BSN新潟放送が、新潟県独自の『検証総括委』がなぜ開かれないのかについて取り上げました。花角新潟県知事はひたすら「色のつかない」報告書を求めているようですが、「無色透明」の報告書というのは取りも直さず再稼働の安全を保証する報告書となります。
原発について3つの分野で検証した結果が「無色」になることはあり得ません。再稼働の可否に言及するなというのは、学識経験者の成果を政治的に否定しようとするもので、一体何のための検証だったのか、県側の主張に「論理矛盾」があります。
報告書に「色をつけず」県の意向を全て認めない限り会議の開催はさせないというのではとても県と共通認識に立つことなど出来ません。かつて県は原発の地盤を不安視した新潟大学の立石教授を強引に委員から外しました。総括委員会の池内委員長についても来年3月をもって外そうと考えているのは明らかです。それでは解決にはなりません。
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原発再稼働議論の前提 新潟県独自の『検証総括委』なぜ開かれないのか? 委員長と県の“深い溝”
BSN新潟放送 2022/12/26
新潟県は柏崎刈羽原発の再稼働の議論の前提として(1)安全な避難方法(2)健康と生活への影響、(3)福島の原発事故の原因の3つを独自に検証しています。
この3つの検証を総括する「検証総括委員会」というものがありますが、この委員会がおよそ2年もの間開かれていないのです。なぜ開かれないのでしょうか…
池内委員長への単独インタビューで県と池内委員長の意見の相違が浮き彫りとなってきました。
21年1月に開かれた検証総括委員会。
【花角知事】「稼働などの判断については県政を預かるものとして責任をもって判断してまいりたいと思う。(検証総括委員会には)3つの検証についての取りまとめを行ってもらいたい」
花角知事が初めて出席し実に3年ぶりに開催されました。
しかし、この日以降およそ2年間開催されていないのです。
いわゆる『3つの検証』は2016年の県知事選で米山隆一氏が公約に掲げたもので米山氏は当選後3つの委員会とそれらを総括する「検証総括委員会」を立ち上げました。
【花角知事】
2018年に当選した花角知事はこの「3つの検証」を引き継ぎさらなる検証を進めてきました。
【中島座長】「我々としては県民の目線で柏崎刈羽原発にどう反映するかという形での教訓を引き出そうと考えていた」
3つの検証のうち技術委員会は20年10月に報告書をとりまとめ…
避難検証委員会は今年9月に報告書を提出。
検証を残すのは健康と生活委員会の1つの分科会のみとなりました。
3つの検証の終わりが見えてきた中で検証総括委員会は一向に開催されません。花角知事に理由を聞くと…
【花角知事】「ずっと私どもは開催してくださいということで委員長にお願いをしています。取りまとめをお願いしているんですよね。ということでお話をしていて、そこがまだご了解いただけていないことから、開かれていないと」
県は「池内委員長と共通認識が持てていないため開くことができていない」としています。
では、その池内委員長はどう考えているのでしょうか…
【池内了委員長】「根本原因は、県の特に知事が、知事の思い通りというのか、考えている通りの運営をやっていただきたいと、総括委員会の運営をやっていただきたいという意見を強硬に言われたと
それに対して私としては、県民のための総括委員会という立場から言うとね、知事のおっしゃる通りにやるわけにはいかないと」
と池内委員長との間で意見が真っ向から対立しているのです。
池内了(いけうち・さとる)氏は宇宙物理学を専門とする名古屋大学の名誉教授で委員会の立ち上げ当初から検証総括委員会の委員長を務めています。
「3つの検証委員会をわざわざ立ち上げて進めるということはどこもやってないということでね、それならば私としてはね非常に画期的なことであると。日本の原発行政をね考える進めていく上で非常に重要なステップになるだろうということで引き受けた」
発端は21年1月に開かれた検証総括委員会でした。公開されている議事録からは池内委員長が様々な不満や意見を口にしたことが記されています。
「総括委員長として大きな不満も持っているのは、実は、最初のロードマップでは、1年おきくらいに総括委員会を開いて、各委員会から進捗状況を報告していただいて、フィードバックを受けていくと。そういうやり方が構想されていたわけですが、それが一切なかった」
さらにはこんな発言も…
【池内委員長】「再稼働の是非に関する参考意見を科学的な立場、合理的な立場から出したい」
これに対し、当時花角知事は…
【花角知事】「それは委員会の中で議論して、今議論始められたんでしょ?
委員長は自分はこういう風に考えているとおっしゃって…」
これらの発言を受けて21年6月、当時の県の防災局長が池内委員長の自宅を訪れ、意見の相違について5つの観点でとりまとめました。その一つが「タウンミーティングの開催」です。
【池内委員長】「県の態度は一方的に説明をする上から説明するだけだから、私としては双方向の意見交換を行った上で、県民の要望を報告書に反映していくということを今求めているわけです。それは決定的に違うことですね」
ただ県はあくまで「検証が終了した後の開催」を考えています。
「検証総括委員会で検証結果が取りまとめられた後、県において結果について広く情報共有し、評価を頂くことを考えている」
またもう一つが検証総括委員会が「総括する範囲」です。県は総括は3つの検証に限ると考えています。しかし、池内委員長は技術委員会が同時に行っている「柏崎刈羽原発の安全対策の確認」や「東京電力の適格性の議論」も総括したいと考えています。
「技術委員会の適格性の議論となると東電の技術的力量はどうかと、技術の側面に限られる。適格性の問題っていうことを通じて、東電という企業体のね。本質みたいなものをあぶり出したいと」
これに対し県は、「検証総括委員会の運営要綱にある任務ではない」としています。
運営要綱では検証総括委員会の任務は「総括」としていてその対象は「3つの検証」と書かれています。
一方で「総括」という2文字の意味とは何なのか。
県は…「矛盾等がないかを各委員に確認していただき、3つの検証のとりまとめをしていただくこととしています。委員会の任務を引き受けていただいた委員長に、委員会の任務・役割をご理解頂いたうえで、委員長としての職責を果たして頂きたいと考えています」
県は池内委員長との考え方の5つの相違について資料を作成し検証総括委の各委員にメールで送っていたことが委員への取材で分かりました。そして、県も池内委員長も「次の検証総括委員会でこの5つの相違も議論するはずだった」と話しています。しかし、委員会開催の2か月前。池内委員長は県の幹部との面会でこう言われたそうです。
池内委員長】「要するに、県としてはこういう考え方であるので、これを受け入れてほしいと。そこに検証総括委員会の役割は出された検証報告書を一覧してそれをまとめるだけのことだと言われた」
5つの相違について県の考えをすべて受け入れるように求められたと話しました。
さらに、こんな発言もあったそうです。
「極論すれば県が金を出している委員会だから、県に従うのは当然だともおっしゃる。これは僕は言いすぎだと思う」
この発言について県の関係者はBSNの取材に対し、「検証委員会の予算は議会の議決を得る。県が求めていることと別のことを行えば、予算を通せなくなる、そういう類の発言はした」と話しました。
結局、21年9月に予定されていた検証総括委員会は開催されませんでした。県は「新型コロナウイルスの感染拡大が理由」としていて委員会開催の代わりに知事と池内委員長は会談を行いました。
【池内委員長】「知事はとにかくこの5点について一切、県の立場は譲れない。従ってください。私は従えないと。だから知事は総括委員会は開きません。僕は開けないんですねと言ったんですけどね」
この会談で話した内容について県は取材に対し「検証総括委員会の任務や池内委員長の意見に県の考えをお伝えしています」と回答しています。
一方、県は池内委員長のある行動を問題視しています。繰り返し反原発団体の集会に出席していることです。
「検証に対する県民の信頼を失いかねないような発言は謹んで頂くよう再三お伝えしています。委員の肩書で委員会で議論、決定したことでない事項を発言することは慎んで頂きたいと考えております」
県の幹部は取材に次のように答えています。「知事は報告書に色がつくのを気にしている。それは推進であろうと、反対であろうと同じだ」
県は今月も委員長の自宅で話し合いの場を持ちましたが、意見は平行線で「共通認識を持つことはできなかった」そうです。池内委員長の任期は今年度末までです。
【花角知事】「今はとにかくご理解いただくように、部局も何度も接触しているはずです。引き受けていただいてこれまで進めていただいたのですから。ここに来てどうして止まってしまうのだということですよね」
総括委員会は開催されないまま年を越すことになりそうです。