原子力規制委は8日、柏崎刈羽原発について、追加検査で確認した27項目のうち6項目で改善が必要だと判断しました。運転禁止命令解除の判断に向けた報告書の取りまとめは、5月以降にずれ込む見通しです(共同通信)。
政府は去年東日本大震災以来の政策を転換して、原発を最大限活用する方針に切り替えましたが、当然そこにはさまざまな課題が潜んでいます。
日テレNEWSが ◇再稼働で値下げ? ◇不祥事の数々 ◇避難道路が通行止め の3点について詳しく掘り下げる記事を出しました。
中でも避難道路として高速道路を使用する人たちは6万人に上るので、ここで渋滞を起こすようであれば避難の過程で被爆を起こすことになります。再稼働を目指す上では先ずそれを解消することが先決です。
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【解説】“世界最大級”の原発…再稼働どうなる? 相次いだ“不祥事” 信頼回復への取り組みと近隣住民の不安
日テレNEWS 2023/3/7
福島第一原発の大事故からまもなく12年。政府は東日本大震災以来の政策を転換して、原発を最大限活用する方針に切り替えました。しかし、そこにはさまざまな課題が潜んでいます。
◇再稼働で値下げ?
◇不祥事の数々
◇避難道路が通行止め
以上の3点を、現地取材を交えて詳しく掘りさげます。
■原発再稼働へ…最大の焦点は新潟県の「柏崎刈羽原発」
政府は今の国会で、60年を超えて原発の運転を可能とすることなどを盛り込んだ法案の成立を目指しています。
再稼働に向けた現在の原発の状況をみますと、今月7日時点で全国に33基ある原発のうち、東日本大震災後に厳しくなった国の安全基準に合格し、すでに再稼働したものは、美浜原発や大飯原発など10基あります。
現時点で国の安全審査に合格していて、地元の同意など再稼働に向けたプロセスに入っている原発は、全国で7基あります。
その中でも、東日本での最大の焦点は、新潟県にある「柏崎刈羽原発」です。柏崎刈羽原発は東京電力の原発なので、ここで作られた電気は首都圏で使われます。原子炉が7つもあり、発電量では世界でも最大級と言われています。
この柏崎刈羽原発の7号機を含めた全国7基の原発については、政府は夏以降、早い時期の再稼働を目指しています。
■再稼働で電気代が月額約600円の“実質値下げ”に
この再稼働を急ぐ背景には、昨今の「電気料金の高騰」があります。柏崎刈羽原発の6号機と7号機を再稼働すると、東京電力は1kWhあたり2・1円の値下げ、つまり、標準家庭では月々約600円の“実質値下げ”となります。
東京電力は6月から実施を見込んでいる新しい料金に、こういった数値を織り込んでいます。
将来的には、再稼働しなければ火力発電への依存度が下がらないので、資源高によってまた料金が上がっていく可能性があります。だから、再稼働を進めたい…という理屈です。
■耳を疑う不祥事の数々…故障をすぐに修理せず
今月2日、柏崎刈羽原発の7号機を取材しました。東京電力は、公式には“再稼働への準備ではない”としていますが、先月から原子炉のふたを開けて、制御棒などの重要な設備の動作確認を行っています。
ただ、柏崎刈羽原発では近年、耳を疑うようなさまざまな不祥事が相次ぎました。2017年に6・7号機が国の安全審査に合格しましたが、2020年9月に運転を制御する重要な施設「中央制御室」に、社員がIDカードを不正に使って入室しました。2021年1月には、複数の「侵入者検知機器」が故障したのに、速やかに改善しませんでした。それ以外にも複数ありますが、こういったことがあったことで、原子力規制委から事実上の「運転禁止命令」を受けてしまいました。
■信頼の回復と組織風土の立て直し…所長に「フクシマ50」 改善に取り組む
東電自身もその後、「リスク認識の甘さ」「是正する力の弱さ」などがあったと総括しています。そこで今、柏崎刈羽原発では、信頼の回復と組織風土の立て直しに取り組んでいます。
今月2日、まだ薄暗い早朝6時すぎ、柏崎刈羽原発の稲垣武之所長が出勤してきた作業員らに自ら、「おはようございます」と声をかけていました。稲垣所長は、福島第一原発事故の当初に対応に当たった、いわゆる「フクシマ50」の1人です。着任は2021年10月。組織の風通しの悪さを改善するために、“作業現場で所員らと対話を重ねて課題を洗い出したい”という狙いがあるといいます。
柏崎刈羽原発 稲垣武之所長
「さまざまな意見を聞いて、その意見を無視せずにより良くしていこうという取り組みを1年以上続けてきて、ようやく、少しずつですけど、改善が見えてきたと感じています」
所長はコミュニケーションや組織の風土の問題について「風通しについては、手応えはあるんだ」と強調しています。
一方、設備の改善は、「核セキュリティ」が絡む、安全管理上の問題で詳細は記載できませんが、例えば、構内に入る際は「生体認証」が加わりました。それから、人や車両の照合を機械化するなど、最新技術も導入する予定だと説明していました。
■避難道路が“通行止め”に…近隣住民の不安
一方で今、周辺住民はこの冬に起きた“ある問題“も不安視しています。「去年の暮れに起きた大雪での道路の寸断」です。去年12月に北陸自動車道が通行止めになり、それに並行する国道8号線も車が立ち往生し、柏崎市内では約38時間、通行ができなくなりました。
去年12月の大雪で通行止めになった道路は、原発で事故があった場合の主な避難道路です。柏崎市の人口は約8万人で、大雪で通行止めになった道路はそのうち6万人の命を預かる道路でした。これが大雪でストップしてしまいました。
原発のすぐ近くに住んでいる住民に話を聞きました。
原発から約4キロの場所に住む末崎雅英さん(73)
「そこに(原発の)排気塔、見えませんかね? 点滅している」
末崎さんは、原発から約4キロの場所に住んでいます。“再稼働はやむなし”という立場ですが、やはり避難に対しては心配していて、対策を求めています。
原発から約4キロの場所に住む末崎雅英さん
「今回みたいに(大雪に)なった時に、仮に万が一、地震があったり、事故があった場合は、これはもう(避難は)無理でしょうね」
「想定外を想定内にしてもらって、いろんな計画とか安全面とかを考えていただきたいなと」
この問題について、柏崎市の櫻井市長もこのように述べています。
新潟・柏崎市 櫻井雅浩市長
「今よりもみなさんが安心していただけるような、(国が)改善策を作っていただかないと、そして施策を動かしていただかないと、再稼働議論には影響を及ぼすと申し上げています」
以前から国に整備を要望してきたそうですが、国はまだ検討中だということです。
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首都圏の電気は、柏崎刈羽原発で作っているということを忘れてはいけません。電気料金の値上がりや、電力需給の問題を解決する方法の1つが原発なのだとすれば、まずは信頼の回復、そして地元が安心できる対策が不可欠だと言えそうです。