2023年12月9日土曜日

岸田政権「原発3倍」にあっさり賛同の無責任 COP28 +

 UAEのドバイで開かれCOP28(国連気候変動会議)に合わせ、世界全体の「原発の発電能力」を2050年までに3倍に増やすとの宣言が2日、発表されました。日本のほか、米、カナダ、英、仏、韓国、ウクライナなど22カ国が名を連ねました。
 同会議では「再生可能エネルギー」を30年までに3倍に引き上げる目標も掲げられ、こちらは日本を含む118カ国が賛同しています。「原発3倍」の22カ国が如何に少数であるかが分かります。
 NPO法人「原子力資料情報室」事務局長の松久保肇氏は、「日本が50年までに原発を3倍にするのは実現性に乏しく無責任です。それでも、日本政府が賛同したのは、原発推進が世界の潮流かのように思わせる意図があるのでしょう。それに原発3倍という“国際公約”を口実に原発推進を加速させる狙いもあるのだと思います。非常に危険な動きです」
と語っています。
 そもそも原発は、ウランの採掘から精製する過程、そして使用済み核燃料を10万年間安全に保管する過程での経費(=炭酸ガス発生)が莫大で、決して「脱炭素」ではありません。
 逆に発電時の熱効率が30%と低いので、冷却水による単位電力量当たりの海水温上昇量は火力(LNGなど)発電の1・5倍以上になり海水温上昇=地球温暖化を推進します。そして海水温が上昇すると、海水中の炭酸ガス溶解度が小さくなるので、その分の膨大な炭酸ガスが空中に放散され二重の意味で地球を温暖化させます
 原発の計画から稼働までの期間も最短で10年間、最新式の原発では20年近く掛かるので、2030年までに云々という課題に対しては間拍子に合いません。炭酸ガス排出量を最低限に抑えるには「再生可能エネ」しかありません。
 日刊ゲンダイとFoE Japanの記事を紹介します。

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岸田政権「原発3倍」にあっさり賛同の無責任…福島は復興道半ば、賛否拮抗をガン無視
                          日刊ゲンダイ 2023/12/04
「原発3倍」に賛同──。UAEのドバイで開かれているCOP28(国連気候変動会議)に合わせ、世界全体の「原発の発電能力」を2050年までに3倍に増やすとの宣言が2日、発表され、日本も賛同してしまった。他に、米、カナダ、英、仏、韓国、ウクライナなど22カ国が名を連ねた
 COP28では世界の「再生可能エネルギー」を30年までに3倍に引き上げる目標も掲げられ、こちらは日本を含む118カ国が賛同している。それと比べれば、「原発3倍」の22カ国は少数だ。ここに日本が加わった格好だ。
 NPO法人「原子力資料情報室」事務局長の松久保肇氏が言う。
「賛同した日本以外の21カ国は、もともと原発を推進している国で目新しさはありません。日本は福島原発事故からの復興は道半ば。廃炉のメドも立たず、政府が発令した『原子力緊急事態宣言』もいまだ解除されていません。また、世論調査では原発の賛否は拮抗しており、原発政策をどうするのかは議論の途上と言えます。そういう国内事情がありながら、どうして『原発3倍』にあっさり賛同してしまったのか。あまりにも無責任です

 岸田政権は21年10月に閣議決定した「エネルギー基本計画」で「原発への依存度を可能な限り低減する」と明記。ところが、今年5月成立のGX脱炭素電源法で既存原発の60年超運転を可能にし、次世代原発のリプレース(建て替え)も進める方針を示した。“原発回帰”である。

狙いは世論誘導と推進加速
「原発3倍宣言は、各国が原発を3倍にするという意味ではありませんが、日本が50年までに3倍にするのは実現性に乏しく、その点でも無責任です。それでも、日本政府が賛同したのは、まるで原発推進が世界の潮流かのように思わせる意図があるのでしょう。それに原発3倍という“国際公約”を口実に原発推進を加速させる狙いもあるのだと思います。非常に危険な動きです」(松久保肇氏)

 西村経産相は3日のNHK日曜討論で「原発については安全性が確認されたものは、地域の理解を得ながら再稼働を進めたい」と意欲を示した。
 メディアは原発3倍宣言に賛同した原発推進国は、世界でも22カ国と“少数”なのを強調すべきだ。岸田政権の誘導に引っかかってはいけない。


「原発による発電容量を世界で3倍」!?に抗議の声続々  緊急共同プレスリリース「原発は気候変動対策にならない」
                        NGO  FoE Japan  2023.12.2
2023年11月30日にアラブ首長国連邦で第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が開幕した。3日目の今日、アメリカ合衆国政府がリードして、2050年までに原発による発電容量を世界で3倍にするという誓約を発表し、日本を含む22カ国が賛同を示した
原発は不安定で危険な上に経済合理性にも欠ける電源であり、ウラン採掘から運転、廃炉、核燃料の処分に至るまで環境を汚染し、人権を侵害する。気候変動対策にすべきではない。
原発の発電容量を3倍にするという誓約にはまったく現実可能性がない。世界のリーダーたちは、近年の原子力産業の失敗に学んでいない。たとえば日本を代表する企業であった東芝は、アメリカでの原子力事業の失敗で、経営破たん寸前まで追い込まれた。つい最近には、アメリカのニュースケール社が小型モジュール炉(SMR)事業中止を発表した。多額の補助金を注入してなお、ニュースケール社のSMRに価格競争力がないことは歴然としていたからである。公的資金を将来性がない原子力に使うことは、原子力産業を潤すだけである。
気候危機に立ち向かうためには、一刻も早い化石燃料の廃止が必要である。原発をはじめとした「誤った気候変動対策」はむしろ、真の対策を遅らせ、既存の不正義の構造を強化するだけである。

発表を受け、世界各国の市民社会団体や活動家は以下のコメントを発表した。

FoE Japan 事務局長 満田夏花:
「世界はすでに幾度も原発による危機を目撃している。原発はコストが高いだけでなく、事故やトラブル続きの不安定で危険な電源である。日本では、2011年の福島原発事故後、すでに13年近く経過しているが、原発事故の収束からはほど遠く、人々は今もその影響に苦しんでいる。高レベル放射性廃棄物の処分場所は決まっていない。原発を稼働させ続けることは将来世代に大きなつけを残す。」

米国Nuclear Information and Resource Service 事務局長 Tim Judson:
「COP 28での核拡大の推進は、気候変動の失敗に対する計画にすぎない。もしこれがバイデン政権が世界に提示する案だとすれば、他の国々は耳を傾けるべきではない。気候変動対策として原子力エネルギーに頼るということは、パリ協定全体の達成を危うくし、地球温暖化を1.5度どころか2度未満に抑える可能性を阻止する可能性がある。バイデン政権はこのことを知っている。なぜなら原子力発電所の建設は米国でも世界でもすでに完全な失敗であることが証明されているからだ。米国で提案されている原子炉の半数以上が過去60年間に中止され、完成した原子炉の平均建設期間は10年を超え、建設コストは業界の歴史全体を通じて確実に上昇しており、ほぼすべての原発事業がコストが想定より増加し建設が遅延している。私たちは何が実際に解決策として機能するかわかっている。風力と太陽光は世界で最も安価で急速に成長しているエネルギー源であり、クリーン エネルギーへの移行に向けた他の再生可能で効率的な解決策も同じ道を進んでいる。もし米国政府がリーダーになりたいのであれば、まず失敗したテクノファンタジーや原子力発電や二酸化炭素回収などの誤った解決策の推進をやめ、その力と影響力を利用して再生可能エネルギーへの公正かつ公平な移行を進め、気候資金と損失と損害を公平に分担すべきだ。」 

FoEインターナショナル Lise Masson:
「2023年になっても、日本のような国々が気候危機の解決策として原子力を推進していることに理解に苦しむ。原子力産業は破壊的な産業であることが何度も証明されており、公正かつ公平なエネルギーにおいて果たすべき役割はない。気候危機に対処するために必要な適切な行動を遅らせ、注意をそらすだけの誤った解決策に無駄に費やす時間はない。」

原子力資料情報室事務局長 松久保肇:
原発の導入には計画から20年を要し、今直面している気候変動対策には何の役にも立たない。それどころか、原発の導入までの間、既存の電源の延命することにも繋がり、むしろ脱炭素を遅らせる。また原発のコストは再エネを大きく上回る。しかも、原発の気候に関連した停止回数は過去30年で約8倍に増加した。原発は気候変動に大きな脆弱性を抱えている。安価で導入速度も速い再エネではなくコスト高で導入に時間のかかる原発を国家と業界が強引にすすめるのは、脱炭素のためにも消費者のためにもならない。」 

ロシア・Ecodefenece 共同議長 ライトライブリッド賞受賞者 Vladimir Slivyak:
「原発は気候変動に対しても戦争に対しても脆弱である。洪水やハリケーン、干魃、熱波や嵐など、拡大する気候変動の影響が、原発の安全性に対しさらに大きなリスクをもたらしている。ウクライナのザポリージャ原発の例が示す通り、戦争が軍事攻撃のリスクを高めている。今日の原発は不安定で、放射能災害のリスクが高まっている。また全ての民生利用の原発から「汚い爆弾」を作るのに必要な材料を生み出すことができ、核拡散のリスクもある。そういったリスクは再エネにはほとんどない。」

気候ネットワーク理事長・弁護士 浅岡美恵:
「日本のエネルギー政策は、今も化石燃料に偏重しており、石炭ですらまだ完全廃止を打ち出していない。化石燃料のフェーズアウトなしに、原発を増加させたとしても全く解決策にはならない。過去、日本は原発を増やし続けてきたが、その間、温室効果ガスが減ったことはなかった。むしろ震災後の省エネと再エネの増加により温室効果ガスの減少がすすんだ。その間原発はほとんど稼働していない。現在も、裁判や安全対策の強化などで、原発再稼働は進んでおらず国内における原発の発電量の増加も不透明である。原発のコストが上がり再エネのコストが低下している中、原発の発電量を2050年までに世界で3倍にするというのは、全く現実的ではない。」

Australian Conservation Foundation 原子力政策アナリスト Dave Sweeney:
「原発推進派は、気候変動対策として原発を推進するため、このCOPに多大な資金と労力をつぎ込んできた。原発が気候変動対策だという主張に私たちは反対する。既存の原子力技術は高コストでリスクが高く、大々的に推進されている小型モジュール型原子炉(SMR)を含む新型または「次世代」原子力は実証されておらず、世界中のどこにおいても商業利用されていない。私たちに必要なのは、原子力による目眩しではなく、効果的な気候変動対策だ。ウラン採掘、核実験、廃棄物投棄の影響を受けたオーストラリアの地域社会や先住民族の経験は、原子力産業のレトリックと現実との間にギャップがあることを示している。私たちが共有するエネルギーの未来は、産業界による裏付けや政治家の約束に基づいて構築することはできない。再生可能エネルギーは実績があり、普及しており、より安全で、安価で、はるかに導入可能だ。私たちの低炭素エネルギーの未来は放射性ではなく再生可能だ」 

マーシャル諸島共和国気候特使 Kathy Jetnil-Kijine:
「私は気候変動に対して最も脆弱な国の出身だが、マーシャル人として原子力エネルギーの破壊的で不安定な性質を知っているため、原子力エネルギーを気候変動の解決策として支持しない。今日に至るまで、米国の核兵器実験計画が私たちの国にもたらした恐ろしい結果を今でも感じている。原子力が気候変動の解決策として宣伝されるのを見るのは恐ろしいことだ。解決策はすでにある。風力や太陽光など、安価で信頼性が高く安全な再生可能エネルギーは実証されており、拡大している。原子力に気を取られる訳には行かない。再生可能エネルギーに焦点を当てるべきだ。」 

350Pacific マネージングディレクター Joseph Sikulu:
「原子力は、気候を破壊する化石燃料と同様にアジア太平洋地域に有害な遺産を残している。これは気候変動に対する解決策ではないし、気候変動対策としてグリーンウォッシュすべきではない。原子力は人々にとって安全ではなく、安くもない。最悪の気候危機に対処するには、化石燃料を早急に段階的に廃止し、安全でクリーンで公平な再生可能エネルギーなどの真の気候解決策に移行する必要がある。」

350.org ジャパン・キャンペーナー 伊与田昌慶:
「パリ協定の気候目標に向けて必要な脱炭素化を加速させるために、危険な原子力を利用する余地はありません。日本では、2011年に東京電力福島第一原子力発電所事故が発生しましたが、いまだにその原因は特定されておらず、多くの人々が苦しんでいます。日本は、気候危機を利用して原子力への依存を正当化する一方で、炭素集約型産業の化石燃料ビジネスを延命させようとしています。それは危険な目くらまし以外の何ものでもありません。

2000年代以降、原子力産業のロビイストたちが主導してきた「原子力ルネサンス」の試みは、決して成功しませんでした。私たちには、気候危機に対する、より安価で、より安全で、より民主的で、より迅速な解決策がすでにあるのです。つまり、再生可能エネルギーと省エネルギーです」