柏崎刈羽原発6号機大物搬入建屋の杭8本のうち1本の上部で鉄筋が露出し破断していた件で、何故大物搬入建屋の杭の破損が見つかったのか不思議でしたが、新規制基準によって建て替えが必要になり、その際に杭を打ち直すため掘り返したためでした。7月頃のことと思われます。杭の(少なくとも)上部の損傷の有無を検査するには、構造物底版の下の土砂を一旦除去しないと出来ないので、通常は行っていません。
杭は、地耐力が上部構造物の荷重に対して不十分な場合に、その垂直荷重に耐えるように杭のサイズと本数を決めます。ところで大物搬入建屋の杭頭部の損傷は中越地震時の横揺れで起きたもので、同じ敷地の他の杭にも1本あたりほぼ同じ水平加速度が掛かったと考えられるので、少なくとも他の杭の損傷の可能性を先ずは机上で検討する必要があると思います。
東電は8本中の1本が損傷したことを認めていますが、他の杭は抜き取って調査をしないで廃棄したということです。それについて識者は、本来は他の7本の杭も調べるべきだったと指摘しています。
東電は、杭の破損原因については検討中ということでそれ以上の情報を出していません。 桜井雅浩柏崎市長は1日の会見で「他の場所の状況も含めて詳細な内部調査が必要だ」と述べました。
他の杭は大丈夫なのかについては、杭の総数は約1800本で検査はしていないことを明らかにしました。実際、調査するのは不可能と思われます。
そうであれば、なおさら杭の破損の原因を明らかにして、他の杭は破損していないことを少なくとも計算上証明する必要がありますが、5ヶ月くらい経ちますがまだ埒があきません。勿論、ぐずぐずしていて済まされる問題ではありません。
普通は、杭頭と建造物の底版とは強固に一体化されているのでズレ(破損)は生じない筈です。それがここで起きたことに、もしも「豆腐の地盤」と称される特殊な地盤が関係しているのであれば、もはや原発の再稼働はあり得ません。
新潟日報の記事を紹介します。
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災害から学ばず 東電体質なお 柏崎刈羽原発くい問題 点検せず廃棄例も
新潟日報 2021/12/09
14年前の中越沖地震により損傷した可能性があるくいが6号機で見つかった東京電力柏崎刈羽原発。8日にはさらに、同地震後に一度も点検していないくいが多数存在することが明らかになった。中越沖地震は、原発が直下地震で被災した初めてのケースだったが、東電は一部の被災状況を確認しないまま放置していたことになる。識者からは「東電福島第1原発事故を経験してもなお、自然災害に学ぶ姿勢が甘いのでは」と批判の声が上がった。
くいは地中に打ち込み、構造物を下から支える。複数本打ち込むのが通例で、1本でも損傷すればバランスが崩れ、上ものの揺れ方が変わる可能性がある。
6号機の原子炉建屋に直結する「大物搬入建屋」でくいの損傷が見つかったことについて、東電の土木担当者は「建屋の傾斜などがないかどうかを定期的に調べているが、これまで確認されていない」と強調。くいは全部で8本あり、一部が損傷しても、上ものの安全性に問題はないとした。
ただ、くいの損傷を知った際の心境を尋ねると、「設計で通常考えられていることと違うことが起きており、どうしたのかと思った」と、担当者にとっても驚きだったことを認めた。
他にも未点検のくいが多数あると認めた東電だが、今後の点検方針は明確ではない。県技術委員会委員で耐震工学が専門の田村良一新潟工科大教授は「本来は他のくいもちゃんと調べるべきだと思う。東電が、地中でくいが折れていても重要施設には影響しないと主張するなら、それを証明する説明が必要だ」と語る。
桜井雅浩柏崎市長も1日の会見で「他の場所の状況も含めて詳細な内部調査が必要だ」と述べた。
くいの被災状況の点検を軽視するかのような東電の姿勢は、建屋建て替えの際の対応に現れている。
6号機でくいの損傷が見つかった大物搬入建屋は、4、7号機にもある。
特に、東電が再稼働を目指す7号機の同建屋は耐震クラスの引き上げに伴い、昨年12月までに建て替えられ、くいは新しく打ち直された。しかし東電によると、建て替え前のくいは損傷の有無などを調べないまま破壊し、廃棄したという。
県技術委委員の豊島剛志新潟大教授=構造地質学=は「くいには、科学的に貴重な情報や痕跡が残っていたはず。場合によっては、地震に耐えられるという証拠にもなったかもしれないが、東電は(廃棄で)それをみすみす手放したことになる」と驚く。「その辺りの対応が企業体質というか、災害の経験に学ぶ姿勢が甘いように思う」と語った。
◎不安解消へ対応急務
東京電力柏崎刈羽原発で多く残されていることが分かった未点検のくいについて、今後は東電がどこまで点検を行うかが注目点となる。今年7月まで未点検だった6号機大物搬入建屋のくいの損傷が明らかになったことで、他にも地中で損傷しているくいがある可能性が否定できないためだ。
6、7号機は2017年12月に原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査に合格。7号機は全ての審査を終えている。ただ、これはくいに損傷がない「健全な状態」を前提に耐震強度などを計算した結果に対する評価のはずだ。
原子炉建屋などの重要施設は地下の岩盤に直接設置されており、未点検のくいを持つ構造物とは造りが異なる。とはいえ、隣接する構造物のくいに損傷があれば、地震の揺れの伝わり方が変わる可能性があり、合格した東電の計算結果と実態との間でかい離が生じる恐れがある。
くいの全数調査が必要かどうかは不明だが、東電には住民の不安を解消する十分な対応が求められる。
6号機大物搬入建屋のくいの損傷について、原子力規制委員会では中越沖地震の揺れが原因との見方が出ている。だとすれば、この建屋の耐震設計が妥当だったのか、あるいは施工不良があったのではないかといった疑念も生じる。元原子力規制庁職員の山形浩史・長岡技術科学大教授は「6号機のくいの原因調査によって、今後必要な対応が変わってくる」と指摘した。
柏崎刈羽原発 未点検くい1800本超 重要施設に影響の恐れも
新潟日報 2021/12/09
東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)が2007年の中越沖地震の後、同原発で一度も被災状況を点検していない建物のくいが計1800本以上あることが8日、東電への取材で分かった。東電はこれまで、同原発構内の全施設で中越沖地震の影響と安全性を確認したとしてきたが、被災状況の確認が不十分である可能性が出てきた。
東電は11月、柏崎刈羽原発6号機の原子炉建屋に直結している「大物搬入建屋」のくいで鉄筋の破断などが見つかったと公表。これを受けた新潟日報社の取材に、東電が回答した。
今回、未点検のくいがあることが分かったのは、主排気筒や焼却炉建屋など、建物下にくいを打ち込んで支える構造物。損傷の見つかった6号機大物搬入建屋のくいも、今年7月に被災状況の確認とは別の目的で調査するまで、点検は行われていなかった。
多くは新規制基準が求める耐震クラスが低い施設だが、原子炉建屋やタービン建屋などの重要施設に直結していたり、近接していたりして、倒壊した場合はこれらに影響を与えかねない施設もある。
中越沖地震の被災状況の調査について、東電は「構内の全施設を対象に、建物の変形や傾斜、沈下がないかは調べている」と強調。ただ、その調べ方については、くいの上の建物に傾斜などの異常が見られない限り、くい自体は点検しないという社内ルールに沿って行っていると説明した。6号機大物搬入建屋のくいも、上ものには異常がなく、結果的に地下での損傷に気付かなかった。
東電の土木担当者は「地中のくいを点検するには掘り返さねばならず、くいに期待される建物を支える機能が損なわれる」とし、未点検のくいが残ることはやむを得ないとした。
今後、未点検のくいの損傷も調べるかどうかについては「まずは6号機のくいの損傷原因を調べる」と答えるにとどまった。
<中越沖地震> 柏崎市沖を震源に2007年7月16日に発生し、最大震度6強を観測。柏崎刈羽原発では、地盤沈下により3号機変圧器で火災が発生。緊急時対策室が使えなくなったほか、7号機主排気筒から微量の放射性物質が外部に放出されるトラブルも起きた。地震に伴う点検・復旧のため全7基が停止。09年に6、7号機、10年に1、5号機が運転再開したが、11年3月の東電福島第1原発事故の発生を受け、12年3月から全基が停止している。