復興公営住宅では、住民の絆を築きにくく、特に1人暮らしの高齢者を中心に『さみしい』という訴えが増えています。ようやく新型コロナが落ち着いたのを機に、各地の社会福祉協議会がコロナの感染防止策を講じた「見守り活動」の展開を図っています。
福島県社協は、コロナで改めて浮き彫りとなった孤立の問題に向き合うため、周辺地域との交流を促す避難者支援コーディネーターの人員増を図る方針です。
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復興住宅、コロナ禍...孤立防げ 感染防止策講じ「見守り」奔走
福島民友 2021年12月07日
東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされた人が住む復興公営住宅で、高齢者世帯が孤立を深めている。新型コロナウイルス感染拡大により、サロンなどの交流活動が十分にできなくなったことが影響しており、現場からは「人のつながりが一層薄れてしまった」との声が上がる。生活意欲が薄れてしまった人もいるとされ、各地の社会福祉協議会が感染防止策を講じた「見守り活動」の展開を図っている。
「こんにちは、社会福祉協議会です」。南相馬市の復興公営住宅では、生活支援相談員による訪問活動が行われていた。間もなく、団地の一室からマスクを着けた女性が出てきた。「お元気ですか」「元気。今日はプールに行くの」「コロナで行けなかったですものね」「コロナは怖い。原発事故は避難すれば良かったけど、コロナからは逃げられない」と会話が続く。
だが、このような活動ができるようになったのは、新型コロナが落ち着いた最近のことだ。感染が猛威を振るっていた時、市社協は訪問活動を自粛した。電話連絡に加え、電気メーターの動きや車のあるなしで入居者の生活状況や安否を確認するしかなかった。社協の千尋淳子さん(51)は「顔を見ることができないのはとても心配だった」と語る。
社協の生活支援相談室長を務める黒木洋子さん(63)は「特に1人暮らしの高齢者を中心に『さみしい』という訴えが増えた」と当時の状況を振り返る。高齢者の中には、人との交流が減り、外出もできないことから認知症が進んだり、心身機能が衰えたりした人もいた。訴えに耳を傾ける「傾聴」の時間を増やし、入居者との心の交流を続けたという。
県社協が実施した聞き取りでは、南相馬市社協と同様の悩みが各社協から寄せられた。各社協は感染拡大しないよう、さまざまな工夫を凝らして見守り活動を続けた。南相馬市社協は、感染リスクを低くするため、屋外でできる活動を積極的に企画した。ラジオ体操のほか、団地周辺を散歩しながらごみを拾う「お散歩ラリー」などを始めた。
復興公営住宅では、住民の絆を築きにくいという課題が前から存在していた。県社協は、コロナで改めて浮き彫りとなった孤立の問題に向き合うため、周辺地域との交流を促す避難者支援コーディネーターの人員増を図る方針だ。県社協の担当者は「住民と地域をつなぐパイプとしての役割を果たし、集合住宅での生活をサポートしていきたい」と決意を新たにした。(副島湧人)