2014年2月21日金曜日

東電に安全文化や事業対応能力があるのかが議論に

 東電は18日、福島第一原発2号機の原子炉内部温度を監視する重要な温度計の点検作業で、100ボルトで行うべきところを誤って250ボルトの電圧をかけて破損させるというお粗末なミスをしたばかりですが、20日には、今度は満水の汚水タンクの入口弁を開けておいたために、新たに汚水が流入して約100トンがタンクからオーバーフローするという事故を起しました。流出させた汚水には、1リットルあたり2億4000万ベクレルもの超高濃度の放射性ストロンチウムなどが含まれていました。
 東電は最初は弁を閉めていたのに流入したので、弁の故障の可能性があるという説明をしましたが、その後弁が開いていた可能性を認めました。
 
 この事故もチョットした注意力があれば防げたもので、オーバーフローに気づく機会は3回もありました。しかし東電はそのすべてを見落としてこの結果を招きました。
 
 そして東電は今回も、この桁外れの量の放射性物質が海へ流出することはない、と強調したということです。
 たとえて言えば雨水が地盤内に永久に滞留することはあり得ない(もしそうであればすべての地盤は泥状化=液状化する)のに、どうして放射性汚水だけは地盤内に留まるというのでしょうか。必ず地中を浸透して地下水と合流し、最終的に海に流出します。地下水が海に出ずに地下に留まるということも、同様の理由からあり得ません。 
 
 原子力規制庁の森本次長は21日の記者会見で、トラブルが続いていることについて、「東電の安全文化や、事業者として対応能力があるのか議論になる」と述べたということです。極めて当然の発言です。
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高濃度汚染水100トン漏れ タンク弁開きっぱなし
東京新聞 2014年2月20日
 東京電力は二十日、福島第一原発で原子炉を冷却した後の水を貯蔵するボルト締め型タンクの上部から約百トンの処理水が漏れ、周辺敷地に流れ出したと発表した。処理水には一リットル当たり二億ベクレル超と超高濃度の放射性ストロンチウムなどが含まれていた。閉まっているはずのタンクの弁が開きっぱなしになっており、誤って水を入れすぎたのが原因とみられる。
 高濃度の処理水漏れ事故は、昨年四月に止水性能が劣る地下貯水池(漏れ量は不明)で発生。さらに八月にタンク底板の接ぎ目の止水材がずれて三百トン、十月にはタンクが傾いているのに水を入れすぎて〇・四トンが漏れた。
 東電によると、十九日午後十一時二十五分ごろ、巡回中だった下請け企業の作業員が4号機の西側にあるタンク群の一基で、天板の接ぎ目付近から水漏れしているのを見つけた。
 発見の九時間半ほど前には、タンクの水位計がほぼ満水を知らせる警報を発していた。
 この時点ではタンク周辺に水漏れなどの異常は見つからなかったため、東電は現場で実際の水位を確認しないまま水位計の故障と判断し、特段の対策は取らなかったという。
 しかし、実際にはタンクに取り付けられた処理水を受け入れるための二つの弁が開きっぱなしになっており、水位はさらに上昇し、遅くとも深夜には処理水があふれ出すレベルに達していた。
 タンク群の周囲には、コンクリート製の堰(せき)があり、処理水は食い止められるはずだった。しかし、タンクには、天板に降った雨を堰の外に直接排出する雨どいが取り付けられており、これが裏目となって処理水が敷地へ大量漏出した。東電は「近くには排水溝がなく、海への流出はないと考えている」と強調している。
 
高濃度汚染水100トン漏れ 東電、3つの兆候見逃す
東京新聞 2014年2月21日
 東京電力福島第一原発のタンクで、またも大量の処理水漏れ事故が起きた。漏れた水約百トンには、一リットルあたり二億四〇〇〇万ベクレルもの超高濃度の放射性ストロンチウムなどが含まれていた。「なぜ送られてくるはずの水がこない?」などと、気づくチャンスは少なくとも三回あったが、東電はいずれも見過ごした。甘い危機管理により、ただでさえ疲弊する現場の作業員たちは、汚染土壌の除去など余計な作業に追われる結果になった。 (岸本拓也)
 
 今回漏れた水は、本来は別のタンク群に送られるはずだった。いつになっても受け側のタンクの水位が上がってこないことに疑問を感じていれば、漏れは最小限に抑えられた。
 そもそも、事故が起きたタンクは既にほぼ満水状態で、通常はタンクの大きな手動弁を閉め、これ以上は処理水が入らない状態になっているはず。しかし、東電はなぜか弁のチェックをしていなかった。
 また、水漏れが発見される約九時間半前には、水位異常を知らせる警報が鳴っていた。実物のタンクで満水を確認してさえいれば、送水を停止し、事故は防げた。
 しかし、東電は計器の故障と安易に判断していた。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は「直接見るという思いに至らなかった」と話した。
 東電は今後、汚染土壌を掘り起こして取り除く予定だが、汚染された敷地は約八百七十平方メートルに上り、現場には負担がさらに加わる。
 
汚染水漏れ、弁開いていた可能性 東電、故障説を修正 
東京新聞 2014年2月21日
 東京電力福島第1原発の地上タンクから約100トンの高濃度汚染水が漏れた問題で、東電は21日、当時閉まっていたと説明していたタンクにつながる配管の弁について、実際は開いていた期間があった可能性が高いことを明らかにした。
 
 東電は同日の記者会見で、弁の操作を誤った人為的ミスの可能性があるとの見方を示した。
 漏えいしたタンクにつながる配管には三つの弁があり、三つとも開くことでタンクへ汚染水が移送される。東電は20日の会見で、漏えいが見つかった後の現場確認では三つのうち一つが閉まった状態だったため、弁の故障の可能性があると説明していた。(共同)
 
規制庁:「東電の能力、議論に」…トラブル続出で次長
毎日新聞 2014年02月21日 
 原子力規制庁の森本英香次長は21日の記者会見で、東京電力福島第1原発で極めて高濃度の汚染水約100トンが漏れるなどトラブルが続いていることについて、「東電の安全文化や、事業者として対応能力があるのか議論になる」と述べた。一方、再稼働に向けた安全審査の申請が出ている東電柏崎刈羽原発の審査については「法に基づいて粛々としてやる」と、福島第1原発の対応とは切り離す方針を示した。
 
 また、今回の事故を国際評価尺度(INES)で示すことが適切かどうかを国際原子力機関(IAEA)と協議することを明らかにした。規制庁は昨夏発生した大量の汚染水漏れ事故で、8段階で上から5番目の「レベル3」になるとしたが、福島事故自体が最悪の「レベル7」とされており、「整合性がとれない」などの意見がある。【中西拓司】
 
福島原発の高濃度汚染水漏れ、経産相が「誠に遺憾」 
東電に再発防止策の徹底を指示
産経新聞 2014年2月21日 
 茂木敏充経済産業相は21日の閣議後会見で、東京電力福島第1原発の地上タンクから高濃度の汚染水が漏洩した問題について「誠に遺憾で、改めて廃炉・汚染水対策に気を引き締めて対応させたい」と述べ、東電に再発防止策の徹底を指示したことを明らかにした。
 茂木氏は、漏洩した汚染水や土壌の早期回収や、タンク内の汚染水の水位が上昇した際の対応改善、配管の弁の開閉に関する確認方法の改善を指示したと説明した。