2016年12月4日日曜日

廃炉・賠償費用を新電力に負担させるのは間違い 国民の負担額は一人20万円

 福島原発事故の賠償・廃炉費用が従来見通しの11兆円から突然20兆円以上に跳ね上がり、それらを送配電網の使用料「託送料金」に上乗せしようと経産省が計画していることに対して各所から批判が高まっています。
 立命館大学の大島堅一教授は「(託送料金への上乗せは)債務超過に陥った東電の救済策で、電力自由化の趣旨に反する」、「託送料金への上乗せでは費用の内訳が見えなくなるので税とするのがよい」 と述べました。
 自然エネルギーを主体とする新電力へのアンケートでは9割が託送料金への上乗せは「適切でない」と答えました。
 
 大前研一氏は、事故処理費用20兆円は、国民1人あたり20万円、4人家族なら80万円に相当する負担増であるとし、福島第1原発は歴史に残るような高額な廃炉費用になってしまったと述べました。
 また建設コストも上がる一方で海外向けの原発輸出が頓挫したので、安倍政権には痛いはずだと述べました。
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原発事故廃炉費用の託送料への転嫁案に批判や不満
オルタナニュース 2016年12月2日
東電原発事故の賠償・廃炉費用を送配電網の使用料「託送料金」に上乗せするという経産省の方針に対して各所から批判が高まっている。原発事故に関係がない新電力会社(PPS)や消費者にも負担を強いるという矛盾に加え、賠償・廃炉費用も従来見通しの10兆円から突然20兆円に跳ね上がり、試算の妥当性にも疑問符が付いた。東電を過度に救済する仕組みに対して、PPSからも不満の声が上がる。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
 
■自然エネPPSは「相対的に不利」
11月29日、廃炉費用の託送料金上乗せに反対する消費者団体や新電力、国会議員らが衆院議員会館で集会を開催。立命館大学の大島堅一教授は「(託送料金への上乗せは)債務超過に陥った東電の救済策で、電力自由化の趣旨に反する」と述べた。
その上で大島氏は東電原発事故の賠償・廃炉費用について、託送料金への上乗せではなく税とすることを提案。「託送料金への上乗せでは費用の内訳が見えなくなるが、税とすることで国民に明らかとなる」と説いた。
 
自然エネルギー供給を主体とするPPSは、託送料金への上乗せに危機感を募らせる。環境NGOなどでつくる「パワーシフト・キャンペーン」は24日、新電力へのアンケート結果を公表。回答した29社中25社が自然エネルギー供給を重視し、内9割が託送料金への上乗せは「適切でない」と答えた。
その理由を尋ねると、「原発電源の利用を望まない需要家も費用負担することになる」「原発の恩恵は皆無なのに負担を強いられる」などの意見が挙がった。
 
また、消費者組織の日本生協連も「原子力発電を行う事業者が廃炉費用を売電価格に反映させるべき。(託送料金への上乗せは)原発以外の電気を利用したいと要望する消費者の理解を得られるとは思えない」と不満を訴える。
パワーシフト・キャンペーンの吉田明子氏は「(上乗せは)原子力という特定の電源の保護であり、自然エネルギー重視の新電力は相対的に不利になる」と話している。
 
 
【大前研一のニュース時評】
廃炉費用拡大で原発輸出に“逆風”安倍政権には痛手
夕刊フジ 2016年12月3日
 経済産業省は、東京電力福島第1原子力発電所で起きた事故の賠償や廃炉費用の合計額を20兆円超になると試算した。賠償対象件数の拡大や除染費用の増加などで、これまで想定してきた11兆円の約2倍になった。
 経産省は事故処理費用の一部を電気料金に上乗せし、新電力にも負担を求める方針だ。国民1人あたり20万円、4人家族なら80万円に相当する負担増だ。何年間で取り返すのか明らかになっていないが、巨大な出費となることは間違いない。
 
 「3・11」の直後、私は「補償だけで10兆円はいくのではないか」と主張したが、国も東電もそのあたりを甘く考えていた。新たな試算では、賠償は従来想定の5兆4000億円から8兆円に増える。
 また、除染も帰還困難区域など対象が拡大しただけでなく、考えられないレベルのことを要求されて、めったやたらとカネがかかり、当初の2兆5000億円から約5兆円に増大した。最初からポリシーをきちんと決めていれば、こんなにかからずに済んだはず。10ミリシーベルトに設定したのは明らかに当時の民主党(現民進党)政権の判断ミスだ。
 さらに、原子炉建屋下に流れ込む地下水を抑制したり、放射能を含んだ汚染水をタンクに貯めなくてはいけない。2兆円を想定した廃炉や汚染水対策費用も、数兆円規模で増えている。
 ということで、福島第1原発は歴史に残るような高額な廃炉費用になってしまった。原発1基あたりの建設費は約5000億円。その一方で、廃炉には福島第1原発1-4号機の4基で20兆円以上もかかる。とてつもない費用だ。
 
 こんな数字を聞くと、普通の国ではやはり建設を躊躇するのではないか。ベトナム政府は先月22日、同国南部の原子力発電所建設計画の中止を決めたが、その気持ちもわからなくはない。同国の原発は経済成長に必要な電力インフラの大型事業で、日本とロシアが受注して2028年に稼働予定だったが、資金不足や計画を主導したグエン・タン・ズン前首相の引退などに加え、福島第1原発事故の廃炉の問題も影響したようだ。
 
 もともとベトナムは、近隣国との自由貿易協定(FTA)による関税収入の減少や公的債務の拡大で財政状況が急速に悪化していた。また、原発の建設費用も、当初見込んでいた約1兆円から3兆円以上に膨らむと試算した。
 この3兆円という建設費用、私は少し大きすぎて疑問があるのだが、いずれにしても安倍晋三首相とベトナムのトップが正式にサインまでしたプロジェクトが白紙撤回されたわけだ。インフラ輸出を「成長戦略の柱」に掲げて官民一体で推進してきた安倍政権にとって、この原発輸出の頓挫は痛い。
 
 日本で原発が造れなくなったので海外に活路を見いだしたわけだが、バルト三国の一角、リトアニアで行われた日本製の原発建設に信を問う国民投票では60%以上が反対するなど、原発輸出は完全に逆風となっている。
 オシャカになった原子炉の廃炉費用の拡大は、いろいろな面で非常に高くついているわけだ。

04- 玄海原発 再稼働反対署名

福岡市民、脱原発を訴え 山口知事へ署名呼び掛け
佐賀新聞 2016年12月03日
 脱原発を訴えている福岡県の市民団体が2日、福岡市内で街頭活動し、玄海原発(東松浦郡玄海町)の再稼働に同意しないよう山口祥義佐賀県知事に求める署名を呼び掛けた。玄海3号機でプルサーマル運転が始まった日から7年の節目で、九州電力の瓜生道明社長と山口知事、岸本英雄玄海町長宛てに原発事業からの撤退と玄海3、4号機の再稼働中止を求める要請書も提出した。
 
 原発の立地自治体以外からも不安の声を届けようと、九州、中国地方の61団体が1万人以上を目標に署名を呼び掛けている。発起人で「戦争と原発のない社会を目指す福岡市民の会」代表の工藤逸男さん(63)は「福岡市民も原発の電気を使う一方、事故の被害にも遭う当事者。再稼働は佐賀だけで決められる問題ではない」と強調した。署名は来年の2月県議会前に提出する。
 
 署名に応じた福岡市の自営業男性(53)は「規制委が胸を張って安全と言えない原発はなくすべき。再稼働は多数決で決められる問題ではなく、たとえ少数でも不安の声に耳を傾けてほしい」と話した。
 要請書は、福岡市民の会や「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」など佐賀、福岡の9団体が福岡市の九電本店と佐賀県庁、玄海町役場を訪れて担当者に手渡した。
 
 また、伊万里市在住の「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告でつくる「原発ゼロ伊万里市民の会」は同日、塚部芳和市長に対し玄海原発の再稼働に反対の声を上げ続け、山口祥義知事が再稼働に同意しないよう働き掛けることなどを求める要望書を提出した。九州玄海訴訟の原告団には伊万里市民約80人が加わっており、1月29日に伊万里市民図書館で開くシンポジウムでは原告以外の賛同者も募る。

2016年12月3日土曜日

03- 原発事故避難いじめ問題 新潟・群馬・東京でも 教師も

 新潟市でも、原発事故で福島県から家族と一緒に自主避難した小4の男子児童が、同級生から名前に「菌」を付けて呼ばれたり、他の児童からボールを投げつけられたり、「近くを通るな」というそぶりをされたりするなどのいじめを受けていたことが分かりました。
 生徒は6月に続いて11月17日にも担任に相談しましたが、その担任からも今度は22日に名前に「菌」を付けて呼ばれて、児童はショックを受けて24日から学校を欠席しています。両親から学校に連絡があって明らかになりました。
 また東京都内と群馬県でも同じようないじめが起きていたことが分かりました。
 先ずは実態を明らかにすることが事態解決への第一歩です。各府県での厳密な調査が望まれます。
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新潟の小学校 担任、原発避難児を「菌」 いじめ相談後に発言
東京新聞 2016年12月2日 
 東京電力福島第一原発事故で、福島県から新潟市に家族と自主避難している小学四年の男子児童が、担任の四十代男性教諭から名前に「菌」を付けて呼ばれ、一週間以上学校を休んでいることが二日、分かった。新潟市教育委員会が明らかにした。
 
 児童は夏休み前に、担任に「同級生から名前に『菌』を付けて呼ばれているのが嫌だ」という趣旨の相談をしていた。今回の問題の前の十一月上旬に、横浜市に自主避難した中学一年の男子生徒が名前に「菌」を付けて呼ばれるなどのいじめを受けていたことが明らかになっている。
 市教委によると、児童は十一月二十二日に担任から教室で連絡帳を渡された際、名前に「菌」を付けて呼ばれた。児童は二十四日から学校を欠席している。二十二日は早朝に、福島県沖を震源とする最大震度5弱の地震が発生していた。
 
 十七日にも児童は担任に「同級生に嫌なことをされる」と相談していた。二十四日当日に両親が学校に連絡。別の教諭らが二十九日、クラス全員に聞き取り調査をして確認した。市教委の担当者は「児童から相談があったにもかかわらず、あまりにも不用意で不適切な発言だ」としている。
 
◆各地で避難者いじめ
 横浜市では先月、福島県から自主避難している中学一年の男子生徒が、市立小学校時代に避難者であることを理由にいじめを受けていたことが判明。両親によると、生徒は「菌」「放射能」と呼ばれたり、「賠償金をもらっているだろう」と言いがかりをつけられてゲームの遊興費など多額のお金を支払わされたりしたこともあったという。
 市教委の第三者委員会は、学校側の対応を「積極的に対応する姿勢がうかがえない」「教育の放棄に等しい」などと厳しく批判。市教育長は陳謝に追い込まれた。
 東京都内でも、福島県から自主避難している複数の母親が取材に応じ、子どもが同様のいじめ被害に遭ったことを明らかにした。一方、都教委は横浜市のいじめ問題を受け、被災した子どもの家庭への聞き取り調査などいじめ対策を徹底するよう、区市町村教委や都立高校に通知をした。
 
 
原発事故避難の子どもへのいじめ 群馬でも1件確認
NHK NEWS WEB 2016年12月2日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で横浜市に自主避難した生徒がいじめを受けていた問題を受けて、群馬県教育委員会が県内に避難している児童や生徒を対象に調査を行ったところ、子どもが震災で避難していることを理由に悪口を言われたというケースが1件あり、「いじめがあった」として、保護者にいきさつを説明しました。
 
群馬県教育委員会は、横浜市で起きたいじめを受けて、先月、福島、宮城、岩手の3県から群馬に避難してきている公立の小中学校と高校の児童と生徒合わせて199人を対象に、今年度、いじめを受けたことがあるかや、不登校になっていないかを緊急に調査しました。
その結果、子どもが震災で避難していることを理由に悪口を言われたというケースが1件確認され、教育委員会は「いじめがあった」として、保護者にいきさつを説明しました。
 
教育委員会は、子どもに配慮して、住んでいる自治体や学校名、性別などを明らかにしていませんが、この子どもは同級生から震災に関わる悪口を言われ、近くにいた別の同級生が注意したということです。
その後、悪口はなくなり、現在子どもは登校しているということです。
群馬県教育委員会は、震災で避難した児童や生徒について、最大限の配慮と支援に努めるよう、県内の各教育委員会などに通知することにしています。
 
 
横浜市教委、両親に初めて謝罪…原発避難いじめ
読売新聞 2016年12月02日
 2011年の東京電力福島第一原発事故後に福島県から横浜市に避難した男子生徒(13)が、転校先の市立小学校でいじめを受けた問題で、同市教育委員会は1日、一連のいじめについて、生徒の両親に初めて謝罪したと発表した。
 また、両親からの要請を受け、いじめの具体的内容を明らかにしてこなかった方針を転換し、市議会などで公表することを明らかにした。
 市教委の伊東裕子担当部長らが市内で両親と面会し、「つらい思いをさせて申し訳なかった」などと謝罪した。市教委によると、両親は「どこに行っても、何をやっても解決してくれない無力感があった」と話したといい、伊東担当部長は記者会見で、「改めて申し訳なく思った」と述べた。
 両親は同日、コメントを発表。「なぜ教員や市教委が適切に対応しなかったのか、不明瞭な点が多い。徹底的な検証を」と訴えた。

2016年12月2日金曜日

川内原発1号機 再稼働 三反園知事容認

川内原発1号機、8日にも再稼働 鹿児島知事が容認
日経新聞 2016年12月1日
 定期検査で停止中の九州電力川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が8日にも再稼働する見通しとなった。同県の三反園訓知事が1日の県議会で「私に原発を稼働させるか稼働させないかの権限はない」と答弁し、事実上、容認する考えを示した。
 
 同1号機は10月、新規制基準導入後で初めての定期検査に入った。定期検査後の再稼働には改めての地元同意は不要だが、同知事は川内原発の即時停止を九電に2度要請しており、予定通り再稼働できるか注目されていた。
 三反園知事は同原発の安全性の確認や避難計画の検証などにあたる「原子力問題検討委員会」の設置をめざしている。検討委の見解を踏まえ、知事は周辺住民らの安全確保に向けた追加の取り組みを改めて九電に求める可能性はある。
 
 同知事は8月と9月に、九電に川内原発の即時停止を要請した。九電は停止に応じなかったが、熊本地震の影響を調べる特別点検を実施し、自治体の避難計画の支援体制強化も約束した。

02- 原発事故避難いじめ問題

原発事故避難でいじめ 両親が学校の対応など調査要望
NHK NEWS WEB 2016年12月1日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県から横浜市に自主避難してきた生徒がいじめを受けていた問題で、1日、横浜市教育委員会の担当者が生徒の両親と面会しました。この中で両親は、改めて行われる検証で、学校や教育委員会の対応が適切だったのか、重点的に調べてほしいと要望しました。
 
この問題は、原発事故で横浜市に自主避難してきた現在中学1年の男子生徒が、転校してきた小学校でいじめを受けていたもので、横浜市教育委員会は近く、当時の小学校の校長から聞き取りを行うなど、検証を始めることにしています。
横浜市教育委員会は1日夜、会見を開き、1日に教育委員会の担当者が生徒の両親と面会したことを明らかにしました。この中で、教育委員会の担当者は「つらい思いをさせたのは申し訳なかった」と謝罪したということです。
 
これに対し生徒の両親は、教育委員会の検証の中で、重点的に調べてほしい内容を要望したということです。具体的には、いじめを見逃さないための教員の姿勢が適切だったかや、何度も訴えたのにいじめだとは認めなかった学校や教育委員会の当時の対応、それに、いじめの定義をどのように理解していたのかなどとなっています。
面会した横浜市教育委員会の伊東裕子担当部長は「両親からの要望をもとにしっかりと検証したい」と話していました。

2016年12月1日木曜日

新たな高速増殖炉計画は核武装につながるもの

 政府は高速増殖炉「もんじゅ」を廃炉にすることにし、今後30年をかけて廃炉作業を行うとともに、最初の10年間は廃炉作業に並行して高速炉の安全性を高める技術の研究を行う方針を固め、今月中に「高速炉開発会議」がまとめる報告書にそれらを盛り込む方針だということです。
 
 要するに「もんじゅ」はさすがに継続はできないものの、液体ナトリウムを冷却材とする高速炉の研究は止めないということです。当面はフランスが進めている高速炉「アストリッド」の共同研究(フランスからは費用総額5700億円の半額の負担を要求されています)に合流しますが、それは一時的な避難であって、いずれは日本独自の高速炉の運転を想定していると思われます。
 
 政府が完成の見込みのない高速増殖炉(もんじゅ)の開発にこだわったのは、高速炉であれば純度90%以上のプルトニウムが得られる(通常の原子炉では純度70%程度で核兵器に利用できない)からで、その技術を持つことは「核兵器を何時でも作れる」潜在能力の保障になるからです。
 因みに日本は非核3原則を謳う一方で、国会の答弁でも明らかなように、「自衛のための戦力は憲法が認めている。その範囲であるなら、核兵器であろうと通常兵器であろうと、それを持つことは憲法は禁じていない」、というのを政府の一貫した公式見解としています。
 
 今月の17日から19日にかけて、櫻井よしこ氏が理事長を務めている「国家基本問題研究所」(国基研)が、読売、朝日、日経、産経の全国4紙に、「もんじゅ の活用こそ日本の道です」、「日本独自の技術で打ち立てた高速増殖炉完成を目指すべきです」などとする意見広告を掲載しました。
 極右の組織が大金を投じてそんな意見広告を出す目的は、「核兵器を持てる潜在能力を保持する」ことにあるのは明白です。液体ナトリウムの危険性と言い、ますます高速炉は有害無益というしかありません。
 
 LITERAの記事を紹介します。
 読売新聞の記事:「もんじゅ、10年間は技術研究利用…解体と並行」も併せて紹介します。
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もんじゅ廃炉は目くらまし、安倍政権が新たな高速増殖炉計画! 
背後に櫻井よしこら右派の核武装圧力が
LITERA 2016.11.30.
 もんじゅ解体はやはり、目くらましにすぎなかったらしい。安倍政権が福井県の高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉と並行して、高速増殖炉に関する技術研究を今後10年間は継続する方針を固めたことを昨日、 “政権の機関紙” 読売新聞が報じた。世耕弘成経産相が議長を務める政府の「高速炉開発会議」で、近くこの指針が示されるという。
 
 核燃料サイクル構想のもと、 “夢の原子炉” として約20年前に試験運転を開始した高速増殖炉もんじゅだが、そもそも、高速増殖炉は通常の軽水炉よりも核分裂を制御することが難しく、原発容認派の専門家の間でさえ、「核暴走や爆発の危険性が高く、開発を見送るべきだ」との慎重論が強いものだ。一歩間違えれば、北半球が壊滅状態になるとの指摘もある。
 しかも、もんじゅは1兆円以上の国費を費やし、年間約200億円の維持費を垂れ流したあげく、その大爆発を誘発する可能性のあるナトリウム漏れや燃料棒交換用装置を原子炉内に落下させるといった重大事故を起こしてきた。
 
 それでも政府はその危険性をなかなか認めようとしなかったが、福島第一原発事故の発生を受けて、2013年に原子力規制委員会が事実上の運転禁止を命令。政府もようやくもんじゅの廃炉方針を固めたと伝えられていた。
 ところが、安倍政権はその一方で、この危険な高速炉開発に新たに着手するというのだ。正気の沙汰とは思えないが、どうやら、安倍政権には核燃料サイクル構想をどうしても中止できない理由がある。そういうことらしい。
 
 その一つに “原子力ムラ” の利権構造があることは言をまたない。周知のとおり、目下、安倍政権と経産相は原発の再稼働と海外輸出にやっきとなっている。が、この核燃料サイクル構想については、もうひとつ、安倍首相をはじめとした右派の “悲願” ともいえる野望が内に秘められている。
 実際、今月の17日から19日にかけて、その “右派の野望” があらわとなった意見広告が、読売、朝日、日経、産経の全国4紙に掲載された。広告では、 “右派の女神” こと櫻井よしこが微笑みながらこう主張している。
 
 〈「もんじゅ」の活用こそ日本の道です〉
 〈もんじゅ廃炉ではなく、日本独自の技術で打ち立てた高速増殖炉完成を目指すべきです〉
 〈高速増殖炉を巡る日本国内の議論は、誤った方向に行こうとしているのではないでしょうか。私たちは「もんじゅ」の開発継続を求めます〉
 
 この “もんじゅ礼賛” の意見広告を出稿したのは、櫻井が理事長を務める「国家基本問題研究所」(国基研)なる社団法人だ。国基研は、櫻井を代表として2007年に設立された民間シンクタンクで、役員には、日本会議会長の田久保忠衛(副理事長)や、「新しい歴史教科書をつくる会」会長の高池勝彦(同)、政治評論家の屋山太郎(理事)など、産経の「正論」に登場する保守系言論人がズラリと並ぶ。また、大原康男、百地章、西修、高橋史朗など日本会議系の “安倍政権御用学者” が顔を揃えているのも特徴だ。
 この顔ぶれからも想像できるように、その活動や主張は極右そのもの。「国防軍」創設を謳う憲法改正や、慰安婦や南京事件否定などの歴史修正、そしてなにより見逃せないのが、日本の核武装論だ。
 
 07年、櫻井は「週刊新潮」(新潮社)の連載コラムで国基研設立の趣旨を語るとともに、北朝鮮の核問題に触れ「核を保有した北朝鮮の脅威から日本を守るためには、同等の力を持つべきだとの議論も当然出てくるだろう」と述べている。事実、国基研のHPに掲載されている「今週の直言」のタイトルにも、こんな言葉が勇ましく踊る。
 
 〈北朝鮮の核に対し自前の抑止力を検討せよ〉
 〈核のオプションは放棄できない〉
 〈「日本にも核オプションあり」と言ったらよい〉
 
 もはや、言うまでもないだろう。この極右シンクタンクが全国4紙に “もんじゅ存置” を求める広告を出した目的が、日本の核武装と地続きであることは自明だ。
 そもそも、歴代自民党政権が、原発と高速増殖炉及び再処理施設にこだわってきた理由のひとつは、潜在的な核開発能力を保持しておくために他ならない。
 
 核燃料サイクルは原発から出る使用済みウラン燃料を再処理し、もう一度原子力発電の燃料として使うという構想だが、原子炉内でウランに中性子を当てることでプルトニウムが生成される。そして、もんじゅの炉心では、プルトニウムの核分裂で「高速」の中性子が飛びし、さらなる核分裂とともにウランのプルトニウム変換が行われ、新たなプルトニウムが「増殖」されるという仕組みになっている。これが高速増殖炉という名の由来だ。
 周知のとおり、プルトニウムは原子爆弾の材料であるが、一般的な原子炉(軽水炉)でつくられるプルトニウムは純度が約60%と低く、核兵器の製造に適さない。一方のもんじゅは、こうした低純度のプルトニウムを燃料として高純度のプルトニウムを増産する。その純度は実に90%以上で、核兵器転用には十分すぎる数字だ。ようするに、もんじゅは、原発用プルトニウムを核兵器用に変換・増殖させる “フィルタリング装置” なのだ。
 
 このように、日本の原発と核燃料サイクル計画は、核兵器の製造能力と密接に結びついている。「飽くまでも核保有の選択肢をカードとして持つべきである」(「諸君!」03年8月号/文藝春秋)とする櫻井率いる国基研にとって、原爆の材料を生み出してくれる(と信じて疑わない)もんじゅは、まさに “夢の原子炉” というわけだ。
 
 そして、この極右シンクタンクによる「日本を核保有国にしたい」という野望は、繰り返すが、戦後自民党政権の政策とぴたりと一致している。たとえば1969年には、外務省内で「当面核保有はしないが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャル(潜在能力)は常に保持する」との方針が打ち出されている(太田昌克『日本はなぜ核を手放せないのか』岩波書店)。この方針は、現在の自民党にも受け継がれており、事実、東日本大震災での未曾有の原発事故直後の2011年ですら、当時自民党政調会長だった石破茂が『報道ステーション』(テレビ朝日)でこのように述べている。
「日本以外のすべての国は、原子力政策というのは核政策とセットなわけですよね。ですけども、日本は核を持つべきだとは私はおもっておりません。しかし同時に、日本は(核兵器を)つくろうと思えばいつでもつくれる。1年以内につくれると。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう。それを本当に放棄していいですか、ということはもっと突き詰めた議論が必要だと思うし、私は放棄すべきだとは思わない」
 
 なにより安倍晋三自身、潜在的な核製造能力どころか、核武装に前のめりだ。安倍は官房副長官時代の2002年、早稲田大学で開かれた田原総一朗との学生向けシンポジウムで、「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」と発言。06年にも「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記している。また今年8月15日、安倍首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」と伝え、オバマの核軍縮政策に反対していた事実を米ワシントン・ポストが報じたのは記憶に新しい。
 
 今月21日早朝に福島県沖で発生したマグニチュード7.4の地震で、福島第2原発電3号機の使用済み核燃料プールの冷却装置が停止したとの一報が入ったときには、誰もがあの3.11原発事故を想起しただろう。
 
 極右シンクタンクが叫びたてるもんじゅの存置、そして安倍政権の原発再稼働政策と核燃料サイクル推進。「核の平和利用」というのがいかに幻想にすぎないか、わたしたちは被曝国で生活する者としてしかと自覚するべきだ。(伊勢崎馨)
 
 
もんじゅ、10年間は技術研究利用…解体と並行
読売新聞 2016年11月29日
 政府は高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、今後約10年間は廃炉に向けた解体作業と並行して、高速炉の安全性を高める技術の研究を継続する方針を固めた。
 次世代炉の開発に向けて、ノウハウを蓄える狙いがある。経済産業省と文部科学省が30日の「高速炉開発会議」で示す。廃炉作業は約30年後に完了する計画で、同会議が来月に取りまとめる報告書にこれらの計画を盛り込む方針だ。
 
 政府は年内に、もんじゅを廃炉にする方針を決めた上で、来年度にも解体に向けた作業に着手する見通し。約10年間は並行して、原子炉を冷却する液体ナトリウムを取り扱う技術など、安全技術の研究を続ける。
 液体ナトリウムは、空気に触れると発火する性質があり、取り扱いには高度な技術が必要だ。もんじゅは1995年にナトリウム漏れで火災事故を起こした。

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