福島原発事故を巡る強制起訴裁判で、検察官役として責任を追及する弁護士の一人石田省三郎さんは写真家の顔も持っています。強制起訴の検察官役となった15年の秋、第1原発視察で、事故から4年が経過しても手つかずのままの原発周辺の光景に衝撃を受けました。「公務を離れて個人的に原子力事故の一断面として記録しなければと感じた」石田さんは16年当時、竜田駅(楢葉町)から原ノ町駅(南相馬市)間の国道6号を縦断していた代行バスに乗車し続け、人が立ち入ることのできない帰還困難区域などを中心に季節による変化などを1年間撮り続け、撮影した写真は数千点を数えました。「写真を通じて、目には見えない放射能を考えるきっかけになれば」と話します。
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原発事故の「不条理」写真集に、石田省三郎弁護士 被災地を撮影
福島民友 2021年12月08日
東京電力福島第1原発事故を巡る強制起訴裁判で、検察官役として責任を追及する弁護士の一人が石田省三郎さん(75)=東京・石田法律事務所=だ。これまで数々の大事件で弁護を担当したベテランだが、実は写真家の顔も持つ。3年半前には、車窓から原発事故の被災地を写した写真集を発行した。「原子力の事故の不条理を記録したかった」と思いを語る。
石田さんは、法曹界で広く知られる。弁護士としてロッキード事件、リクルート事件、東電女性殺害事件など数々の刑事事件で弁護を担当してきた。本県の被災地を訪れたのは、強制起訴の検察官役となった2015(平成27)年秋だった。第1原発視察で、事故から4年が経過しても手つかずのままの原発周辺の光景に衝撃を受けた。
当時、京都造形芸術大の通信教育課程で写真を学んでいた。「公務を離れて個人的に原子力事故の一断面として記録しなければと感じた」と石田さん。原発事故から5年が経過した16年当時、竜田駅(楢葉町)から原ノ町駅(南相馬市)間の国道6号を縦断していた代行バスに乗車し続けた。人が立ち入ることのできない帰還困難区域などを中心に、季節による変化などを撮影した。変化を捉えられるよう同じ構図を作ることに苦労した。撮影期間は1年。撮影した写真は数千点を数えた。
写真集には1メートル以上にも伸びきって枯れたセイタカアワダチソウなど、雑草が田畑を覆って朝日を浴びる光景や、広大な敷地に詰め込まれた汚染土壌を保管したフレコンバッグ、手つかずの住宅の様子など54点が収められている。石田さんは「写真を通じて、目には見えない放射能を考えるきっかけになれば」と話す。
写真集は3000円(税別)で、IG Photo Gallery(東京都)や、アマゾンなどオンラインストアで販売している