東電は、柏崎市長が6、7号機の再稼働を認める条件として、「柏崎刈羽原発1~5号機のうちの1基を廃炉にすること」としたことに対して、「6、7号機の再稼働後5年以内に1基以上の廃炉も想定する」と回答しました。「再稼働しなければ検討できない」というもので、廃炉を約束したものではありません。
また6、7号機の再稼働に向けての安全対策費が膨れ上がり、従来想定していた6800億円の2倍近い1兆1690億円になる見通しも明らかになりました。従来のベースでは原発1基の建設費は5000億円前後なので、原発2基を新設する費用に相当します。
原発の発電コストが火力よりも高いことは既に知られていますが、そんな追加費用を掛ければなおさらペイする筈がありません。総括原価方式によってそのまま電気料に上乗せできるからとか、会計処理上どうしても再稼働させる必要があるからというのは本末転倒の考え方です。
信濃毎日新聞が、「柏崎刈羽原発 このまま頼り続けるのか」とする社説を出しました
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社説 柏崎刈羽原発 このまま頼り続けるのか
信濃毎日新聞 2019年8月30日
先の見えない原発に頼り続ける東京電力の姿勢が改めて浮かび上がっている。
柏崎刈羽原発の廃炉について、東電が出した地元新潟県柏崎市への回答である。「6、7号機の再稼働後5年以内に、1基以上の廃炉も想定する」とした。
同市の桜井雅浩市長は、6、7号機の再稼働を認める条件として、1〜5号機いずれかの廃炉を盛り込んだ計画を求めていた。
廃炉の確約はせず、基数や号機の具体的な特定も避けている。提示されていた再稼働条件を、「再稼働しなければ検討できない」と突き返したような内容だ。
市長は、東電の回答が「平均点までいっていない」と指摘。再稼働について「ゴーサインの判断はできない」としている。
同市と刈羽村にまたがる世界最大規模の原発である。東日本大震災で事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型の原発7基が、海岸沿いに立ち並ぶ。
同市が廃炉を求めている理由は、集中して立つ複数の原発で同時に事故が起きた場合の被害拡大リスクへの不安だ。福島事故では複数基で水素爆発が発生し、収束を困難にさせた。
福島事故の賠償や廃炉にかかる費用は22兆円とされ、うち東電の負担は16兆円に上る見通し。事故後に事実上国有化された東電が2017年にまとめた経営再建計画では、柏崎刈羽の再稼働に伴う収入を収益の柱としている。
再稼働の可能性が具体化しているのは、原子力規制委員会の審査に合格した6、7号機だけ。1〜5号機は再稼働が困難なのに廃炉を渋る背景には、経営のため温存する狙いがあるとみられる。
経営再建を優先し、安全を軽視していると受け取られても仕方ない。このような姿勢を続けては、6、7号機の再稼働に住民の理解は得られないのではないか。
そもそも、再稼働が再建計画通りに経営に貢献するとは考えにくい状況が生まれている。
再稼働に必要な安全対策費が膨れ上がり、従来想定の6800億円の2倍近い1兆1690億円かかる見通しになったとの東電の試算が今年、明らかになった。
テロ対策施設など福島事故を踏まえた新規制基準に対応するためのコストだ。全国の原発でも同様に増えている。今後、追加工事を迫られる可能性もある。
見通しのないまま巨費を投じ続けるわけにはいかない。地元はもちろん、電気料金を負担する国民が納得できる経営計画が要る。