2025年7月7日月曜日

超老化原発 運転の恐れ 24基 70年超可能 自公維国が推進

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
 岸田内閣は23年、運転期間については原発推進の経産省所管の電気事業法に移管。規制委による審査や対策工事、裁判所の仮処分命令で停止した後に上級審で命令が取り消された場合などの停止を上乗せして、「最長60年」からさらに延長できるようにしました。
 原発は元々30年耐用が設計条件で製造され、実際には安全を見て耐用40年ベースで製造されました。
 原子炉圧力容器は稼働中に絶えず核分裂に伴う中性子線の照射を受けるため、使用年数の増加に伴って強度が劣化します。ではどのようにして劣化の度合いを確認するかですが、予め運転開始時に30(40)年分のテストピースを圧力炉内に取り付けて置いて、定検時に適宜取り出してその「脆性遷移温度」を測定(破壊検査)し、ある限度まで上がれば使用不可の判定をします。
 テストピースは原子炉製造時に本体と同材質(鋳鋼)のもので製造し、本体と一緒に中性子を照射させることで、本体の劣化度を把握します(特に合成樹脂で顕著ですが、スチールでも材質の温度低下がある限界「脆性遷移温度を超えると「脆く」なるので、その遷移温度を把握することで劣化が判断できます)。
 下表に遷移温度の上昇例を示します。

          原子炉圧力容器 脆性遷移温度ワースト7

 

No

原子炉名

転 開 始

脆性遷移温度

試験片回収時期

年数

 

 

1

玄海1号

1975年10月15日

98℃

2009年4月1日

33

 

 

2

美浜1号

1970年11月28日

74℃

2001年5月1日

30

 

 

3

美浜2号

1972年7月25日

78℃

2003年9月1日

31

 

 

4

大飯2号

1979年12月5日

70℃

2000年3月1日

20

 

 

5

高浜1号

1974年11月14日

68℃

2002年111日

27

 

 

6

敦賀1号

1970年3月14日

51℃

2003年6月1日

33

 

 

7

福島1号

1971年3月26日

50℃

1999年8月1日

28

 

   東京新聞 11.7.2(原子力資料情報室作成の資料から)  使用前の脆性遷移温度は-10℃以下
 事故時に何かの理由で「高圧下で原子炉が急冷される」と遷移温度付近で破裂する恐れがあることを上表は意味します。No1~4の原子炉は既に「廃炉」が決まっています。
 問題は当初最長40年しか運転時間を想定しなかったので、今では全ての原発においてテストピースがなくなっていることです。苦肉の策として新にテストピースを作り、それを加速的な中性子照射を行うことで実際の原子炉の劣化度に近づけようとしても、一致するという保証は何もありません。中央大学教授(核燃料化学)の舘野淳さんは、「これらのデータは全く信用がおけない」と切って捨てています。
 さらに問題なのは、何らの技術的根拠もないのに書類上の手続きだけで10年先までの安全を保証していることで、唯 無根拠に運転期間を延長するもので言語同断です。
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超老化原発 運転の恐れ 24基 70年超可能 自公維国が推進
                     しんぶん赤旗 2025年7月5日

東日本大震災以降、さらなる運転延長が認められる停止期間 (2025年6月6日時点)

 

原 子 炉

新規制基準対応などによる停止期間の合計

 

原 子 炉

新規制基準対応などによる停止期間の合計

北海道電力・泊1号

  同  ・泊2号

  同  ・泊3号

東北電力・東通

  同 ・女川2号

  同 ・女川3号

東京電力・柏崎刈羽1号

  同 ・柏崎刈羽2号

  同 ・柏崎刈羽3号

  同 ・柏崎刈羽4号

  同 ・柏崎刈羽5号

  同 ・柏崎刈羽6号

  同 ・柏崎刈羽7号

中部電力・浜岡3号

  同 ・浜岡4号

  同 ・浜岡5号

北陸電力・志賀1号

  同 ・志賀2号

 14年1ヵ月

 13年9ヵ月

 13年1ヵ月

 14年2ヵ月

 13年8ヵ月

 14年2ヵ月

 11年1ヵ月

 11年6ヵ月

 11年6ヵ月

 11年6ヵ月

 10年7ヵ月

 10年6ヵ月

 111ヵ月

 14年2ヵ月

 14年Oカ月

 14年Oカ月

 14年2ヵ月

 14年2ヵ月

関西電力・美浜3号

  同 ・大飯3号

  同 ・大飯4号

  同 ・高浜1号

  同 ・高浜2号

  同 ・高浜3号

  同 ・高浜4号

中国電力・島根2号

四国電力・伊方3号

九州電力・玄海3号

  同 ・玄海4号

  同 ・川内1号

  同 ・川内2号

日本原電・東海第2

  同 ・敦賀2号

 

 経済産業省の資料から

 10年11ヵ月

 6年1ヵ月

 5年7ヵ月

 12年4ヵ月

 11年9ヵ月

 5年9ヵ月

 5年9ヵ月

 12年10ヵ月

 8年Oカ月

 7年4ヵ月

 6年10ヵ月

 4年11ヵ月

 4年8ヵ月

 14年2ヵ月

 12年6ヵ月

 

 

 


 自公政権のもとで改定された、原発の60年超運転を容認する法律が6月6日に施行されました。運転期間の延長は財界や原子力産業界が要求していたものです。経済産業省が日本共産党の岩淵友参院議員に提出した資料によると、60年超どころか70年超運転が可能な原発が24基に及ぶことがわかりました。超老朽原発が全国で動く事態になりかねません。参院選挙では、原発回帰の自公政権と日本維新の会、国民民主の補完勢力に、原発ゼロを掲げる日本共産党との対決が鮮明です。   (「原発」取材班)

   老朽原発の危険 
    老朽原発をさらに酷使することは事故の危険性が増します。老朽原発の原子炉圧
   力容器は中性子をあび続けたことで、もろくなります。機器や配管などは時間の経
   過とともに腐食や疲労で劣化します。ケーブル類は停止していても劣化します

原発ゼロ掲げる共産党対決鮮明
 原発の運転期間は、2011年の東京電力福島第1原発事故後、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法で「原則40年、最長60年」と定められました。しかし、「原発の最大限活用」を掲げた自公政権のもとで2023年、運転期間については原発推進の経済産業省所管の電気事業法に移管。規制委による審査や対策工事、裁判所の仮処分命令で停止した後に上級審で命令が取り消された場合などの停止を上乗せして、「最長60年」からさらに延長できるようにしました
 国内で稼働している原発で、1974年11月に運転を開始した最も古い関西電力高浜原発1号機(福井県)はすでに運転期間が50年を超えています。同原発は福島第1原発事故後、審査などで12年4ヵ月停止していました(表)。申請次第で今後、20年以上の運転が可能となる計算です。

過酷事故 リスク増大 超老朽原発「最大限活用」60年超審査書面のみ
 原発の運転期間を延長する、この新しい制度では、事業者の不適切な行為で停止した期間は、上乗せの対象にしません。テロ対策の不備があった東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)が事実上の運転禁止命令を受けた約2年8ヵ月や、地質データの書き換えなどがあった日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の審査中断期間がそれにあたります。
 60年超の運転延長の審査は経産省職員が書面のみで行い、経産相が認可します
 一方で、運転開始から30年を超えて運転しようとする原発は、電力会社が10年ごとに設備などの劣化を管理するための長期施設管理計画を策定し、規制委の認可を受けることになりました。これまで電力会社が申請したうち、30年以降、40年以降、50年以降の12基の計画がすでに認可されています
        
 政府が2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画は、従来掲げていた「原発の依存度低減」の文言を削除し、「最大限活用」へと転換。原発の新増設まで明記しました。その上で、原発の将来の見通しとして2040年度の目標を電源構成で2割程度としました。これまで再稼働したのは14基。この目標はその2倍以上の30基程度になります。
 政府は、「原則40年、最長60年」のルールのままでは2040年までに原発4基が廃炉となり、50年までにさらに11基が廃炉になると予想。そのため原発の新設や既設炉の最大限活用が必要だとして、60年超運転の制度を「着実に執行していく」としています。

中央大学教授(核燃料化学) 舘野淳さんの話
 原発を長年運転していると、原子炉圧力容器などの金属部分に中性子が当たり、脆(もろ)くなります。特に加圧水型原発(PWR)の圧力容器は炉心から近く、脆くなる温度=脆性(ぜいせい)遷移温度が著しく上昇し、脆い温度領域が広がります
 もし、こうして広がった脆い領域で、事故などによる熱衝撃が加わると、圧力容器が簡単に壊れてしま い、福島事故を上回る過酷事故へと進展します。
 脆性遷移温度の上昇のしかたは、圧力容器を製造した時の材質に含まれる不純物に依存するので、原子炉圧力容器の内部に製造時の素材のサンプル(試験片)の板をぶら下げて、これを時々取り出して遷移温度を測定する方法が取られてきました。
 ところが、当初40年程度の使用しか想定していなかったので、試験片が足りなくなりこれをカバーするために、中性子をよけいに当てたデータ(加速照射監視試験データ)を用いたり、かつて限界として設定した最高温度を使うことをやめたり、焼きなました試験片を使ったりと、非科学的な措置が取られたため、現在ではこれらのデータは全く信用がおけません
 こうした物理的な劣化のほかに、古い原発には「設計の古さ」という問題もあります。こうした古い設計の原発には「何か起こるかわからない」という本質的な欠陥があります。
 上述したような本質的な老朽化問題は、今回の法律に盛り込まれた長期施設管理計画などでカバーできるものでないことは明らかです。 

運転期間のイメージ  URL
https://drive.google.com/file/d/1nKcq_ms1Fy2xyN246QjXxXGSgunS4jnf/view?usp=sharing 
      (URをクリックするとPDF図が表示されます)