2013年6月29日土曜日

再生可能エネルギー発電量が原発の2倍に

 日本ではまだ掛け声だけで再生可能エネルギーによる発電はあまり進んでいませんが、世界規模ではその発電量は2016年に天然ガス火力発電を超え、石炭火力発電に次ぐ第二の電源になる見込みです。
 国際エネルギー機関(IEA)が28日までにまとめたところによると、発電量は約千億キロワット時に達し、原子力発電の倍になります

 それなのに日本であまり進まない背景には、かつては700社あまりもあって自由競争していた電力会社が、10電力の国策会社に統合され、送配電設備をそれぞれが独占していたり、「総括原価方式」によって莫大な利益が保障(コスト削減無用)されていることなどがあります。
 2016年に家庭電力会社を自由に選べるようになる「小売りの全面自由化」や、また2018~2020年をめどに電力会社の発電部門と送配電部門を分ける「発送電分離」などの改革を含んだ『電事法改正案』は、会期末のごたごたの中で廃案となってしまいました。これでは電力問題の前進は期待できません。大いに遅れることになるといわれています。

 以下に東京新聞の記事及び社説を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
再生可能エネ 発電量 原発の2倍
東京新聞 2013年6月28日
 再生可能エネルギーによる世界の発電量は、二〇一六年に天然ガス火力発電を超え、石炭火力発電に次ぐ第二の電源になるとの予測を、国際エネルギー機関(IEA)が二十八日までにまとめた。発電量は約六兆一千億キロワット時に達し、原子力発電の二倍になるという。
 クリーンなエネルギーを求める声の高まりやコストの低下によって、風力や太陽光発電が世界的に拡大しているため。IEAのファンデルフーフェン事務局長は「多くの再生可能エネルギーは経済的な誘導策がなくても普及するようになったが、さらに拡大し続けるには中長期的に安定した政策が必要だ」と訴えている。
 IEAによると、大規模水力発電を含む再生可能エネルギーによる一二年の発電量は四兆八千六百億キロワット時で、一一年に比べて8・2%増加。石油や石炭、ガスなど他の電源と比べて最も成長が著しく、一八年には一二年比で約40%増の六兆八千五百億キロワット時になると予測した。
 総発電量に占める割合は一一年の20%から、一八年には25%に上昇するとしている。水力を除いた風力、太陽光、バイオマス、地熱発電の合計で見た場合、一一年の4%から一八年には二倍の8%になるという。
 地域別では中国を中心とした新興国や発展途上国で増える見通しで、欧州や米国での伸びの鈍化を補うとしている。

 発電コストが高いという問題も克服しつつあり、既にブラジルやトルコ、ニュージーランドの陸上風力は化石燃料に比べて安い電源となった。
 また、太陽光発電を自家発電として使った場合、多くの国で電力会社から買う電気よりも安い手段になっているという。

 <再生可能エネルギー> 自然の現象を利用して繰り返しつくることができるエネルギーの総称。太陽光や太陽熱、風力、地熱、水力、バイオマスなどを使った発電や熱の供給が含まれる。化石燃料を燃やす火力発電やウランを燃料に使う原発とは異なり、資源に限りがない。核燃料のような危険性がなく、温室効果ガスの排出もごく少ない。建設により環境を損なう大規模なダムの水力は、再生可能エネルギーに分類しないこともある

【社説】 電力改革廃案 国民無視にも程がある
東京新聞 2013年6月28日
 参院本会議での安倍晋三首相に対する問責決議の可決で電気事業法改正案などが廃案に追い込まれた。電力業界に競争を促し、電気料金引き下げなどを目指す重要法案だ。国民無視もはなはだしい。
 来月の参院選をいかにして有利に運ぶか。与野党の駆け引きが、成立が見込まれていた電気事業法改正案や生活保護法改正案をはじめ、国民生活に直結する法案や条約などを廃案に追い込んだ。
 そもそも電事法改正案とは何か。家庭も電力会社を自由に選べるようにする「小売りの全面自由化」を二〇一六年に、電力会社の発電部門と送配電部門を分ける「発送電分離」を一八~二〇年をめどに実現する電力システムの改革が目的だ。
 先行して小売りが自由化されている大企業向けの多くは、東京電力など既存の事業者と独立系の特定規模電気事業者(PPS)との競争によって一キロワット時当たり十一円前後に下がったが、家庭向けなどの小口は二倍の約二十三円。利益の九割を小口が占めており、公正さを著しく欠いている。
 小口も自由化されれば原価に利潤を上乗せする総括原価方式が消滅し、PPSなどとの競争で値下げが期待できるようになる。
 その道筋は、衆参ねじれでも与野党間の隔たりは大きくない。暮らしに身近な法案でありながら、なぜ参院は廃案にしたのか。国民をないがしろにした政治の駆け引きに翻弄(ほんろう)されたと言うほかない。
 さらに見据えるべきは、今なお終わりが見えない東電福島第一原発の事故だ。この事故こそが電力事業に隠された不条理を表に引き出して電力改革を促した。そこから目をそらしてはならない。
 小売り自由化に加え、発送電分離も改革の目玉だ。電力業界による現在の発電と送配電の一体経営は地域独占の土台であり、風力や太陽光などの自然エネルギー参入を阻害していることは否めない。
 分離が実現すれば電力業界の既得権益に風穴があき、自然エネルギーなどの送配電網への公平な接続を通じて多様な電源の効率的活用が期待できる。
 それは国民の多くが求める脱原発への第一歩でもある。
 しかし、首相は民主党政権が表明した三〇年代の原発稼働ゼロを「非現実的」と一蹴し、再稼働や原発輸出に前のめりだ。参院選後の秋の臨時国会に改正案を再提出する方針だが、原発評価の決定的な違いを背景に電力改革を後退させることがないよう強く求める。