2013年11月3日日曜日

東電が分社化の方向

 自民党の総務会は31日、今後の東電の体制について
(1) 汚染水対策などの専門組織を設ける社内分社化
(2) 資本を切り離す完全分社化
(3) 独立行政法人化
などを例としてあげ、見直しを検討し早期に結論を得るよう東電に提言しました。
 それに呼応して、東電が、福島第1原発の事故対応を原子力部門から切り離し社内の別組織にする「社内分社化」の検討を始めたことが2日、明らかになりました。

 分社化は、新たに福島第1原発の廃炉や汚染水漏れ対策、被災者への賠償に関する業務を専門に行う別会社をつくり、それ以外の東電とに分けるというものです。東電本体に残る原子力部門は福島事故からは完全に切り離されるので、あとは柏崎刈羽原発の再起動に専念することになります。

 要するに東電の「お荷物」となっている福島原発事故処理を、この際体よく「東電本体」から切り離して身軽になろうということで、それによって東電は破綻から免れ、資産も賠償の担保から免れるので、銀行や株主の権益もそのまま保護されることになります。

 これと同じような分社化は、患者数が10万人にも及ぶといわれている水俣病を引き起こしたチッソ(株)で、2011年に行われました。
 それはいまもなお十分な補償を受けていない被害者たちの強い反対を押し切って強行されましたが、それでも事件後 約半世紀に渡ってチッソ(株)はそれなりにダメージを受けた後に行われたのでした。

 2日、琉球新報は「東電分社化 筋通らぬ道義なき救済だ」とする社説を掲げました。破綻させることが正道であると説いています。
 
 毎日新聞の記事も併せて紹介します。
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社説 東電分社化 筋通らぬ道義なき救済だ
琉球新報 2013年11月2日
 自民党は放射能汚染物質の中間貯蔵施設整備や除染に国費を投ずる一方、東京電力の関係部門分社化を検討するとの提言をまとめた。分社化はまさに東電救済だ。道理の通らぬ行為は許されない。むしろ東電の破綻処理を急ぐべきだ。
 原発事故の賠償と除染にはそれぞれ5兆円以上かかる見込みだ。中間貯蔵施設も1兆~2兆円を要する。廃炉・事故収束費も、汚染水問題の泥沼化でも分かるように、1兆円余との政府の試算で収まりそうもない。これほどの巨額の負担が不可能なのは事故直後から明らかだった。

 だが民主政権も自民政権も官僚も、事態に正面から向き合わず、いたずらに延命させてきた。在職中に火の粉が及ばぬように、という無責任体制の結果ではないか。
 延命した東電は私企業である以上、当然、経費節減を図る。安全対策や廃炉のための費用を節約した結果が今の汚染水問題であろう。
 本来ならすぐに破綻処理すべきだった。破綻させれば、年1兆円も支払っている銀行への返済や社債償還を事故対策に使える。過去と今の経営陣の退職金を回収し、活用されていない数百億円もの不動産などの資産も賠償に充てられる
 そうした原因者負担の原則を徹底した上でなら、国費投入に国民の理解も得られたはずだ。最も人・金の資源を集中投下して対策を取るべき初期に、その経費を節約してしまい、さらに被害を広げた。延命の罪深さが分かる。
 そもそも原発に、事故に対応できる巨額の保険など存在しない。最終処分場の経費も全く計上しない恐るべき無責任の集合体だった。

 後世へのツケ回しから利益を得ていたのは、独り東電の経営者や従業員だけではない。毎年配当を得ていた株主も、融資から利子収入を得ていた銀行もそうだ。こうしたステークホルダー(利害関係者)がまずは責任を負うのが資本主義では当然のルールだ。
 事故は天災ではない。専門家は地震や津波による原子炉損壊の危険を指摘していた。それを放置したことははっきりしている。明らかに人災だ。
 それなのに東電の経営者は罪に問われず、誰も処分を受けていない。当事者と利害関係者が何ら責任を取らないまま、私企業に巨額の税金を投じる。これほどまでに資本主義の原則に反する例はかつてない。恐るべきモラルハザード(倫理観の欠如)を憂慮する。


東京電力:社内分社化を検討…廃炉・汚染水対策
毎日新聞 2013年11月02日
 東京電力が、福島第1原発の廃炉や汚染水対策を原子力部門から切り離し、社内の別組織にする「社内分社化」の検討を始めたことが2日、明らかになった。分離後の原子力部門は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向けた作業に注力する。来春からの社内分社を目標に、年内にまとめる新しい総合特別事業計画(再建計画)に盛り込む方向で政府と調整を進めるが、政府・与党内には完全に東電とは別会社にする案などもあり、曲折も予想される。

 東電の構想では、社内分社する廃炉・汚染水対策を担う部門には、地下水に詳しい土木部門や、タンクの建設・管理の経験が豊富な火力発電部門からも人材を投入。トップには国内外を問わず、専門性の高い人材を探す方向だ。

 社内分社化を検討する背景には、汚染水対策に国費が投入されたのをきっかけに、政府・与党内で東電の組織再編をめぐる議論が高まっていることがある。政府・与党の福島復興加速化案では、社内分社化のほか、東電と別会社にする「完全分社化」、分社後に国が出資するなどして「独立行政法人化」する案が例示されている。東電は、完全な分社化には「人材確保に支障が出るほか、廃炉会社の士気が保てなくなる」(幹部)と慎重で、引き続き社内にとどめたい考えだ。

 また、東電が再稼働を目指している柏崎刈羽原発について、安全審査を担う原子力規制委員会が「廃炉作業と再稼働に向けた作業の両立ができるのか」と懸念を示し、安全審査を凍結している。東電としては、廃炉・汚染水対策を再稼働問題と分離することで、規制委の理解を得る狙いがある。【清水憲司、浜中慎哉】