2020年6月20日土曜日

茨城県議会常任委で県民投票条例案を否決(詳報)

 既報の通り18日の茨城県議会常任委・連合審査会で住民投票案は否決されました。
 東京新聞がその際の参考人発言要旨を載せましたので「詳報」として紹介します。
 東京新聞は「東海第二再稼働 継続審議で議論深めよ」とする解説記事を出しましたので併せて紹介します。 
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東海第二再稼働 連合審査会での参考人発言要旨 
東京新聞 2020年6月19日
 18日の茨城県議会常任委員会)連合審査会での参考人の発言要旨は次の通り。 

◆学識経験者
 【古屋等・茨城大人文社会科学部教授】原発に関する住民投票条例案は東京都や静岡、新潟県などで否決された。「原発稼働の是非について国が責任を持つべきだ」「県民の意向が反映できない」などが否決の理由だが、東京電力福島第一原発事故から間がなく、不確かな状況での判断だった。議会で話し合ったことが住民の総意とはなかなか言えない。原子力先進県の本県だからこそ、条例制定が難しいにしても、できる限り情報公開し、パブリックコメント(意見公募)で住民の意向を聞くなど、独自の判断をしていただくとありがたい。 

◆資源エネルギー庁
 【覚道崇文・資源エネルギー政策統括調整官】福島原発事故後、国のエネルギー政策は、原発や再生可能エネルギー(再エネ)などを組み合わせる「エネルギーミックス」を基本にしている。原子力については、重要なベースロード電源として、世界で最も厳しい新規制基準に適合するとされたものは、課題である社会的な信頼を獲得した上で再稼働を進める。その一方で再エネを広げ、二〇五〇年に向けて脱炭素化を進める。 

◆原子力規制庁
 【田口達也・実用炉審査部門安全規制管理官】福島原発事故を踏まえて新規制基準を定めた。地震では敷地における最大の揺れの特定に力を割いており、東海第二原発では防潮堤で敷地を守る対策をとっている。防潮堤の高さは二十メートルで、想定される津波の高さ一七・八メートルを上回っている。それでも津波が入った場合、敷地に水がたまる状況を評価し、緊急用海水ピットを配管するなどしている。格納容器を守るための対策もある。 

◆地元自治体
  【山田修・東海村長】東海第二原発の再稼働について、住民の意向をどのように把握するか模索している。県民投票条例案に意見することは、今後の取り組みに影響を及ぼしかねないので差し控えたい。 
 どのような方法にしても、住民の意思を反映させるためには情報提供が大切。一方的な提供ではなく、情報を受け取った住民が、対話を通して議論を深めるプロセスが重要だ。東海村では、意見交換の場を設けているほか、島根原発がある松江市で取り組まれた「自分ごと化会議」を進めたい。住民が主体となって、賛否ではなく自由に意見交換できる画期的な取り組みで、住民に関心を持ってもらうためには有効と考える。限られた人数の議論になるが、それを基に多くの住民に取り組みを知ってもらい、原子力問題を考えるきっかけになるといい。 

◆いばらき原発県民投票の会
 【鵜沢恵一・共同代表】東日本大震災以降、危機感が募り、さまざまな意見を出し、共通の着地点を見いだす社会になってほしいと思うようになった。きちんと向き合って議論し、合意する県民になるためにも県民投票を実現したい。署名期間中、何軒も家を訪問して話す中で、意見を表したいというところが共通していた。こうして集めた約八万七千人の思いの重さを受け止めている。県民投票こそ民意が反映されると思う。より民意をくみ取る方法として県民投票に焦点を当ててほしい。 
 【姜咲知子・共同代表】私たちが求める県民投票条例案は、学びや対話によって理解するプロセスがセットになったもの。自分の意見が大切にされると実感できる丁寧なプロセスにこそ民主主義が宿ると強く感じる。県民投票で賛否を問い、民意をしっかり受け止め、議会で議論し、その上で知事に判断してもらいたい。民主主義を見つめ直す動きが世界中で出ていて、本県の動きも注目されている。


東海第二再稼働 継続審議で議論深めよ 
東京新聞 2020年6月19日
<解説>
 東海第二原発の再稼働の賛否を問う県民投票は、県議会の過半数を押さえる最大会派のいばらき自民が反対の意思を示したことで、実現が大きく遠のいた。 
 条例案審議のヤマ場となった十八日の連合審査会。自民県議らからは県民投票の実施に後ろ向きな声が相次いだが、その多くは説得力を欠くと言わざるを得ない。 
 例えば「二者択一では多様な意見をくみ取れない」(石塚隼人氏、坂東市・五霞町・境町)というもの。だが、大井川和彦知事が再稼働について判断を求められた際の意思表示は「同意」か「不同意」しかあり得ない。もちろん県民の意見を聞く前提として、十分な判断材料の提供が重要なのは言うまでもない。 
 石井邦一氏(常陸太田市・大子町)らからは、安全性の検証や事故に備えた避難計画策定が進んでいないとして、県民の意見を聞く段階ではないとの「時期尚早論」も聞かれた。 
 しかし、条例案は投票の実施時期を「知事が再稼働の是非を判断するまでの期間において知事が定める」とし、具体的に定めていない。条例を成立させた上で「県民の意見を聞く段階」が来るのを待てば済む。 
 知事が条例案の提出時に、県の投票事務に関する規定に不備があると指摘したことを巡り、「瑕疵(かし)ある条例案を可決するのは難しい」(戸井田和之氏、石岡市)との指摘も。それなら議会が修正案を検討するのが筋だろう。急いで否決する必要があるのか。 
 条例案が練られていないと考えるなら、実質的な審議をたった一日の連合審査会で終わらせてはならない。次回定例会に繰り越して議論を深めるため、二十三日の本会議では「継続審議」を議決すべきだ。県民八万六千七百三人が署名した重みをかみしめてほしい。(宮尾幹成)