「レイバーネット日本」に 印鑰 智哉 氏 による掲題の記事が載りました。
日本のマスコミは、海洋放出する福島原発のアルプス処理水を単に「処理水」と称して、実質的にほぼ無害の水であるかのように表現していますが間違っています。
因みに海外メディアはほとんどがcontaminated water(汚染水)かradioactive water(放射能汚染水)と呼んでいて、処理水(treated water)という言い方はしません。
この記事は、海洋放出が意味するものを国際的な観点から明らかにした格調高い論文です。
因みに日本も批准している「国連海洋法条約」では「いずれの国も、海洋環境を保護し及び保全する義務を有する」(第192条)として、第194条には
「いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、利用することができる実行可能な最善の手段を用い、かつ、自国の能力に応じ、単独で又は適当なときは共同して、この条約に適合するすべての必要な措置をとるもの」とあります。
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汚染水の海洋放出:世界最大の環境犯罪を日本政府が犯すことになるのではないか?
レイバーネット日本 2023-08-26
印鑰 智哉(いんやく ともや)
東電原発事故汚染水の海洋放出問題、この問題はまさに日本が生み出してきた公害への対応姿勢が見事に現れてしまっており、この問題にどう向き合うかは、日本の未来を決定してしまう大きさがある。
日本のメディアはこの放出への批判を中国や韓国の批判に限定することで、あたかも理があるのが日本で、不条理な対応をしているのが中国や韓国であるかのように描こうとする。報道ステーションまでが昨夜そのような報道をしていたのにぞっとした。しかし、この批判は世界中から寄せられている。ドイツ環境省も「ALPS処理水の海洋放出は正当なプロセスを経た決定といえない」と批判した(注1)。原発マフィアに支配されていない政府やメディア、人びとによる批判はやまないだろう。
言うまでもないことだけれども、本当に安全ならば海洋放出する必要などせずに、活用すればいいではないか。もちろん、そんなことなどできるわけがない。それはそれが汚染水だからだ。誰でもわかる。しかも、現在の対応だと廃炉まで汚染水は出続ける。廃炉の目処など立っていないから、永遠に汚染水で世界の海を汚染し続けることになる(注2)。
環境を汚染したものは、その責任、回復のための負担を負わなければならない、汚染者負担原則が、国際ルールである。それは日本の法律にもなっている(注3)。しかし、その責任を日本政府はどう負うのか? 負いようがない負担になることは確実であり、負おうとしたら日本は破綻する。それならば汚染しない方法を最大限追求することが不可避なのだが、大型タンク貯留案、モルタル固化処分案なども提案されているのに十分な検討もせずに、最初から海洋放出ありきで進めてきている(注4)。またそもそも汚染水が増えないように遮水壁を築いて、崩壊した原子炉を石棺化することもできた。それもやらない。世界を汚染しないことを優先するのではなく、いかに費用をケチることにシフトしてきたのは明確だろう。
この方策では汚染を作り続けることになるのが明白であるにも関わらず、政府が力を注ぐのはなんと「風評被害」対策である。つまり、その汚染の被害を告発することが「風評被害」を生むという逆方向に社会を誘導することだ。そして残念なことにそれに追従するのが日本のメディアであり、それらに誘導された人びとが、被害の声を出すことを許さない「風評ファッショ」を作り出す。
汚染を止めようとする人に向けて「風評加害者」というレッテルの集中砲火を浴びせる。声を出した人は途端に犯罪者扱いにされてしまう。本来、汚染を止めるためには不可欠な声であるにも関わらず、沈黙を余儀なくされてしまう。
犠牲者自らが犠牲を否定してみせる。対馬で亡くなっていったイタイイタイ病患者に「イタクナイ、イタクナイ」と叫ばせたように(注5)。これが世界から見たら不可解な日本という不思議な国を作るカラクリとなっている。
汚染者の責任を曖昧にする。そのことで汚染企業とそれを進めた国策が温存される。そして犠牲者の声はかき消され、社会的に抹殺される。カドミウム汚染がそうであり、水俣病でも、そしてPFAS汚染でもずっと続いている。汚染者の責任を追及させない。汚染実態を調べることは「風評被害が起きる」として拒絶してしまう。しかし、それは本当は逆の話だ。汚染者に責任を取らせるためにそれは行うものだ。その実施にあたり、被害者を救済することが前提とならなければならない。汚染実態を調べ、汚染者に責任を取らせなければ、その被害は永続し、人びとはその汚染に苦しめられ続けるだろう。そして本当の加害者は永遠に責任を取らない(責任を取った振りは得意だけど、果たしてその中身が何かしっかり吟味しないといけない)。
これまでの汚染の多くは地域が限られていた汚染だった。しかし、今回の海洋汚染は国境なく広がってしまう。しかもいつまで続くかわからない。このままでは世界最大の環境犯罪を日本政府が犯すことになるのではないか? 世界は絶対に許さないだろう。
すでに日本はその政府の政策によって世界の孤児になりつつある(国際会議に出るたびにそのことは痛感せざるをえない)のだが、このままいけば国際的な孤立はさらに高まってしまう。
しかし、現代の日本はその生存を世界に依存する脆弱な国家であり、2年貿易が止まるだけで住民の過半数が餓死すると予想されている(注6)。そんな国にとって、本来は国際協調、国際貢献こそ、その究極の国家原理にすべきだし、現憲法はそれをうたっている。しかし、その原理を放棄した政権によって、その生存、私たちの未来が脅かされていると言わざるを得ないだろう。
首相や東電が言う、最後の最後まで責任を果たす、という発言の本当の意味は何か? 時間を引き延ばせば補償しなければならない漁民は減っていく、だから補償なんて最初だけで日時が経てば、跡継ぎもいなくなり、補償金も払わなくていいようになると見ている、だから補償なども最初のうちだけと思っているのではないか? 本当の対策をするより安くつくはずだ、と見ているのだろう。日本政府に責任を取るという姿勢は何もない。「責任」をごく一部の人へのわずかな補償に矮小化しているに過ぎない。
公害病に苦しんだ人も解決を長引かせればその間に亡くなっていく。そんな引き延ばしは彼らの得意技だ。でも、解決しないことで被害は拡がっていく。すべての被害者に補償することを考えたら、その責任など取りようがない。そして、国際的孤立という、それ以上の代償が待ち迎えている。原発などは汚染者負担原則を考えたら、到底維持などできない。だからドイツ政府は撤退した。合理的な判断だろう。汚染水の海洋放出はもちろん、原発再稼働も含めて中止すべきだ。
このおかしな「風評ファッショ」の中で、声を出すことはつらく苦しいことだろう。言われなき非難を浴びせられながら生きるのは誰にとってもつらい。黙っていた方が楽である。でも、それではむしろ苦しみを永続させてしまう。そして、本来その声は世界の99%の人に支持されることは間違いないのだ。日本政府やメディアはその事実を隠すために必死だが、そんな不自然なことは長く続くものではない。苦しい中で声をあげている人に心の底から連帯したい。また同時に「風評加害」バッシングに参加している人には反省を求めたい。そして、日本の未来のためにも政府の姿勢を根本的に転換させることに力を合わせたい。
(1) ドイツ環境省の公式アカウントの投稿から
https://twitter.com/BMUV/status/1694717897271279716
(2) FoE Japan 声明:ALPS処理汚染水の海洋放出に抗議するー「関係者の理解」は得られていない
https://foejapan.org/issue/20230822/14073/
(3) 汚染者負担原則
https://www.erca.go.jp/yobou/taiki/yougo/kw20.html
(4) 原子力市民委員会 原子力規制部会「ALPS 処理水取扱いへの見解」
http://www.ccnejapan.com/20191003_CCNE.pdf
(5) 鎌田慧氏の『隠された公害―イタイイタイ病を追って』
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid02ntSUbfWazoS7KBe6u7fyFqqgeWL4N9sZevkitb6sYBFGGVuKsZpzNG9hXNunUjzal
(6) 貿易2年止まれば6割が餓死する日本
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid0237jyvSwc7oUA5y7pH
2023年8月28日月曜日
汚染水の海洋放出 世界最大の環境犯罪を日本政府が犯すことになるのではないか?
28- 農相が中国の水産物禁輸「全く想定していなかった」もはや絶望的レベル
野村哲郎農相は25日の閣議後の記者会見で、中国が日本からの水産物の輸入を全面的に停止すると発表したことについて「大変驚いた。全く想定していなかった」と述べました。
仮にそうだったとしても、閣僚がどうあるべきかについて思いを致すほどの人であれば、そんなことは口に出来ない筈です。
驚くべきは農相の発言の方で、まるこ姫は「もはや絶望レベル」と述べました。
以下に紹介します。
また前日のブログでは、「『処理水放出、中国が輸入停止』ネトウヨの怒りの矛先は漁業関係者や中国」という記事を出していますので併せて紹介します。
文中の太字・青字の強調個所は原文に拠っています。
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農相が中国の水産物禁輸「全く想定していなかった」もはや絶望的レベル
まるこ姫の独り言 2023.08.26
野村農相のこの発言は突っ込みどころ満載で無知無能としか思えない。
これが日本の大臣の発言とは絶望的で恐れ入る。
これは自民クオリティと言っても過言じゃないのでは?
世界の流れについて行けない自民党とネトウヨ。
>中国の水産物禁輸「全く想定していなかった」 野村農相 処理水巡り |
そりゃあ、中国は原発事故当時から日本側の海洋放出を危惧していたのなら、日本政府がいきなり汚染水を海洋放出決定し、24日に放出した場面を見たら都県だけの問題ではないことくらい、素人でも分かるという話なのに、なんで農相が分からなかったのか。
危機感が無さすぎるのではないか。
こんなに世界の流れが分かず鈍感だからこそ、日本国内の酪農を潰すことも平気でいられるのではないか。
国内でなら強行しても抑え込めるかもしれないが、近隣諸国がどう出るか、ましてや中国の出方が分からなかったというのは、あまりにもお粗末すぎるし、これを簡単に発表してしまう感覚も、農相として失格だと思うが。
しかし簡単に、国内消費の拡大とか、新たな輸出先の開拓とか言うが、一朝一夕にできると思っているのだろうか。
国内だって、政府がまったく信頼されていず、突如汚染水を海洋放出してますます信用を落としているのに、急に「魚介類を食べて応援」と言われてみんなが好意的な対応を示すだろうか。
しかも、日本国民が食べる事で中韓が輸入停止したことの代替になるとはとても思えないほど大量じゃないか。
そして何度も言うが、新たな輸出先の開拓は並大抵のことじゃないと思う。
人体に大きな影響を与える放射性物質の問題も関係している事だし。
それでなくてもこの国の経済は疲弊しまくっているのに、また中国からの輸入停止と言う大きな難題が降りかかって来た。
どうやって岸田政権は乗り切るつもりか・・・・
漁業関係者側からしたら、政権からの人災と言う思いもあるのではないか。
岸田の優柔不断さ、無責任さで明後日の方に突っ走り、ますます貧乏に拍車がかかって来た。
そして岸田の「今後、数十年の長期に渡ろうとも全責任を持って対応することをお約束する」発言が、あっという間に大ウソだとバレてしまった。
「処理水放出、中国が輸入停止」ネトウヨの怒りの矛先は漁業関係者や中国
まるこ姫の独り言 2023.08.25
どんどん変な話になって来た。
東電が汚染水を保管するのに限界があったのではと思うが、日本政府はとうとう汚染水を海洋に放出するという策に出た。
それに対して中国や韓国は日本産の水産物の輸入停止と言う策に打って出た。それに対してネットでは中国や韓国が悪いと相手を一方的に非難しているが、例えば中国や韓国の原発が世界的な規模の大事故を起こしたら、日本国だって中国や韓国と同じく輸入停止に踏み切るよね。。。
しかも中国は、事故当初から汚染水の海洋放出には大反対してきた国だから、今回の措置は当然と言えば当然の話で。
>「政府は何やっていた」憤る漁業者 処理水放出、中国が輸入停止 |
気の毒なのは、福島原発に近い漁業関係者だ。
そして十羽一からげ 的に「日本産水産物」と称される商品だ。
少しも光の見えない日本経済。
あ~あ~
漁業関係者が日本政府に怒れば、ネトウヨはいやいや怒る相手が違うと言い、輸入停止した中国に怒れとはどういうことか。
どこの国だって自国民の安心安全を考えるし、日本側の汚染水の海洋放出を見たら、当然、日本産水産物の輸入停止措置はあり得る話なんだが、ネトウヨたちはそれが分からないらしい。
下手に日本政府に対して怒りの声を上げたら、「日本政府は科学的根拠も示しながら詳しく説明して来たにも拘らず、聞く耳持たない漁業関係者たちは中国共産党の匂いがする」と日本政府をやたら擁護、的外れの誹謗中傷をされ、そして水産物も売れなくなると言う漁業関係者は、踏んだり蹴ったりだ。
しかも「遊んでても9割もらえる休業補償」と漁業に対しての敬意が微塵も感じられない思考。
沖縄の基地問題で、反対していた人達へ向けての悪意ある誹謗中傷とまったくよく似ている。
>岸田政権をことさらに貶める限界保守は、中国の手先だということ。
ってどういう頭の構造をしているのだろう。
別に岸田政権をことさらに貶めているわけでもないのに、少しでも政府の批判をすると中国の手先にされてしまう。
ネジがぶっ飛んでいる輩ばかりだ。
>中国への輸出が止まるということは新しい販路を開く絶好のチャンスが到来したということ。
こういうのもあったが、世界からは放射性物質汚染水放出とみられているのに、簡単に新しい販路が開けるだろうか。
チャンスがやって来るだろうか。
売買する人がいても徹底的に買いたたかれるのがオチ。
私だったらわざわざ、放射性物質の含まれた汚染水放出をする国の魚介類を買おうとは思わない。
日本のメディアへの風当たりもやたら強い。
中国に忖度した記事を書くなとか、煽る記事を書くなとか、風評被害の記事を書いている、とか、どう考えても的外れにしか見えない。
日本は素晴らしい、中韓は劣っていると思っている人のなんと多い事か。
これだけ物事を冷静に理解できない人間や、日本語読解力の欠如した人間、そして妄想に憑りつかれた人間が増殖し続けたら、日本の未来は限りなく暗いと感じる。
自民党の二世三世政治家もヤバいが、ネットではびこる陰謀論者もヤバい。
2023年8月26日土曜日
原発汚染水 海洋放出中止せよ 放出回避の手立てある
しんぶん赤旗日曜版が掲題の記事を出しました。
政府は福島原発のアルプス処理水の海洋放出を24日から行っています。それは「(漁業者ら)関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という約束を踏みにじる暴挙で、断じて許されるものではありません。
海洋に放出する量とその間に生じる新なアルプス処理水量はほぼ同じなので放出が50年で終了することはなく、水バランス的に見るとむしろ半永久的に続くことになります。
政府は盛んに世界の原発がトリチウムを合む水を排出していると主張しますが、事故炉から生じた汚染水が意図的に海に流されたことは一度もありません。
また現在タンクにためた水の7割近くにトリチウム以外の放射性物質が排出濃度基準を超えて残っているのを、政府・東電はもう一度アルプスで処理して基準以下にして放出するとしていますが、一度吸着剤層をスルーした物質が2度目で除去できるという保証はないし、その検討もしていません。
共産党の志位委員長は「関係者の声を『聞く耳』を持たず、約束も守らない岸田首相の政治姿勢は民主主義の根幹を揺るがすもの」と厳しく批判し、先ずは汚染水の増加を止める広域遮水壁を追設するとともに、「大型タンク貯留」「モルタル固化」などの海洋放出を回避する手だての真剣な検討を求めました。
しんぶん赤旗日曜版の記事を紹介します。
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原発汚染水 海洋放出中止せよ
放出回避の手立てあるー政府は真剣な検討を
しんぶん赤旗日曜版 2023年8月27日号
東京電力福島第1原発事故で発生した汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を、24日にも開始すると決定(22日の関係閣僚会議)した岸田政権。「汚染水の海洋放出は30年続くのか、50年続くのか。とても受け入れられない」(福島県の漁業者)と怒りの声が上がっています。「(漁業者ら)関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という政府の国民、福島県民への約束を踏みにじる暴挙。日本共産党の志位和夫委員長は22日の記者会見で、「断じて許されるものではない」として海洋放出の中止を強く求めました。
福島県漁連をはじめ沿岸各県漁連、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が、こぞって海洋放出に反対しています。21日に岸田文雄首相と面会した全漁連の坂本雅信会長は改めて反対を表明。首相は20日に福島県を訪問したのに、地元の漁業関係者や自治体首長らと面会もしませんでした。
志位委員長は「『聞く耳』を持たず、約束も守らない岸田首相の政治姿勢は民主主義の根幹を揺るがすもの」と厳しく批判。汚染水の増加を止める広域遮水壁の設置、「大型タンク貯留」「モルタル固化」など海洋放出を回避する手だての真剣な検討を求めました。
原発汚染水 50年以上続く海洋放出
東京電力の計画では、汚染水の海洋放出の終了は「約30年後」。しかし、海洋放出の前提となっている原発の廃炉計画は、溶け落ちた核燃料の取り出しに何年かかるかもわからず、見通しがまったく立っていない状況です。福島県「廃炉に関する安全監視協議会」の専門委員を務める柴崎直明・福島大学教授は、「凍土壁」の効果が上がらず、原子炉建屋への地下水の流入が続き、汚染水が増え続けている現状から、海洋放出は今後、少なくとも50年以上続くと指摘しています。
半世紀以上の長期にわたって、放射性物質を含む汚染水を海に流し続けることに道理はありません。
政府は、「(海洋放出は)国際的な安全基準に合致する」とした国際原子力機関(IAEA)の包括報告書(7月4日公表)で、安全性が証明されたかのように説明しています。
しかし、報告書の序文でIAEAのグロッシ事務局長は「処理水の放出は日本政府の決定であり、この報告書はその政策を推奨したり支持したりするものではない」と強調しています。
IAEAは。安全の根拠にならない
市民や有識者らでつくる原子力市民委員会(座長・大島堅一龍谷大学教授)は、IAEAの報告書は「海洋放出の『科学的根拠』とはならない」と指摘し、次のように詳しく批判しています。(7月18日発表の「見解」)
▽IAEAは原子力利用を促進する機関で中立的とはいえない。報告書は政府の決定を前提にして追認したにすぎない
▽世界の原発がトリチウムを合む水を排出しているというが、事故炉から生じた汚染水が意図的に海に流されたことは一度もない
▽タンクにためた水の7割近くにトリチウム以外の放射性物質が排出濃度基準を超えて残っている。政府・東電はアルプスの2次処理によって基準以下にして放出するとしているが、報告書はアルプスの2次処理の性能を評価していない
▽報告書は大型タンク保管やモルタル固化など他の選択肢を検討していない。これはIAEA自身の安全基準に反する
▽関係者の理解なしに放出しないとの約束を無視した不誠実で不透明なプロセスを完全に見逃している
生産者と消費者 力あわせ反対 岩手県生協連専務理事 吉田敏恵さん
「全責任をもって対応する」(岸田文雄首相)とか、「処理水最後の一滴が安全に放出し終わるまで、IAEAはここにとどまる」(グロッシ事務局長)とか、安全に責任を持つかのような発言がありますが、ずいぶん簡単に言うなあと腹が立ちます。ご本人の役職だっていずれ代わっているでしょうし。
この先ずっと海が汚され続けると思うと、後世の人たちに申し訳が立たないと思います。
私たちは、福島や宮城の生協、漁協と協力して「アルプス処理水海洋放出に反対する署名」を集め、25万人分を超えました。
これまでの生産者の方々の努力を足蹴にし、苦しめるような政府の対応には、消費者としても耐えられません。生産者の人たちがいるから、私たちは食べていけます。生産者と消費者が地域の中で一緒に生きていくために、これからも力をあわせていきたい。
生活のめどやっとついたのに 福島・新地町の漁師 小野春雄さん
いま福島の魚は非常に高値で、シラスは震災前の3倍、ヒラメは10倍もしています。いろんな理由があるようですが、驚くほどです。震災後、操業を再開しても風評被害で安値が続いたときもありましたが、これでわれわれも安心して生活していけるめどがついたところです。
ここでトリチウムなどを含む汚染水を流したら、風評被害で台無しになるんじゃないか。海洋放出は30年続くのか、50年続くのか、100年続くという人もいます。そんな事はとても受け入れられません。
IAEA(国際原子力機関)の基準をクリアしたと言いますが、彼らは私たちの話を聞いたわけではありません。日本の政府に頼まれて見解を出しただけで、最初から政府寄りです。IAEAの報告を読んだ専門家もおかしいと言っています。
「聞く耳」持たぬ首相民主主義揺るがす
日本共産党 志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長は22日、政府 の汚染水海洋放出の決 定について、会見で次のようにのべました。
◇
一、岸田政権は、24日にも東京電力福島第1原発の汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を行うことを決定した。これは「漁業者など関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という政府の国民、福島県民への約束を公然と投げ捨てるものであり、断じて許されるものではない。海洋放出の中止を強く求める。
21日に首相と面会した全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長は、「海洋放出については依然として反対するという立場を堅持する」と明言している。岸田首相は、20日に福島視察を行ったが、福島の漁業関係者、自治体首長とは面会もしなかった。「聞く耳」をもたず、約束も守らない、細田首相の政治姿勢は民主主義の根幹を揺るがすものと言わざるを得ない。
一、核燃料が溶け落ちたデブリに接触して汚染された水は、アルプスで処理しても、放射性物質のトリチウムは除去できず、「規制基準以下」とはいえセシウム、ストロンチウムなどトリチウム以外の放射性物質も含まれていることを、政府も認めており、関係者の同意が得られないのは当然である。
一、汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を強行すれば、漁業のみならず加工・輸送・卸業や観光へのさまざまな影響が出ることは避けられず、福島の復興に重大な障害となる。原発事故を引き起こした東京電力や政府が、その責任を脇に置いて、福島の復興に大きな障害をもたらすことを、被害者に押しつけることは許されない
一、福島第1原発の建屋内への地下水の流入を止めない限り、汚染水は増え続けることになる。重大なことは、「凍土壁」などの対策がj十分な効果をあげていないにもかかわらず、政府が汚染水の増加を止めるための有効な手だてをとっていないことである。政府は、広域の遮氷壁の設置など汚染水の増加を止めるための手だてを真剣に講ずるべきである。
専門家から「大型タンク貯留案」や「モルタル固化処分案」など、放射性物質の海洋放出を回避する手だてが提案されている。問題を解決するための真剣な検討と対策を行うべきである。
海洋放出も武器輸出も「オレがやった」 勘違い首相の危険な高揚
(これはブログ「湯沢平和の輪」に掲載された記事ですが、原発にも関連しています
ので紹介します)
IAEAはアルプス処理水の海洋放出を認めましたが、それは様々な「注記」や「条件」が付いた上でのことでした。取り分け「周辺国の同意を得る」ことは当初からの条件でした。
中国は海洋放出に反対を明確にしていたのに、それを無視して日本は24日に海洋放出を開始しました。明らかにIAEAが提示した条件に反しています。
そもそも「海洋放出」以外に様々な処分の方法があったにもかかわらず放射性物質を海洋に放出するのは、海の憲法である「国連海洋条約」や「ロンドン条約」に反しています。
「海水で薄めることで規制値以下にする」に至っては論外もいいところで、放出先の海水や大気で希釈することが通用するのであれば、あらゆる水質汚濁防止法や大気汚染防止法は不要になります(総量規制の趣旨にも反します)。
果たして中国は即刻日本産の魚介類等を輸入禁止処分にしました。中国の防衛的措置に対して日本に抗議する資格はありません。またこの事態を予期しなかったのであれば政治家として失格です。
漁業者や農業従事者をはじめ流通を含めた関連業者に完全な補償をすべきことは言うまでもありません。岸田首相の無作為と不明に基いて招来させたこの事態が、この先何十年続くかは不明でその間に政府が支払うべき賠償額が莫大なものになるのは間違いありません。
しかもその原資はすべて税金です。岸田首相は国民に対してどのように弁明するのでしょうか。
日刊ゲンダイが、「海洋放出も武器輸出も『オレがやった』 勘違い首相の危険な高揚」という趣旨の記事を出しました。これほど取り柄のない首相は珍しいと言えます。
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低支持率に居直ったか 処理水も武器輸出も「オレがやった」
勘違い首相の危険な高揚
日刊ゲンダイ 2023/8/25
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
誰のための政治決断なのか。24日午後1時過ぎ、福島第1原発の敷地にたまり続ける「処理水」の海洋放出が始まった。
今回は約7800トンの処理水を海水で薄め、17日間かけて放出する。海洋放出は今年度中に計4回、3万トンあまりが海に流される予定だ。これが今後、30年以上も続くわけだ。
処理水などが入ったタンクはすでに敷地内で1000基を超え、汚染水は今も日々発生していて、来年早々にもタンクが満杯になる見込みだ。そういうタイミングでの海洋放出である。
政府や東京電力は、タンクを減らさなければ廃炉作業に必要な設備を敷地内につくれないと説明する。海洋放出は「廃炉に向けた大きなステップ」と言うのだが、そもそも廃炉の見通しもまったく立っていないのに、地元の思いを無視するような形で、いま急いで処理水を海に流す必要があったのか。
2015年に安倍政権と東電が福島県漁連と文書で交わした「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分も行わない」という約束は、完全に反故にされた。
20日に福島第1原発を視察した岸田首相は、地元の漁業関係者とは会おうともせず、21日に官邸で全国漁業協同組合連合会(全漁連)と会談するセレモニーで24日からの海洋放出を決めてしまった。全漁連会長も「放出には反対」「科学的に安全だからといって風評被害がなくなるわけではない」と懸念を表明したのに、政府は「一定の理解を得た」とか言って海洋放出を強行したのだ。
カネで解決しようとする傲慢
「ハナから関係者の声を聞くつもりはなく、スケジュールありきで拙速・性急に進めた印象です。岸田首相は7月に、この夏は全国各地を回って車座対話などを行って国民の声を聞くと表明したのだから、福島の漁業関係者と地元の水産物でも食べながら車座対話を行って、せめて直接話を聞く機会をつくろうとは思わなかったのか。
地元に寄り添う姿勢がまったくないし、海洋放出を決断すればまた苦しい思いをさせてしまうと悩み抜いた様子もない。かつて自慢していた『聞く力』はどこへ行ってしまったのでしょう。風評被害対策や漁業支援に基金を積めばいいだろうと、カネで解決しようとする態度はあまりに冷酷で傲慢に映ります」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
処理水の海洋放出を受け、全漁連の坂本雅信会長はこうコメントを発表した。
<本日、ALPS処理水の海洋放出が開始された。我々がALPS処理水の海洋放出に反対であることはいささかも変わりはない。国家的見地から国が全責任を持って放出を判断したとはいえ、今、この瞬間を目の当たりにし、全国の漁業者の不安な思いは増している。我々漁業者は、安心して漁業を継続することが唯一の望みである>
地元の豊かな海、仕事のやりがいと誇り、大漁を喜ぶ家族の笑顔……。そうしたものは、カネに換算できるものではない。いくら補償金を積まれても、取り戻せないものだってある。国家的見地からどうしても海洋放出が避けられないというのなら、少なくとも地元の理解を得るための努力はするべきだ。
安倍政権あたりから怪しくなってきたが、歴代政権はたとえポーズだとしても、犠牲を強いる地元との対話をおろそかにはしなかった。本気で寄り添おうとする政治家もいた。ところが、岸田はそういう懊悩と無縁なのだ。強権的に決めて、なぜかヘラヘラしている。
国会での議論もスッ飛ばして独断を国民に押し付け
処理水の海洋放出について、岸田は「今後数十年にわたろうとも、全責任を持って対応する」と言うのだが、どうやって数十年後まで全責任を持つのだ。いつまで首相でいるつもりなのか。
「早ければ来年には退陣する首相が、数十年後まで責任を持つなんて言うこと自体が無責任です。たとえ100歳を越えて長生きしても、何か起きた時に岸田首相はどうやって責任を取るんですか。結局、“今だけ、カネだけ、自分だけ”のその場しのぎで、大ウソつきということですよ。民の声を聞き、国民の声を政治に反映させるのが為政者の務めなのに、岸田首相は独断で国民の神経を逆なでするようなことばかり押し付ける。
昨年末には防衛費43兆円や敵基地攻撃能力の保有といった戦後日本の平和主義からの大転換も勝手に決めて、『安倍元首相にもできなかったことをやった』と胸を張っていたというからおぞましい。処理水の放出もそうですが、国会での議論も経ずに一方的に表明するという乱暴な手法で、国民は黙って従えと奴隷扱いなのです。官僚におだてられていい気になり、米国の機嫌を取っているだけの首相は、もはや日本国民の敵と言っても過言ではありません」(政治評論家・本澤二郎氏)
17日の訪米直前に処理水の放出について聞かれた岸田は「具体的な時期、プロセスは決まっていない」と言った。それが、18日にバイデン米大統領と会談して処理水放出について了承を得たら、急に「判断すべき最終的な段階」とか言い出し、帰国して早々に海洋放出を始めた。バイデンさえOKと言えば、日本の漁師を泣かせても構わないのだ。
空虚な操り人形は使い勝手がいい
(中 略)
「岸田首相の国会軽視は常軌を逸しています。(中 略)国家ビジョンがなく、やりたいこともなく、首相になりたかっただけの権力亡者は、官僚や米国からすれば使い勝手のいい操り人形なのでしょう。その結果、汚染水の海洋放出や武器輸出、マイナンバーカードのゴリ押しなど、国民無視の暴走が続いているのです」(本澤二郎氏=前出)
岸田はよく「長年の課題に答えを出す」「先送りできない課題に取り組む」と言う。それは経産省にとっては処理水の海洋放出であり、財務省にとっては増税で、防衛省にとっては防衛費増額や武器開発ということになる。それら役人の思惑に導かれ、敷かれたレールに乗っているだけなのだが、「オレがやった」と悦に入っている。
こういう能天気なボンクラ首相は、米国や官僚に踊らされれば何をしでかすか分からないから危うい。30%前後の低支持率に居直ったらなおさらだ。国民の声を届けるには、自民党内がアワ食って倒閣に走り出すほど圧倒的な不支持を突きつけるか、選挙で国民が引きずり降ろすしかない。