2019年12月26日木曜日

トリチウム汚染水処分 「前例」を理由に放出するのは許されない

 政府はトリチウム汚染水は「従来も海洋放出されてきた前例がある」を理由にして海洋放出などを主張していますが、それは国民が知らないままに行われたもので放出量も少量でした。したがって福島原発に保有されているトリチウム汚染水を海洋乃至大気に放出して良いという理由にはなりません。
 北海道新聞が「福島汚染水処分 『前例』強行は許されぬ」とする社説を掲げました。
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社説 福島汚染水処分 「前例」強行は許されぬ
北海道新聞 2019/12/25
 経済産業省は、東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ汚染水の処分方法を事実上、海洋放出と大気放出の2案に絞り、専門家らでつくる小委員会に提示した。
 東電は、敷地内のタンクでの保管が2022年夏に限界に達するとの試算をすでにまとめている。今後は廃炉作業も本格化し、作業用スペースの確保も必要となる。
 時間の猶予がない中、政府としては過去に実行されてきた処分方法で決着を急ぎたいのだろう。
 問題は、どちらの方法も地元漁業や農業への風評被害が憂慮されるのに、社会的影響や対策に関する議論が抜け落ちていることだ。
 地元が納得する風評対策を示さぬまま、「前例」を理由に処分を強行することは認められない
 福島第1原発では原子炉に注がれる冷却水に地下水が混ざり、高濃度の汚染水が増え続けている。
 東電は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理しているが、トリチウムは技術的に取り除くことができないため、これを含んだ水をタンクで保管してきた。
 水産物や農産物の風評被害に長年苦しんできた福島の人たちは、陸上での長期保管を要望している。経産省は今回、タンク増設用の敷地確保や汚染水の移送が困難だとしてこれを退けた。
 そう主張するなら、最優先で議論すべきは、他の方法を選んだ場合の地元への影響と対策だろう。
 なのに経産省は、国内外の原発で実績のある処分方法だという技術的利点を挙げただけで、風評被害については「定性的、定量的に大小を比較することが難しい」と分析を逃げた。極めて無責任だ
 トリチウムは人体への影響が軽微で、希釈して放出すれば環境への問題はないと政府は言うが、福島では昨年夏、保管中の水の約8割に他の放射性物質が高濃度で残留していることが発覚した。
 東電は再浄化を約束したものの、当初はこの事実を積極的に知らせようともしなかった。
 世界貿易機関(WTO)が今春、福島の水産物を輸入禁止にした韓国の措置を容認するなど、食の安全性に対する懸念は今も国内外に根強く残っている。
 「期限ありき」で汚染水処分を急げば、地元漁民らの生活基盤を奪うことになりかねまい。
 福島の過酷事故の責任は、国策民営で原発を推進してきた政府と東電にある。地元が納得する対応策を打ち出すことが最低限の義務であることを忘れてはならない。