柏崎市の桜井雅浩市長は4日、東電の柏崎刈羽原発1~5号機の廃炉計画について大筋で了承する方針を示しました。その背景には「6、7号機の再稼働後5年以内」「1基以上」と一定のめどが示されたことで「廃炉」の言質を取ったと判断したことがあります。
しかし、東電は回答の中で「6、7号機の再稼働の実現」や「十分な規模の非化石電源の確保が見通せる状況」になることを廃炉検討の前提としていて、しかも廃炉を確約したものではありません。
反対派の住民は「市長が当初求めた条件から著しく後退している」と問題視し、東電が挙げている前提条件について、「これでは、どうなったら廃炉にするのか意味が理解できない」と述べました。
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柏崎市、「廃炉」の言質得たと判断 東電廃炉計画を大筋了承へ
新潟日報 2019/09/05
新潟県柏崎市の桜井雅浩市長が4日、東京電力柏崎刈羽原発1~5号機の廃炉計画を巡り、東電の回答を大筋で了承する方針を示した背景には、「6、7号機の再稼働後5年以内」「1基以上」と一定のめどが示されたことで「廃炉」の言質を取ったと判断したことがあるとみられる。現状打破を願う経済界などの期待に応えるためにも、追加の条件の検討に入ることを優先した形だ。
桜井市長は2016年の市長選で、原発推進、反対両派から出馬要請を受けて初当選した。17年6月に6、7号機の再稼働の条件として1~5号機の廃炉計画の策定を東電に求める意向を表明。以来、「6、7号機は再稼働の価値を認め、条件付きで容認する」とのスタンスを貫いてきた。
再稼働の「価値」としては、原発が動くかどうか分からないといった市内経済界などに漂う閉塞(へいそく)感の打破や、東電の経営改善による福島第1原発事故の被害者救済、電力の安定供給を挙げる。
「条件」とは7基が集中立地するリスクを減らすため、1~5号機のいずれかを廃炉にすることだ。
市長は4日の会見でも、一部の再稼働も認めない反対派とは「立場が違う」と容認の姿勢を強調した。
東電は回答の中で廃炉を確約せず、対象号機も明示しなかった。何より6、7号機の再稼働実現を廃炉検討の前提とした。反対派は「再稼働後に廃炉を検討するのは後出しだ」などと主張する。反対派は8月27日、市長に対する申し入れで「市長が当初求めた条件から著しく後退している」と問題視した。
桜井市長は、回答の受け入れを表明した4日の会見で「東電が条件を付けたのは上品ではない」と苦言を呈しつつ、基数と期限が示されたとして「東電が今の段階で考え得るベスト」と改めて回答内容を評価してみせた。
当面は何を追加の条件とするかが焦点となる。市長は「市民の安全安心の向上、経済面を含めた豊かさにつながるもの」を基本に据え、地元経済への貢献度を判断するデータを東電に示すよう求めている。5日に開会する市議会などでの議論を通じ、条件の内容を固めていく方針だ。
市長判断、住民から疑問と期待の声 柏崎市、廃炉計画を大筋了承へ
新潟日報 2019/09/05
東京電力柏崎刈羽原発1~5号機の廃炉計画を巡り、新潟県柏崎市の桜井雅浩市長が東電の回答を大筋で了承した4日、同原発が立地する地域の住民からは「集中立地の解消につながらない」と市長の判断を疑問視する声があった一方、「地域活性化に向けた方向性が示され、安心した」との声も聞かれた。
柏崎刈羽原発の設楽親所長は4日夜、「柏崎刈羽原発の透明性を確保する地域の会」の会合に出席し、「1~5号機のうち1基以上について廃炉も想定」などとする市長への回答内容を説明した。
原発の再稼働に反対する立場の宮崎孝司委員が発言し、「十分な規模の非化石電源の確保が見通せる状況」といった東電の検討条件を挙げ、「これでは、どうなったら廃炉にするのか意味が理解できない」と疑問を投げかけた。
会合後、反対の立場の竹内英子委員は「計画は廃炉を見通せる内容に全くなっていない。廃炉はできないと感じる。集中立地の解消につながらず、桜井市長は受け取りを断るべきだ」と述べた。
これに対し、再稼働を容認する立場の千原健二委員は「新エネルギーの推進と並行して原発を活用する方向に進んでおり、桜井市長の判断を歓迎する。今後は、地元のどのような業種が廃炉ビジネスに参画できるのか、方向性を示してほしい」と期待した。