2020年12月22日火曜日

40年超原発 なし崩し的運転延長困る(新潟日報)

 新潟日報が、40年超の原発が次々と再稼働の規制基準に合格している実態を痛烈に批判しました。
 12原子炉等規制法が改正され原発の運転を原則40年に制限しました(それまでは法的に運転期間の定めはなし)。同時に規制当局が認めれば1回に限り20年延長できるとしたものの、改定時に政府は「あくまで例外中の例外」と強調したとしています。
 それが現状に至った責任は挙げて規制委にあります。政府や電力会社の圧力に負けたと言えます。

注 文中原子炉が熱変化に弱くなっていないかという文言が出てきますが、それは多年原子炉を運転すると中性子の照射によって炉体の鋼板の強度が次第に下がり(⇒鋼の靭性が失われてガラス化する)、150℃などの高温の運転温度では強度的に持つものの、事故等で急激に冷やされた際に炉体が破裂する惧れがあるという意味で、重要です。高温の鋼板の温度を下げていき靭性が失われる温度を「脆性遷移温度」と呼び、使用時間と共に上昇し遂に使用限界に達します。

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社説 40年超原発 なし崩し的運転延長困る
                            新潟日報 2020/12/21
 運転延長ルールはあくまで「特例」という位置付けだ。古い原発の稼働がなし崩し的に進められることのないよう、不断のチェックが欠かせない。
 東京電力福島第1原発事故後に、原発の稼働に関し「原則40年、最長で延長20年」のルールができて以降、初めての40年を超えた運転に向け、手続きが進んでいる。
 関西電力高浜原発1、2号機を巡り、立地する福井県の高浜町議会が再稼働への同意を正式に決めた。同じく40年を超えた関電美浜原発3号機についても、同県の美浜町議会が再稼働に同意した。
 議会や地元経済界からは、町の経済のために再稼働が必要などとする声が上がったという。
 今後は高浜、美浜の両町長、福井県議会、福井県知事の同意を得られるかが焦点になるが、関電は、美浜3号機を来年1月にも、高浜1、2号機を来年前半にも再稼働させる工程を示している。
 老朽原発を巡っては、2011年の福島第1原発事故を踏まえ、民主党(当時)政権下の12年、原子炉等規制法が改正された。原発の運転を原則40年に制限し、法的に運転期間の定めがなかった原発に寿命を設けた
 原子炉圧力容器の経年劣化などを懸念してのことだ。
 規制当局が認めれば1回に限り20年延長できるとしたものの、あくまで「例外」とした。
 当時の細野豪志原発事故担当相(環境相)は「基本的に40年以上は稼働できない」と説明し、延長を認めるのは例外中の例外と強調していたほどだ。
 今回、町議会が相次いで同意したことで、古くなった原発に退場を促すはずの法改正が有名無実化しているように見える。
 関電にとっても、再稼働は発電コストを抑えられる経営上の利点がある。
 だが地元や電力会社の経済的なメリットで運転延長することには違和感がある。
 2町の住民からは事故時の避難体制への不安の声も上がった。外部有識者でつくる福井県原子力安全専門委員会の会合では「原子炉が熱変化に弱くなっていないか」と懸念の声が出た。
 政府は、50年まで国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げる。実現に向け、菅義偉首相は国会代表質問で原発など原子力を含むあらゆる選択肢を追求すると表明している。
 こうした状況を盾に、原発新増設が見込めない中で老朽原発の再稼働が無原則に広がるようでは困る。
 福井県の杉本達治知事は、40年超原発再稼働の同意の前提として、関電に使用済み核燃料の県外搬出先の年内提示を強く求めている。
 電気事業連合会は先ごろ、青森県むつ市の中間貯蔵施設の共同利用検討に着手したが、40年超原発再稼働で関電を支援する思惑があるとされる。
 老朽原発の活用ありきとなっていないか。原点に立ち返り、40年ルールの意義や運転延長の妥当性を確認すべきだ。