東北電カネットワークが供給エリアとする新潟県と東北6県で24年、再生可能エネルギーの発電量がエリア需要全量を上回る時間帯があった日が、年間で48日に上ったことが分かりました。
管内では25年1月末時点で、太陽光計916万Kw、風力計225万Kwが送電網に接続されています。今後も本県の胎内・村上市沖や秋田県沖などで大規模な洋上風力発電事業が計画されており、接続契約の申し込み分を合わせると、太陽光は1468万kw、風力は1488万kwに上ります。
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再生エネ、24年東北・本県 需要超える発電48日
新潟日報 2025年5月1日
東北電カネットワーク(仙台市)が供給エリアとする本県と東北6県で2024年、再生可能エネルギーの発電量がエリア需要全量を上回る時間帯があった日が、年間で48日に上ったことが30日、新潟日報社の調べで分かった。東京電力福島第1原発事故以後、太陽光や風力の発電施設整備が進んでおり、再エネの存在感が増している現状を裏付けた格好だ。
太陽光けん引
東北電ネット公表のエリア需給実績データを調べた。再エネ発電量は太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5種類を合計した。
再エネ発電量がエリア需要を超える時間帯があったのは、2~7月と10、11月。特に、天候がよくなり、冷暖房の需要が少ない4月と5月は、それぞれ17日間と月の半数を超えた。
長い日では、午前7時半から午後3時にかけて、エリア需要に対する再エネ発電量の比率が100%を超えた。最天時は132・5%に上った。
東北電ネットは「3月下旬くらいから6月にかけて、気温が上がって需要が落ちる時期に集中している。今後は秋口にも増えるだろう」としている。
再エネ発電施設は、2011年の福島第1原発事故後、全国で導入が進んだ。東北電ネットによると、管内では25年1月末時点で、太陽光計916万Kw、風力計225万Kwが送電網に接続されている。
今後も本県の胎内・村上市沖や秋田県沖などで大規模な洋上風力発電事業が計画されており、接続契約の申し込み分を合わせると、太陽光は1468万kw、風力は1488万kwに上る。東北電ネット管内の夏の最大需要電力は1500万kw程度で、数学上は再エネの発電設備の容量が需要を大きく上回ることになる。
ただ、太陽光や風力は季節や時間帯、天候などによって発電量が変動する。太陽光は夜間の発電量がゼロとなるなど、再エネ比率は日中と夜間で差がある。24年も、低い時は再エネ比率が16%台の時間帯もあった。今後は日中に発電した電力を生かす工夫も求められる。
「捨てる電気」増加 柏崎再稼働ならさらに 再生エネ発電量 需要上回る
再生可能エネルギーの発電設備が本県を含む東北電カネットワークの供給エリアで増えている。その一方で、発電量が需要量を上回りそうな場合に、再エネの発電を一時的に制限する「出力制御」の実施回数も増えている。燃料費ゼロで発電する再エネの電気を「捨てる」とも言える事態は今後も増えそうで、火力や原子力など他の発電施設を含めた効率的な電力供給の在り方が問われている。 (報道部・高橋央樹)
電力供給は需要と供給が一致しないと周波数が乱れ、大規模停電が引き起こされるリスクがある。現状では、時間帯や天候で増減する再エネの出力に合わせ、主に火力発電で需給バランスを調整している。
ただ、発電量が需要を大きく上回り、調整できる範囲を超えそうな場合は、送配電事業者が再エネ発電事業者ヘー時的に発電の停止などを指ふするルールとなっている。
原発3基分
東北電ネット管内では24年、太陽光で29回、風力で26回の出力制御を実施。前年から倍近く増加した。制御量も増加傾向で、同5月3日には過去最大の294万kw分を制御。IOO万kw級の原発3基分に相当する量に上った。
そもそも需給が一致しなければならない電力供給にあって、東北電ネット管内で需要を上回る発電量があるのは、東北電ネットが、隣接する東京電力系列の送配電会社へ送電しているためだ。
グラフPDF 東北エリアの受給実績 ↓ 参照
https://drive.google.com/file/d/1cy6KO9RNZ4vARiQjw5-6f8d0IpvZBySG/view?usp=sharing
この首都圏への送電が今後、東北電ネット管内の再エネ電力の生かし方を左右することになりそうだ。送り先である首都圏は、太陽光など再エネの発電設備導入量は全国トップで、今後も増加が予想される。ここに、国や東京電力が再稼働を目指す東電柏崎刈羽原発の発電量も加われば、東北電ネット管内から首都圏へ送電できる余地が減る。結果、東北電ネット管内での出力制御に拍車が掛かる可能性がある。
蓄電池整備
エネルギーなどの解析が専門で、元福島大教授の佐藤理夫さん=化学工学=(65)は「再エネ導入の余地はまだあるし、増やさないといけない。太陽光発電の余剰分の活用策が重要で、蓄電池の整備や自家消費へのシフトが必要だ」と強調。他にも消費者が電力を消費するタイミングを発電のピークに合わせるといった取り組みの拡大も必要だと指摘する。
東北電ネット新潟支社の青山昭設備計画部長は「再エネは主力電源であり、なるべく送電網に接続する取り組みを行っている。同時に制御量を抑えるような施策も進めていく」と話した。