまでの原発で燃やすというものです。しかしプルトニウムの発癌性はウランとは比較にならないほど高いので、通常の原発にプルサーマル燃料を用いるのは危険だとされています)
 
 この見通しのない再処理工場にはこれまでに2兆円余りが投じられてきました。これを機会に、今度こそ再処理工場は中止にするべきです。
 
 デーリー東北新聞の記事を紹介します。
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再処理工場に火砕流痕 「十和田」が噴火
 デーリー東北新聞2014年1月20日
 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の敷地に、火山噴火に伴う火砕流が3万2千年前と1万5千年前の2回到達した可能性が高いことが19日、原燃が原子力規制委員会に提出した資料で分かった。いずれも南西約60キロの活火山「十和田」(青森、秋田両県)の噴火によるもので、原燃の調査で痕跡が確認された。
 規制委の「火山影響評価ガイド」は、火砕流が及ぶ可能性が十分小さいと評価できない場合は原発の建設を禁じており、規制委が進める再処理工場の審査で、これらの痕跡をどう判断するか注目される。
 
 十和田は約20万年前に活動を開始、大規模噴火による陥没(カルデラ)に水がたまって十和田湖ができた。原燃は「敷地は火砕流の到達した末端部分。カルデラができるような大規模噴火が発生するとしても数万年先だ」と主張。再処理工場の運用期間中に再び火砕流が到達する可能性は十分に小さいが、火山活動を監視するとしている。
 敷地に到達したとみられるのは3万2千年前の「大不動火砕流」と、1万5千年前の「八戸火砕流」。八戸火砕流は敷地内で軽石の混じった斑点状の火砕流堆積物を確認。厚さは約20センチだった。敷地南の鷹架沼付近では大不動火砕流の堆積物が見つかった。敷地内でも、大不動火砕流によると考えられる小さな軽石が確認された。
 敷地北側でも二つの火砕流に由来するとみられる軽石が見つかっており、火砕流が敷地北側まで広がった可能性がある。
 
 群馬大の早川由紀夫教授(火山学)は「火砕流の挙動と十和田湖からの距離を考えると、到達していても不思議はない」と指摘。ただ、原燃の資料は不十分で「火砕流の直前に高く上がった噴煙から降り積もった軽石を見ている疑いがある」として、規制委による再調査が必要ではないかとしている。
 原発と火山をめぐっては、九州電力川内原発(鹿児島県)や北海道電力泊原発でも過去に火砕流が到達した可能性が高いが、事業者は敷地内で火砕流堆積物が見つかっていないことを根拠に「到達していない」と主張している。
 
 
 
火砕流「高速で疾走、焦土に」と専門家
 デーリー東北新聞2014年1月20日
 六ケ所村にある再処理工場の敷地を2回の火砕流が襲ったとみられる活火山「十和田」は、過去に大規模噴火を繰り返している。専門家は、「火砕流は時速100キロ以上でジェットコースターのように山野を疾走し、地表はくまなく焦土と化した」としている。
 
 群馬大の早川由紀夫教授(火山学)によると、十和田湖周辺では4万3千年前以降に起きた4回の火砕流の堆積物が見つかっている。
 再処理工場に及んだ可能性がある大不動火砕流(3万2千年前)と八戸火砕流(1万5千年前)は特に大規模で、地下から噴出したマグマはそれぞれ推定約500億トン。少なくとも半径50キロの範囲は数時間以内に焼き尽くされた。
 早川氏は、約60キロ離れた再処理工場に火砕流が達した可能性を「確率は50%より高く、70%くらい」と推測する。
 火砕流は高温のガスの流れだ。早川氏は「八戸火砕流の末端での温度は300度くらい」と指摘。この火砕流が通過した後には地形を薄く覆う「火砕流ベニア堆積物」が残るが、日本原燃の資料では、これを確認できないとしている。
 早川氏は「事業者任せではなく、規制委が専門家に依頼してきちんと調査するべきだ」と訴えている。