2021年12月7日火曜日

07- 薄れる避難住民の帰還意欲 福島・双葉町

 住民避難が続く福島県双葉町の本年度の町政懇談会1026日のいわき市を皮切りに、東京都内など県内外11カ所で12回開かれ、延べ281人が参加しました。避難先でそれぞれ生活基盤を確立していることもあり、住民の関心は家屋解体や土地の処分などに集まりました。懇談会11月下旬で終わりました。

 埼玉会場で伊沢町長「町が存続できるかどうかの危機的な状況にある」と強い口調で訴えましたが、実際には住民の帰還意欲薄れています。
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薄れる避難住民の帰還意欲 福島・双葉、町がつなぎ留めに苦心
                            河北新報 2021/12/5
 東京電力福島第1原発事故で住民避難が続く福島県双葉町の本年度の町政懇談会が11月下旬で終わった。避難先の県内外でそれぞれ生活基盤を確立していることもあり、住民の関心は家屋解体や土地の処分などに集まった。原発事故から10年半以上が経過し、参加者は減少傾向にある。住民の帰還意欲が薄れる中、町はつなぎ留めに苦心する。(いわき支局・加藤健太郎)
 懇談会は10月26日のいわき市を皮切りに、仙台市、埼玉県加須市、東京都内など県内外11カ所で12回開かれ、延べ281人が参加した。来年1月に実施予定の準備宿泊の説明が主な目的だったが、準備宿泊に関する質疑はほとんどなかった
 参加者からは、町に残した家屋や土地についての質問が目立った。「家を解体して更地にした。売るしかないと考えているが町づくりの計画はあるのか」(仙台会場)、「強制的に古里を奪われたのに(避難指示解除後に)課税されるのは納得できない」(埼玉会場)といった疑問、指摘があった。
 特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた帰還困難区域の対応に関しても焦りや不満の声が相次いだ。いわき会場では拠点外に自宅がある高齢の男性が「自分の目が見えるうちに家をきれいにしたい。早くバリケードを撤去してほしい」と訴えた。
 懇談会の参加者数の推移はグラフの通りで、漸減傾向にある。避難先の自治組織関係者は「10年以上がたち、戻らないと決めた人は多い。そういう人はわざわざ会場に足を運ばない」と話し、帰還や古里に対する関心の低下を懸念した。

■「二地域居住を選択肢の一つに」
 来年6月以降の復興拠点の避難指示解除を目指す町側の危機感は大きい。仙台会場で伊沢史朗町長は「避難先で家を建てた人にも賃貸住宅は提供できる。二地域居住を選択肢の一つにしてほしい。迷っている人は検討してもらいたい」と参加者に語り掛けた。
 復興拠点外の帰還困難区域を巡っては、政府が8月に「希望者の2020年代の帰還」の方針をまとめた。町は年内にも町内の行政区単位で住民の帰還意向の確認を始める方針を明らかにし、いわき会場では「戻るという意思を表明してもらうことが何よりも大事だ」と繰り返した。
 埼玉会場で「町が存続できるかどうかの危機的な状況にある。行政機能がなくなれば地図の上から町が消える」と強い口調で語った伊沢町長。11月27日にいわき市で懇談会を終えた後の取材には「皆さんの帰還に関してのハードルは高いと感じた」と述べ、町民に対する情報発信を強化する考えを示した。