原田義昭・前環境相は10日の閣議後会見で、福島第一原発の汚染処理水について「思い切って放出して、希釈するほかにあまり選択肢はない」との認識を示したことに、関係者から疑問や反発の声が上がっています。
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原田環境相「放水」発言 反発、疑問の声相次ぐ
福島民報 2019/09/11
原田義昭環境相が東京電力福島第一原発の処理水について海洋放出しかないと発言したことを巡り、県内の漁業関係者や識者から反発や疑問の声が上がった。
県漁連は海域と魚種を絞った試験操業を行い、放射性物質濃度を検査した上で出荷しているが、根強い風評被害に苦しむ。野崎哲会長は原田環境相は福島県の現状を理解していないとして「とんでもない発言だ」と語気を強めた。さらに「県漁連は海洋放出に反対の姿勢だ。個人的な考えなのかもしれないが、国としてしっかり議論した上で発言をしてもらいたい」と苦言を呈した。
県原子力安全対策課の担当者は処分方法を検討している政府小委員会に「福島の漁業者の声を踏まえ、風評などの社会的影響を含め議論を尽くして判断してほしい」と求めた。
政府小委の委員も務める東京大大学院の関谷直也准教授(災害情報論)は「処理水をため続けることになった経緯に全く向き合っていない乱暴な発言だ」と憤る。「科学的に安全というだけでは処分方法は決められないので社会的、経済的影響を議論している。その最中になぜ閣僚からこんな言葉が出るのか」と批判した。
処理水には多核種除去設備(ALPS)による浄化処理後も、除去しきれない放射性物質トリチウムが含まれている。昨年八月にはトリチウム以外の放射性物質も残留し、一部は排水の法令基準値を上回っていたことが判明した。
残留問題の発覚直後に富岡町と郡山市、東京都で開かれたトリチウム水の処分方法を巡る公聴会では、意見表明者から海洋放出に対する反発が相次ぎ、小委での議論は長期化した。
第1原発・処理水「放出しかない」 原田環境相が扱い巡り発言
福島民友 2019/9/11
東京電力福島第1原発の汚染水を浄化後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水の扱いを巡り、原田義昭環境相は10日の閣議後会見で「所管は外れるが、思い切って放出して、希釈するほかにあまり選択肢はない。それしか方法がないなというのが私の印象だ」との認識を示した。11日の内閣改造を前に、就任から約1年間の仕事を振り返った感想として答えた。
原田氏は、処理水の処分方法に関し「政府全体でこれから慎重な議論がなされる」とした上で、第1原発構内に林立する処理水保管用の地上タンクを視察したことや原子力規制委員会が海洋放出案を支持している点を理由に挙げ「風評被害や漁業者の皆さんの苦労については、やはり国を挙げて補完することも極めて大切なことだ」と強調した。
東電は、2022年夏ごろに保管タンクが満杯になる見通しを示している。韓国政府が海洋放出計画の有無に懸念を表明したことに対し、日本政府は「処分方法は未定だ」と回答した。
原田氏は、こうした背景を踏まえ「風評を含め内外に対応しなければならない。韓国にも誠意を尽くして説明する態度が何よりも大切だ」と述べた。
「個人的発言」「軽率」 漁業関係者ら批判相次ぐ
処理水の処分方法をめぐる原田環境相の発言について、海洋放出に反対する県内の漁業関係者などからは批判が相次いだ。
県漁連の野崎哲会長は「とんでもない内容だが、個人的な発言だと思う。県漁連は海洋放出を反対している立場。国としてしっかりと議論する態勢を取って発言してほしい」とコメント。底引き網漁業関係者でつくる県機船底曳網漁業組合連合会の高橋通会長は「風評問題などを含め、話し合いをしなければならない中、大臣が何の前触れも無く発言するのは間違っている。発言はあまりにも軽率」と指摘した。
今夏、9年ぶりに再開した南相馬市の北泉海水浴場で海開きイベントを主催した県サーフィン連盟の室原真二理事長は「福島の海は怖いと言い、(海に)入らないサーファーや海水浴客もいる。不要な発言で、せっかく船出した南相馬の海に水を差すようなことはやめてほしい」と語った。