2021年7月31日土曜日

帰還困難訴訟 福島地裁郡山支部 国と東電の責任認める

 全域が帰還困難区域となった福島県浪江町津島地区の住民640人が、国と東電に放射線量を事故前の水準に戻す原状回復と損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁郡山支部は30日、国と東電に対し、原告634人に計約10億円1人当たり約120万~150万円支払うよう命じました。判決は「国は原発の敷地を超える津波が到来する危険性があることを予見でき、福島第一原発の津波に対する脆弱性を認識できた」などとして国の責任を認めました。しかし空間線量の原状回復については、「作為義務が特定されていない」具体的な解決手段が特定されていない)として却下されました。
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帰還困難訴訟 福島地裁郡山支部 国と東電の責任認める判決
                  NHK福島 NEWS WEB 2021年7月30日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で帰還困難区域に指定されている福島県浪江町津島地区の住民が国と東京電力を訴えた裁判で、福島地方裁判所郡山支部は、国と東京電力の責任を認め、総額10億円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました
この裁判は、帰還困難区域に指定されている浪江町津島地区に住んでいた640人が、国と東京電力に対し放射線量を原発事故前の状態に戻すことなどを求め、それができない場合1人あたり3000万円を賠償することなどを求めたものです。
30日の判決で、福島地方裁判所郡山支部の佐々木健二裁判長は「国は原発の敷地を超える津波が到来する危険性があることを予見でき、福島第一原発の津波に対する脆弱性を認識できた」などとして国の責任を認め、国と東京電力に総額10億4000万円余りの賠償を命じました。
一方、原告が求めていた原状回復については、訴訟要件を満たしていないとして訴えを退けました。
福島県では、今も、浪江町や双葉町それに大熊町など原発周辺の7市町村の合わせて337平方キロメートルが立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域に指定されていて、今回の裁判は原発事故をめぐる集団訴訟の中で唯一帰還困難区域に住んでいた人だけで原告団が構成されていました。
判決のあと、原告団長の今野秀則さんは「提訴から6年かかりましたが、言い渡しは一瞬でした。原状回復が認められず非常に残念ですが、国の責任が認められたのでうれしいです」と話していました。
判決について、東京電力は「当社原子力発電所の事故により福島県民をはじめ広く社会の皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて心からおわび申し上げます。判決については、今後、内容を精査し対応を検討していきます」とコメントしています。
国の原子力規制委員会は「今回の判決は、国の主張が認められなかったものと考えており、判決の内容を精査して関係省庁と協議の上、対応方針を適切に検討していく。いずれにせよ原子力規制委員会としては、原発事故を踏まえて策定された新規制基準への適合性審査を厳格に進めていくことにより、適切な規制を行っていきたい」としています。


帰還困難区域の634人に10億円 福島地裁支部、国・東電に賠償命令
                        河北新報 2021年07月31日
 東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域に指定された福島県浪江町津島地区の住民640人が、国と東電に地区全域の空間放射線量低減と慰謝料約260億円の支払いなどを求めた集団訴訟の判決で、福島地裁郡山支部は30日、国と東電の責任を認め、634人に計約10億円の支払いを命じた。線量低減の請求は却下した。原告側は控訴する方針。
 佐々木健二裁判長は、長期避難で原告らの帰還が困難になったとした上で「東電から支払われた慰謝料額は不十分」と指摘。1人当たり約120万~150万円の支払いを命じた。原告6人については居住実態が認められないとして請求を棄却した。
 判決は2002年に公表された津波地震予測「長期評価」の信用性を認め、「敷地高を超える津波を予見できた」と判断した。建屋の脆弱(ぜいじゃく)性も認め、経済産業相が規制権限を行使しなかったのは「著しく合理性を欠く」とした。東電についても「長期評価に基づいて調査する義務を怠り、対策に着手しなかった点で非難に値する」と言及した。
 線量低減については「作為義務が特定されていない」とした。

 原告側弁護団によると、国を被告に含む同種訴訟の地裁判決は17件目で、国の責任を認めたのは9件目。原子力規制庁は「判決内容を精査し、関係省庁と協議して対応方針を検討する」、東電福島復興本社は「判決内容を精査して対応を検討する」と、それぞれコメントした。