経産省がまとめた「エネルギー基本計画」の改定案で、再生可能エネルギーの比率を3年前の22~24%から36~38%に引き上げられた一方で、原発の比率は2015年の改定以来の20~22%に据え置かれました。
これだと30年度に27基程度の原発を高い稼働率で動かすということになり、どう考えても非現実的です。そもそも30年時点での発電コストは、経産省の試算でも最も安いのは事業用の太陽光発電で「8円台前半~11円台後半」であるのに対して、原発コストは「11円台後半以上」と最も高く勝負になりません(従来は経産省は原発の発電コストを一番安くなるように設定していました)。
今後は仮に原発を「リプレース(建て替え)」するとしても、従来の建設費の倍は掛かるのでとても現実的ではありません。そもそも炭酸ガスを出さないというのも虚構(採掘から精製し使用済み後に後処理・長期間保管する過程で莫大な量を排出する)ですし、何よりも原発は熱効率が悪いので地球温暖化防止にはまったく寄与しません。
原子力ムラは原発で儲けようとする野望を早く捨てるべきです。
毎日新聞の主張を紹介します。
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社説 原発維持の基本計画 現実直視し発想の転換を
毎日新聞 2021/7/28
国のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の改定案を経済産業省がまとめた。
注目したいのは2030年度の総発電量に占める各電源の比率の見通しだ。
脱炭素化を進めるため、再生可能エネルギーは3年前の22~24%から36~38%に引き上げられた。
主力電源化には不十分との見方はあるが、「最優先の原則で最大限の導入に取り組む」との姿勢が示されたことは評価できる。
一方で大きな疑問が残るのが原発の比率だ。2015年の改定以来の20~22%を踏襲しようとしているが、非現実的だ。
この比率を達成するためには、30年度に27基程度の原発を高い稼働率で動かす必要がある。
しかし、東京電力福島第1原発の過酷事故以降、再稼働した原発は10基に過ぎない。19年度の発電量に占める原発の比率は6%にとどまる。
運転開始から40年を超える老朽原発の延命も必要となり、「原発依存度をできる限り減らす」という政府方針にも反する。
経産省が6年ぶりに試算した発電コストも直視すべきだ。
これまで、原発を推進・維持する大きな根拠は、他の電源より安価なことだった。
しかし、今回の試算では、30年時点で発電コストが最も安いのは事業用の太陽光発電となった。
事故前に1キロワット時当たり5・9円と試算されていた原発コストは15年に10・3円以上と上昇した。それが今回、「11円台後半以上」となり、事業用太陽光の「8円台前半~11円台後半」を上回った。
これには事故処理費や安全対策費の増加が影響している。今後、処理費などがさらに膨らむ可能性は高い。
一方、太陽光や風力など再生エネは技術開発や普及が進み、コストは下がり続けている。
こうした現実から目を背け、原発にこだわり続けている限り、袋小路からは抜け出せない。
菅義偉政権が「温室効果ガス排出50年実質ゼロ」を打ち出した以上、それを見据えたエネルギー戦略を示す必要がある。
原発コストの優位性が崩れた今こそ、思い切って発想を転換すべきだ。