2021年8月30日月曜日

政府と東電は責任放棄・卑劣と、地元民が海洋投棄阻止に立ち上がる

 菅首相は今春、福島原発を視察後、いきなりトリチウム汚染水の海洋放出を決めました。それは15年8月に政府と東電それぞれ福島県漁業協同組合連合会に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と書面で約束していたことを一方的に破るものでした。地元民が怒るのは当然のことで、もしも菅首相が、約束を勝手に破ることも決断力の一つだと己惚れているのであれば大間違いです。地元民を説得できる自信も皆無の筈です。

 地元の人たちが、原発汚染水の海洋投棄阻止へ立ち上がったのは当然の成り行きです。
 東京新聞が伝えました。
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<民なくして> 政府と東電は「責任放棄」「卑劣」
      原発汚染処理水の海洋投棄阻止へ被災地立ち上がる
                         東京新聞 2021年8月29日
 東日本大震災から10年を迎えた直後の2021年4月、菅政権は東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理した後の水を、2年後をめどに海洋放出する方針を決めた。新たな風評被害を懸念する地元の反対を押し切っての判断で、過去に政府や東電が漁業関係者と文書で交わした「約束」を裏切る行為でもあった。市民側では新型コロナウイルスの影響で往来に制約がある中、インターネットを活用した反対の署名集めの動きが起きている。 (市川千晴、中根政人)

◆ネットで署名呼び掛け
 震災で被災した宮城、福島両県の3つの生活協同組合が19年に合併して運営されているみやぎ生協(仙台市)の副理事長で、処理水海洋放出の反対署名集めに取り組んでいる野中俊吉さん(62)は「手に負えないから海に流してしまえ、というのは責任放棄だ。福島の問題に矮小化するのでなく、国民全体に訴える必要がある」と語る。
 活動は、みやぎ生協など4団体が呼び掛けて21年6月から始まった。野中さんが講師となり、全国の生協でオンライン学習会を計5回開催。3000筆近いオンライン署名が集まっている。同時に行っている用紙署名も1400筆近い。野中さんは「年内に政府と東電に署名を提出したい」と意気込む。

◆反対の声は無視
 福島第一原発の処理水に関して政府と東電は15年8月、それぞれ福島県漁業協同組合連合会に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と書面で回答。処分方法を決める前に、地元漁業者の同意を丁寧に得るかのような姿勢を示した。
 一方、政府の小委員会は20年2月、海洋や大気への放出が現実的な選択肢であり、海洋放出の方が「確実に実施できる」とする報告書を公表した。
 全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は21年4月7日、官邸で菅義偉首相と面会した際、海洋放出に反対の意思を伝えたが、政府は6日後の4月13日、関係閣僚会議で海洋放出方針を正式決定した。
 野中さんは「反対の声を確認しておきながら、卑劣なやり方にあぜんとした」と憤る。

◆世論でストップを
 政府は放射性物質トリチウムを含む処理水を海に流しても、人体や環境への有害な影響はないとする。だが、中国や韓国は環境への影響などを挙げ批判を繰り返す。首相は国会答弁で、処理水の海洋放出について「安全性に問題がないことを理解してもらえるよう、引き続き努力したい」と強調するものの、メッセージが国内外へ十分に伝わっているとは言い難い
 原発政策全般に関しても、政府は「依存度を低減させる」としながら、電源構成上の重要性は維持したまま。新規制基準に適合した原発を「地元の理解」に基づき再稼働させる方針を継続している。一方、世界最悪レベルとなった原発事故の収束作業は終わりが見えない。
 野中さんは処理水を巡る政府の一連の対応について「乱暴で、一般的な国民の感覚で取り組んでいない」と指摘。「反対の世論が高まれば、海洋放出しない方向で決着する可能性だってある」と力を込める。