米国で初めて小型モジュール型原子炉の設計が承認されました。原子力エネルギー局次官補は「小型モジュール炉は抽象概念ではなくなった」と述べたということです。
小型モジュール型原子炉が実現したことは間違いありませんが、発電量は1モジュール当たり5万kwと通常の100万kwの1/20になるのに対して、必要な敷地面積は1/3にしかならないので、敷地単位面積当たりの発電量は現行の約1/7に減少します。
メリットとしては建設に使われる部材を工場で製造することが可能なことで、その分建設に要する費用と時間が抑えられますが、それで前述の欠点をカバーすることは不可能です。何よりも原発の安全性が改善されたり、使用済み核燃料の処置が軽減されるわけではないので、経済的メリットは見出せません。
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アメリカで初の小型モジュール型原子炉の設計を承認
ギズモード・ジャパン(GIZMODE) 2023/2/28
原子力の未来に向けた長い道のりの、記念すべき第一歩。
アメリカで初めて、小型モジュール型原子炉の設計が承認されました。気候変動対策が議論されるなかで、疑問視されつつも支持が復活しつつある電力源としては、有望な一歩となりました。
小型モジュール炉の実現化
この設計は、原子力規制委員会(NRC)によって承認され、1月19日の連邦官報で発表されました。設計したのは、オレゴンに本拠を置く企業、NuScale社です。これが官報に掲載されたことで、電力事業者は新しい原子力発電所の建設免許を申請する際に、小型モジュール炉も選択できるようになります。この設計に従えば、通常の3分の1ほどの規模で原子炉を建設でき、1モジュールあたりでおよそ50メガワット(⇒ 5万kw)の電力をまかなえます。
小型モジュール炉の設計として初めて認められたのと同時に、NuScale社のモデルはアメリカで正式に承認された原子炉設計としては7番目になります。原子力発電は炭素を排出しないため、再生可能エネルギーが停止した場合には貴重なベースロード電源として機能します。
小型モジュール炉は「抽象概念ではなくなった」と、エネルギー省原子力エネルギー局次官補のKathryn Huff氏が今回の発表文で述べています。
「もはや現実であり、NuScale社、大学関係者、当省の研究所、業界パートナー、NRCの賢明な取り組みによって実配備できる段階になった。最高水準のイノベーションであり、それがわが国で形になろうとしている」
原子力の課題解決へも一役
たしかに期待は盛り上がりますが、原子力はこの数十年というもの、いくつもの要因によって山のような課題を抱えています。そのなかでも大きいのが、建設に伴う費用と柔軟性の問題です。これまで、原子炉といえば巨大なインフラプロジェクトでした。建設に数十年かかることも珍しくありませんし、費用の高騰に苦しむこともあるため、天然ガスや再生可能エネルギーと比べると、短期的にエネルギー価格が高くつきます。
小型モジュール炉、通称SMRはこうした難問を解消します。建設に使われる部材は、工場で製造したうえで現地に搬送できるため、建設に要する費用も時間も大幅に抑えられ、そもそも必要な土地も少なくて済むからです。
一方で、懸念の声も
設計が公式に承認されたからといって、それでエネルギー業界が順風満帆になるということではありません。発電網が数年のうちにすべて脱炭素の原子力発電に置き換わるわけでもありません。NuScale社は現在、デモンストレーションために6基のモジュールをアイダホ州に建設中であり、これが2030年から稼働する予定です。ただし、このデモ用発電所のメガワット時あたりの価格は、前回の見積もりから50%以上もはね上がるだろうと、同社はこの1月に発表しています。従来型の他の原子力プロジェクトに伴う原価が高騰しており、残念ながらSMRもその例外ではないということです。SMRでも放射性廃棄物が発生する点は変わらないため、環境保護派からは、この業界の発展に伴って見逃すことのできない懸念材料だという声があがっています。
原子力開発のペースも、気候変動対策の点では問題視されています。脱炭素という喫緊の必要性について対応が遅すぎるというのです。
しかしその一方では、真の脱炭素社会における膨大なエネルギー需要に、再生可能エネルギーだけでは対応しきれない、原子力の開発こそ化石燃料頼みの現状から脱却するには最善の戦略のひとつだという意見もあります。SMR設計が登場しても、原子力技術に関連する根深い問題をすべて解決できるわけではないでしょう。これからの世界における原子力の役割をめぐって、環境保護運動の内部で以前から続く緊張関係も残りそうです。それでも、SMRが今後の可能性を示唆する有力な選択肢であることは間違いありません。