2023年5月1日月曜日

「原発汚染水のトリチウム、体内に入れば危険」 米教授が警告

 中央日報に「米教授が警告…原発汚染水のトリチウム、体内に入れば危険という記事が載りましたので紹介します。
 日本ではトリチウムは殆ど無害という論調が優勢ですが、それはいわゆる放射線による外部被爆のことで、トリチウムの放射能はベータ―線なのでそれ自体は微弱で人間の皮膚も透過できません。
 しかしトリチウム水は物性的に水と区別できないため、体内に取り込まれればあらゆる臓器に水として移動し吸収もされるし、通常の水素として細胞内にも取り込まれます。するとそこでベータ線を出し続けるため、その近傍が長時間にわたって被爆(内部被爆)することになります。
 またより重大な危険性として、トリチウムは通常の水素と区別がつかない(生体が異物と認識しない)ので、DNAの二重らせん構造体を作り上げるときの重要な結合素子=水素としても取り込まれます。そうするとトリチウムはベータ崩壊により連続的にヘリウムに変わるため、結合素子の能力を失いDNAが破壊されることになります(以前の産婦人科学会でその危険性が指摘されました)。
 中央日報の記事は、トリチウムが食物連鎖を経て濃度が高まる生物濃縮現象にも言及しています。
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 併せて同紙の記事「米国核物理学者『福島汚染水放流は危険…コンクリート建てて使おう』」を紹介します。
 トリチウム水の処分方法はいくらでもあるのに、日本が無害を強調して最も費用が安い海洋放出に拘り続けることに海外の批判は止みません。
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米教授が警告…「原発汚染水のトリチウム、体内に入れば危険」(1)
                        中央日報日本語版 2023/4/28
トリチウムから出る放射線のエネルギーは他の放射性核種と比べて低いが、人体内の生体の物質に含まれる場合は危険かもしれないという主張が、海外の専門家から提起された。
月城(ウォルソン)原発のトリチウム漏出に関してもこうした主張が提起されたことがあるが、今回の主張は日本政府が福島原発の汚染水(処理水)を海に放出しようとする中で出てきたため、国際的にも注目を引くとみられる。
現在、福島には1000基以上の汚染水貯蔵タンクがあり、その中に1200兆ベクレル(Bq)を超えるトリチウムが入っていると推定される。
環境団体グリーンピースの招待を受けて韓国を訪問した米サウスカロライナ大学生物学科のティモシー・ムソー教授は27日、ソウル汝矣島(ヨイド)の全国経済人連合会(全経連)会館で記者会見を開き、トリチウムの危険性について説明した。

◆セシウム137の2-6倍の危険も
ムソー教授は1950年代から2022年までに発表されたトリチウム関連の世界の文献70万件のうち生物体に及ぼす影響を扱った250件を分析した後、論文に整理し、最近SSRN(社会科学研究ネットワーク)に公開した
ムソー教授は「トリチウムは低エネルギーであり外部では皮膚も透過できないが、生物体内に入れば高エネルギーのガンマ線の倍以上も危険であることが分かった」と強調した。
トリチウムは普通の水素原子の代わりに水分子に編入されることがあり、体内にも容易に入ったりする。
ムソー教授は「透過力が強いガンマ線は瞬間的にDNAや細胞に影響を及ぼしてすぐに体外に抜けるが、透過力が相対的に弱いトリチウムのベータ線は細胞組織や臓器内部を抜け出せず集中的な内部被ばくを起こすため」と説明した。
遺伝子などの損傷に及ぼす程度を示す生物学的効果比(Relative Biological Effectiveness、RBE)がセシウム137の26倍という点がいくつかの文献で確認されるということだ。

◆食物連鎖を経て濃縮すればさらに危険
ムソー教授は特に「トリチウムに被ばくしたマウスでは精子と卵子、そして生殖器損傷が観察され、遺伝子変異も表れた」とし「深刻な問題はトリチウム被ばくの影響が食物連鎖の上位段階になるほど大きくなり、特に数世代を経て蓄積されながら種の遺伝子変異をもたらすこともあるという点」と憂慮した。
トリチウムが食物連鎖を経て濃度が高まる生物濃縮現象が起きる場合、人間の健康に脅かすこともあるということだ。
ムソー教授は「(自身が参加した研究を通して)チョルノービリ(チェルノブイリのウクライナ式発音)原発事故地域の野良犬から周辺の他の地域の犬とは全く違う遺伝情報が確認された」とし「福島汚染水放出時にも周辺の生態系で多くの生物の遺伝情報が変わる可能性が高い」と警告した。

また「東京電力が多核種除去設備(ALPS)で処理して海水で薄めた汚染水でカレイ・アワビ・海草の3種を育てながら生物学的影響を評価すると広報しているが、生死や発育状態、トリチウム濃度だけを調べる現在の方式は見せる形の研究にすぎない」と評価した。
ムソー教授は「評価対象を汚染水に露出する数百種の生物に拡大して周期的に遺伝情報を採取して比較し、超国境的、包括的レベルの生物学影響評価をするべきだ」と勧告した


米国核物理学者「福島汚染水放流は危険…コンクリート建てて使おう」
                        中央日報日本語版 2023.01.26
「タンクの中にある水(汚染水)には何が入っているでしょうか。答えは『分からない』です」
米国ミドルベリー国際大学院のフェレン・ダルノキ・ベレス教授は福島第1原発事故以来、発生した汚染水の危険性についてこのように話した。核物理学者であるベレス氏はPIF(太平洋諸島フォーラム)科学者諮問団の委員として活動しながら、東京電力で約4年間調査した汚染水データを受け取ってこれを分析した。ベレス氏は「小型原子炉を研究している。原発を賛成したり反対したりする立場ではない」とし「科学者として偏りのない客観的見解を持とうと努力した」と強調した。
フィジー・オーストラリア・ニュージーランドなど太平洋地域17の島国で構成されたPIFは最近、福島原発汚染水放流が魚類に悪影響を及ぼすだろうとし、安全性が立証されるまで放流を延期するよう求めた。だが、日本政府は処理過程を経た汚染水の放射能水準は海洋生物や人間に脅威にならないほど低いとし、今年の春か夏には放流を強行するだろうという立場だ。汚染水は日本政府の言葉通り、本当に安全なのか。直接汚染水データを分析したベレス氏を25日、インタビューした。

◇「汚染水情報、不完全で一貫性ない」
-福島原発汚染水データを直接分析したとのことだが。
「タンク内に正確にどのような汚染水が入っているのか分からないというのが問題だ。我々は答えを探すために努力しているが正確な把握が難しい状況だ。東京電力の汚染水抽出データを分析した結果、不完全で不正確で一貫性がないと判断した」

-東京電力の汚染水調査では安定性を立証するには不十分ということなのか。
「東京電力で測定したタンクの汚染水の情報が代表性を持つのは難しいと感じた。東京電力では64の放射性核種を測定していると明らかにしたが、共有された資料を見ると9つの核種しか検査していなかった。また、タンクの4分の1だけで測定したが、主にタンク底にある高水準のスラッジ(カス)廃棄物の濃度に対しては情報が一切ない

◇「放流時、漁業に影響が懸念される…影響は急速に広がる」
-日本政府は米国と韓国でも原発運営過程で三重水素(トリチウム)が含まれた水を海に放流しているとし、基準値以下に薄めて放流すれば問題がないと主張しているが。
「中国と米国、韓国の原発は正常運転中に放流しているが、福島の場合、事故後の放流なので正常な運転状況と見ることはできない。事故がまだ続いているのに放流するのは不必要な危険行動を行うことだ」

-予定通りに汚染水を放流した時、最も憂慮される点は何か。
「最も憂慮する点は漁業産業への影響だ。太平洋諸国は漁業に依存している。ところでセシウム-137が検出されたマグロが、福島事故後、まだ1年も経たない内に米サンディエゴ海域に到達した。魚類が放射能を吸収して動く速度は海流の移動速度よりも速いので急速に影響が広がるだろう

◇放流の代わりに提示した3つの解決法は?
べレス氏は海洋放流の代わりに3つの解決策を提案した。
(1)耐震設備が施されたタンクに汚染水を長期保存し、放射性物質が崩壊する時まで待って(2)放射性物質ろ過能力を備えたカキなど生物学的方式で汚染を浄化して(3)コンクリートを製作するのに汚染水を活用しよう-というものだ。

-汚染水でコンクリートを作れば海洋放流よりも安全なのか。
「(汚染水に含まれた)三重水素は測定するのが難しいほどコンクリート中に吸収される。これを人の接触がほぼない橋梁建築などに使おうというものだ。このようにすれば国境を越える問題を引き起こすこともないだろう。だが、日本は最も費用がかからない『放流』を選択した

-韓国政府は日本の汚染水放流に対してどのように対応するべきか。
「汚染水を放流した時は日本だけでなく他の国々にも影響を及ぼすことになるため、日本にもっと積極的な姿勢で対処しなければならない。韓国政府側では東京電力に追加で多くの情報を要請して、そうでない場合なぜデータを提供しないのか、その理由を尋ねなければならない