3日の規制委の会議で北陸電力志賀原発の敷地内に活断層が存在する可能性は正式に否定されました。活断層が存在すれば再稼働はできないので、その結論が出るまでに約7年が掛かりました。もともと石川、富山両県の住民ら120人が「志賀原発は耐震設計上、安全性が確保されていない」などとして12年6月に提訴したときには、まだ敷地内に活断層が存在する可能性を有識者調査団に指摘されていませんでした。
従って「運転差し止め」の法廷審査はこれからスタートするわけですが、ここでも耐震設計問題に加えて住民が安全避難できるかの重要問題があります。
毎日新聞が「『断層だけが問題ではない』志賀原発、住民らが懸念する重要事案」とする記事を出しました。
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「断層だけが問題ではない」 志賀原発、住民らが懸念する重要事案
毎日新聞 2023/3/3
「これまでの判断がひっくり返るとは……」。敷地内に活断層が存在する可能性が指摘され、廃炉の公算が大きいともいわれた北陸電力志賀原発(石川県志賀町)について、原子力規制委員会は3日、一転してその可能性を否定した。原発の危険性を訴え、10年以上にわたって裁判で運転差し止めを求めてきた北野進さん(63)=石川県珠洲市=は、廃炉回避に道を開く規制委の判断に唇をかんだ。
志賀原発は耐震設計上、安全性が確保されていないなどとして、石川、富山両県の住民ら120人(現在は125人)が2012年6月、北陸電(富山市)を相手取り運転差し止めを求めて金沢地裁に提訴した。北野さんはこの訴訟の原告団長。原発の敷地内断層について規制委は16年、1号機の直下に活断層が存在する可能性などを盛り込んだ有識者調査団の報告書を正式に受理していた。北陸電はこれに真っ向から異を唱え、新たなデータを規制委に提出するなど巻き返しを図ってきた。
原告側は敷地内断層が活断層と評価されると、志賀原発の危険性を示す大きな根拠の一つとなるとして、この間の議論を見守ってきた。金沢地裁も規制委の審査を注視しており、その結果は裁判の行方も左右する。今回の規制委の判断について、北野さんは「断層だけが問題ではない。いろいろな角度から危険性を主張していくだけだ」と語る。
◇認知度低い避難計画「防災にも問題」
原告団を含む5団体は22年11月、石川県が実施した原子力防災訓練に合わせ、志賀原発で重大事故が起きた場合の避難行動について訓練参加者や地元住民にアンケート調査を実施。252人から回答を得た。
この結果、原発からの距離に応じて住民を段階的に避難させることを「知らない」と答えた人が過半数(128人)だった。また5~30キロ圏の住民(190人)のうち、屋内退避の指示が出た際に「(遠方に逃げずに)自治体の指示に従う」と回答したのは55%(105人)だった。
自治体が作成する住民の避難計画は、その不備を理由に水戸地裁が21年3月、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止めを命じるなど、重要視されている。アンケート結果は、志賀原発を巡る計画内容の認知度の低さなどを示した。北野さんは「差し止め訴訟だけでなく、防災の問題を追及する中で再稼働にブレーキをかけていくことはできる。原発の危険性について、地域住民や自治体と共通認識をつくっていきたい」と力を込めた。
一方、規制委の判断を受け、石川県の馳浩知事は「規制委には引き続き、科学的な根拠に基づき(志賀原発2号機が新規制基準に適合するか)厳正かつ迅速な審査を行っていただきたい」とコメントした。【深尾昭寛、阿部弘賢】