田中和徳・新復興相が、閣議後の会見で、2017年4月以降も国家公務員宿舎に住み続けている自主避難者に対して、家賃2倍相当の損害金を請求し、明け渡しを求めて提訴まで行う方針を打ち出しことについて問われ、「復興庁は担当ではない。福島県の問題である」と述べました。
しかしこの弁明は大嘘で、実際は国家公務員宿舎からの“強制退去”は政府が決めたことであり、財務省が福島県に追い出しやすい制度を作れと圧力をかけていたことが明らかされました。
テレビユー福島(TBS系)『Nスタふくしま』は、県に情報公開を請求した結果、国の関与があったとして、「3年前(16年)、県が国と交渉した際、無償提供が終わった後の対応について、国が期限を設定するよう求めていた」と報じました。
福島県は強制退去の期限を決めることに難色を示していたのですが、財務省は「退去の説得をしやすい」などの理由から期限を決めるように県に求めて、最終的に無償提供打ち切りの2年後、つまり今年3月末までの退去期限が設定されたのでした。
問題の根源は、国が年間被曝限度を国際基準「1ミリシーベルト」の20倍、「20ミリシーベルト(⇒ 放射線管理区域の被爆量の4倍)」に引き上げたことにあります。
2018年10月の国連人権理事会は、避難解除の基準値「20ミリシーベルト」について「1ミリシーベルト」に引き下げ帰還政策を見合わせるよう要請し、住宅無償提供などの公的支援打切りは自主避難者に対し帰還を強制する圧力になっていると指摘しました。
こうした「異常な状態」を放置したままでいるのが日本の現状で、それをベースに自主避難者に対して冷酷な仕打ちをしているのが安倍政権です。
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暴力団癒着の田中復興相が原発被災者の支援打ち切りで「担当外 福島県の責任」と大嘘! 裏では政府が県に打ち切り指示
LITERA 2019年9月22日
トンデモ大臣を揃えて国民を唖然とさせた安倍首相の内閣改造だが、さっそく新大臣からひどい発言が飛び出した。暴力団との密接交際も発覚したあの田中和徳復興相が、閣議後会見で、東京電力福島第一原発事故の自主避難者について、「復興庁は担当ではない」と発言したのだ。
復興庁は自主避難を含む原発事故避難者の生活を守る「子ども・被災者支援法」を所管し、東日本大震災の被災者支援に毎年約100億円の予算がつけられている。それを「担当外」とは、明らかな職務放棄、無責任にもほどがあるだろう。
しかし、これは田中復興相個人の問題ではない。むしろ、田中復興相は安倍政権が一貫してとってきた被災者切り捨て、責任逃れの方針を忠実に守ったに過ぎない。
田中復興相の発言は、原発事故後、自主避難者に無償提供されていた国家公務員宿舎の退去問題について聞かれた際のものだった。国と福島県は2017年3月末に、自主避難者への家賃補助や住宅無償提供を打ち切っていたが、今回、その後も国家公務員宿舎に住み続けている自主避難者に対して、家賃2倍相当の損害金請求、そして明け渡しを求めて提訴まで行う方針を打ち出した。
原発事故の避難者を“違法占拠者”扱いするこの暴挙に、当然、避難者団体や地元メディアからは厳しい批判の声が上がった。
ところが、安倍政権はこうした対応について一貫して「福島県が決めたこと」と県に責任転嫁をして、逃げ続けているのだ。たとえば、田中復興相の前任者である渡辺博道前復興相も7月16日の会見で「県の判断を尊重する」と発言、国家公務員住宅を所管する財務省も「県の判断を尊重し、県と連携して支援する」などとコメントしていた。
そして、今回、田中復興相もこの問題について聞かれ、やはり責任転嫁のために、「担当ではない役所があんまり明確に申し上げることは差し控えたい」とくだんの無責任発言をした後、「復興庁は財政、人材面で福島県の活動を支援している。福島県で責任をもって対応することになっている」などと述べたというわけだ。
しかし、これらの弁明は全て、大嘘である。実際には、国家公務員宿舎からの“追い出し”は政府が決めたことであり、財務省が福島県に追い出しやすい制度を作れ、と圧力をかけていたことまでが明らかになっている。
これを報じたのは原発事故の地元・テレビユー福島(TBS系)『Nスタふくしま』。同番組では、自主避難者への国家公務員住宅提供について、県に情報公開を請求、その結果として国の関与があったとしてこう報じた。
「国家公務員住宅に住む自主避難者が退去を求められている問題です。3年前、県が国と交渉した際、無償提供が終わった後の対応について、国が期限を設定するよう求めていたことがわかりました」
『Nスタふくしま』が報じたのは、2017年3月末、自主避難者への住宅無償提供を打ち切った際、福島県が一部経過措置の期限を2年に限定した問題だ。これは、2年後はどんな事情があろうと、宿舎を追い出し支援を打ち切るというものであり、それが現在の損害金請求や訴訟という強硬姿勢につながっている。
ところが、同番組が入手した文書によると、この経過措置を決める話し合いが2016年に国と県との間で行われ、その際、県は期限を決めることに難色を示していた。にもかかわらず、財務省が「退去の説得をしやすい」などの理由から期限を決めるように県に求めていたのだという。その結果、無償提供打ち切りの2年後、つまり今年3月末までの退去期限が設定されたのである。
国連でも、安倍政権の原発事故被災者の強制帰還と支援打ち切りを問題視
財務省がここまで事細かく“追い出し”の制度に口出ししていたのだから、そもそもの自主避難者への支援打ち切りという大方針、そして今行われようとしている国家公務員住宅に住み続ける自主避難者への訴訟などの強硬姿勢も、国が主導したと考えるのが妥当だろう。
実際、打ち切りが決まった2017年4月、当時の復興相だった今村雅弘は打ち切りについて、「自己責任」「裁判でも何でもやればいい」と言い放ち、追及したフリージャーナリストに「うるさい!」「(発言を)撤回しなさい! 出て行きなさい!」と激昂、そのまま怒鳴りながら退席するという醜態を演じて、問題になった(ちなみに今村氏はそのすぐ後、「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」と差別的暴言を吐、復興相を辞任している。
しかも、支援打ち切りは自主避難者に対してだけではない。同時期に、原発近くの8つの地区に出ていた避難指示を次々解除、そのために年間被曝限度を国際基準「1ミリシーベルト」の20倍、「20ミリシーベルト」にまで引き上げた。ようするに、支援を打ち切るために、被災者に健康被害のリスクを背負わせてまで強制帰還させる政策を打ち出したのだ。
これらの政策については、国連でも問題視されている。強制帰還政策については、2018年10月の国連人権理事会で、避難解除の基準値「20ミリシーベルト」について「1ミリシーベルト」に引き下げ帰還政策を見合わせるよう要請され、また住宅無償提供などの公的支援打切りの方向性についても自主避難者に対し帰還を強制する圧力になっていると指摘された。
だが、国内ではどうか。国の原発政策が引き起こした事故で住まいを追われた人たちの生命や生活をさらに危機に晒すようなとんでもない棄民政策が進行しているというのに、批判の声は全く聞こえてこない。暴力団の密接交際者である人物が復興大臣に就任して「自主避難者は担当外だ」などと職務放棄発言をしても、責任を問う動きは全くない。
そして安倍政権に乗せられて、震災や原発事故なんてなかったかのように、ラグビーW杯だ、オリンピックだと大騒ぎを繰り広げている。安倍政権の7年間で、日本は弱者のことなんて誰も見向きもしない、とてつもなく残酷な国になってしまったようだ。(伊勢崎馨)