福島原発のデブリは、原子炉格納容器が損壊しているため、水で満たさない「気中工法」での作業となります。大阪大の研究チームが、デブリを削り取る過程で粘性のあるゲル状充填剤で覆うことで、粉じん(ダスト)の飛散を大幅に抑制することに成功しました。
現段階の充填剤は材料に有機物を使用しており、保管時などに水素が発生します。有機物を使わずに同様の性質を持たせることが実用化に向けた課題になります。
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第一原発 デブリ飛散ゲルで抑制 大阪大研究
福島民報 2019/09/13
大阪大の研究チームは十二日、東京電力福島第一原発の溶融核燃料(デブリ)を取り出す際、放射性物質の飛散防止に効果のあるゲル状充填(じゅうてん)剤を開発したと発表した。模擬デブリに塗って切削する試験の結果、ゲル層で粉じん(ダスト)の飛散の大幅な抑制に成功した。硬いデブリの切削では、原子炉格納容器内でいかに放射性ダストを封じ込めるかが最重要課題の一つとなっている。研究成果は廃炉作業の安全確保につながると期待される。
研究チームは富山市で開かれた日本原子力学会の秋の大会で発表した。東電福島第一原発のデブリ取り出しは原子炉格納容器が損壊しているため、水で満たさない「気中工法」での作業となる。デブリを削り取る過程で、水を張った状態と比べてダストが飛散する可能性が高いため、粘性のあるゲル状充填剤で覆う手法を研究した。
充填剤はゼリー状の粘土鉱物に、耐水性を高める有機物を加えて作製した。実際の作業現場を想定し、充填剤に強い放射線を浴びせて耐性を調べ、形状や粘度が保たれることを確認した。
模擬デブリと、粉状の模擬堆積物を充填剤で覆い、ドリルで切削する試験を実施した。使わない場合、発生したダストが周辺に拡散した。しかし、使用すると、多くのダストがゲル層にとどまり、飛散を抑制できた。
ただ、現段階の充填剤は材料に有機物を使用しており、保管時などに水素が発生する。有機物を使わずに同様の性質を持たせることが実用化に向けた課題になる。放射線量が極めて高い中でデブリに塗る手法の開発、使用後に放射性廃棄物となった充填剤の回収方法の確立なども必要だ。
研究チームの牟田浩明大阪大大学院工学研究科准教授は「ゲルはダストの飛散を強力に抑えられる。今後は課題解決に努めたい」と話した。
福島第一原発では炉心溶融した1~3号機の格納容器内に合わせて約八百八十トンのデブリがあると推定されている。今年二月に2号機で実施されたデブリとみられる堆積物への接触調査で、小石状の堆積物は動かせた一方、硬いものは動かせないと判明していた。