原子力規制委は3日、北陸電力志賀原発の敷地内の断層について「活断層ではない」との結論を出しました。2016年に地質の専門家たちが活断層と判断しましたが、その後6年にわたり調査・検討を継続して結論づけられました。
次回以降、敷地の「基準地震動」の算定に用いるモデルについて議論される見通しで、再稼働に向けた審査がスタートします。
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志賀原発「活断層なし」 規制委、評価妥当と判断 8年越し、再稼働へ前進
北國新聞社 2023/3/4
●北電社長「大きな一歩」
原子力規制委員会は3日、北陸電力志賀原発2号機の再稼働に向けた新規制基準の審査会合を開き、原発敷地内にある10本の断層を「活断層ではない」とする北電の主張は妥当だと判断した。一度は活動性を否定できないとの指摘を受けた敷地内断層の評価を覆し、審査は2014年8月の申請以降、8年7カ月越しに大きく前進した。今後は地震・津波対策などの審査に移る。
地質学が専門の石渡明委員(元金大教授)は会合で、「おおむね妥当な検討がなされている」と述べた。
審査会合後、北電の松田光司社長は「一歩前進だ。しかも大きな一歩になる」と語った。北電は、地元の了解を大前提に一日も早い再稼働を目指すとのコメントを出した。
再稼働の時期について、北電は効率良く審査が進んだと仮定した場合、2026年1月の再稼働が可能と想定しているが、現時点では見通せない。一方、敷地内断層が決着したことで、同じ敷地に建つ1号機の審査申請に向けた準備が進むとみられる。
新規制基準では、12万~13万年前以降の活動が否定できない断層を活断層と定義。原子炉建屋などの重要施設の直下に活断層がある場合は再稼働が認められない。
志賀原発の敷地内断層を巡っては、16年に規制委が1号機の直下を通る「S―1断層」について活動性を指摘する有識者調査団の評価書を受理。判断に必要なデータ不足も指摘されていた。
北電はその後、S―1断層や2号機の下を通るS―4断層など10本の評価対象断層について、ボーリングで採取した地下鉱物の観察データを用いて活断層ではないと反論してきた。
北電は当初、断層の上に堆積した地層の状態を見る手法で活動性がないことを示してきた。ただ、原発建設によって地層が削られた部分もあったため、規制委が求める明瞭なデータを提示できず、議論が長引いていた。
今後の審査では、建屋の耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」や津波の高さを算出し、2号機がそれに耐えうる施設であるかどうかの検討に移る。審査合格後は安全対策工事を進めるとともに、石川県や志賀町の了解などを得て運転再開となる。
★志賀原発 志賀町赤住にあり、1号機(沸騰水型軽水炉、54万キロワット)は1993年、2号機(改良型沸騰水型軽水炉、135万8千キロワット)は2006年に営業運転を始めた。11年3月以降、いずれも運転を停止している。10年度の発電電力量に占める原子力の比率は28%だった。
「活断層ではない」志賀原発の断層で原子力規制委が北電の主張了承 新田知事「電気の安定供給に期待」
富山テレビ 2023/3/3
志賀原子力発電所2号機の再稼働を審査する会合が3日開かれ、原子力規制委員会は、原発の敷地内を通る断層について、「活断層ではない」とする北陸電力の主張を了承しました。
再稼働の申請から8年、敷地内断層をめぐる議論が終結し、審査が進展することになります。
会合には北陸電力の担当者などがオンラインで出席し、志賀原子力発電所2号機の敷地内を通る断層について審査しました。
国の基準では活断層の上に原子炉建屋などの重要施設を置くことを禁止していて、北陸電力はこれまで、敷地内の断層に活動性がないことを示すデータを繰り返し提出してきました。
原子力規制委員会は、一昨年11月と去年10月の2度、現地調査を実施し、目視による断層の確認や顕微鏡を使った岩盤試料の観察などを行い、北陸電力の主張が妥当か検証を進めていました。
3日の会合で、北陸電力は、これまでの審査内容を踏まえたとりまとめの資料を示した上で、未回答となっていた9つの項目について説明。
2号機建屋の真下を通るS‐4断層や海岸部を通る断層に活動性が認められないとする根拠を提示し、「敷地内を通る全ての断層は、いずれも将来活動する可能性のないもので、地震の震源として考慮する活断層はない」と主張しました。
これに対し、委員は、一部、資料の不備を指摘したものの、「説得力のある証拠が得られた」と評価し、北陸電力の主張は妥当であるとし了承しました。
会合後、北陸電力は「再稼働に向けた審査のステップとして大きな一歩と受け止めている」とコメントを発表し、地元の了解を前提に、一日も早い再稼働を目指す考えを示しました。
また、新田知事は…。
*新田知事「重要な判断だと考えている。安全第一で、今後も専門家の皆さんに慎重な調査、研究、判断をお願いしたい。地域の大手電力会社である北陸電力の電気の供給が安定的に、できるだけ低廉な価格が長く続くことを期待している」
志賀原発の再稼働を巡る審査では、次回以降、敷地周辺の断層や地震が起きた場合の最大の揺れ、「基準地震動」の算定に用いるモデルについて、議論される見通しです。
東日本大震災からまもなく12年が経とうとしています。
福島第一原子力発電所の教訓を思い起こし、原発の再稼働には、慎重で丁寧な議論が求められます。